中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

東証の上場区分 ー プライム市場の上場維持基準

以前に東証の上場区分の見直しに関してプライム市場区分について紹介する旨をお伝えしましたが、それきりになっていましたので、本日はプライム市場区分の要件について書きたいと思います。

プライム市場の上場維持基準は、株式の流動性とガバナンスに分かれています。まず流動性については、次のとおりとなっています。

  • 株主数       800人以上
  • 流通株式数     2万単位以上 (事業年度末の数で算出)
  • 株式時価総額      100億円以上(事業年度末以前3ヵ月の株価平均値で算出
  • 売買代金        1日平均売買代金0.2億円以上

次に、ガバナンス基準としては流通株式比率 35%以上(=事業年度末日における流通株式数÷上場株式数)となりますが、この流通株式の定義が変更されるのが重要です。

現状の流通株式は「上場株式数 ー(10%以上の株主の保有分+役員の保有分+自己株式分)」かと思いますが、上場区分の見直しにおいては、「国内普通銀行(都銀・地銀)」「保険会社及び事業法人」の保有分も流通株式から除外されることになります。

大株主に銀行、生保、政策保有株主(持合い株主)がいる場合、これらの持分は流通株式から除外されるため、これらの保有持分が大きい場合、流通株式比率が小さくなってしまうのです。このため、政策保有株式の売却の動きが現在増えているところです。3月18日の日経新聞でも「政策保有株 売却益5割増」という見出しで記事が書かれていました。

もっとも、プライム市場の上記維持基準は上記のとおりであるものの、当分の間、経過措置が設けられており、東証1部上場企業はプライム市場に移行できます(但し、時価総額10億円以上、流通株式比率5%以上等の最低の基準あり)。

ここが今回の市場区分で非常に緩いところです。当初は株式時価総額250億円以上でないとプライム市場に移行できないという議論もありましたが、株式時価総額250億円以下の小さい企業が猛反対をしたようです。結果、時価総額が100億円程度の小さい企業もプライム市場に移行できるわけです。

市場区分の移行の今後のスケジュールは次のとおりです。 

  • 6月末   : 移行基準日(適合状況の判定)
  • 7月中   : 東証が事業会社に必要な手続・書類を通知
  •  9-12月末 : 企業は東証に市場区分の申請(市場区分の申請に当たっては、市場選択に関する取締役会の決議と決議内容を証する書面(取締役会議事録)の東証への提出が必要が求められます)
  • 1月中   : 新市場区分一覧を東証サイトで公表
  • 4月    : 新市場区分移行日

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえたコーポレートガバナンス報告書の提出期限は12月末になることが予想されていますので、10月~12月の間に市場区分の選択とセットでコーポレートガバナンス報告書の更新をする企業が増えそうです。

ESGは業績の免罪符か? ー 投資家は超長期スパン(30年~40年)での株価向上までは期待していません

来週は社内のマネジメント層を対象にコーポレートガバナンス全般のテーマについて、約1時間の時間枠で社内研修の講師をする必要があるため、昨日から資料を作成しています。

最近まわりの状況を見て思うのですが、金融機関以外の会社のサラリーマンの金融・株式投資リテラシーの低さがひどいと感じます。少し前になりますが、社内の50代の中高年の部門長の社員から「機関投資家って何?」と聞かれたことがあり、「まじか!」とびっくりしました。金融機関の方から見ると「それって入社1年目で知るべき常識だよね」ということになるかと思います。このお粗末な事態の原因は、日本の子供が金融教育を受けなかったことが理由だと思います。高校の授業で、金融機関の方を招き、四季報の読み方はじめ株式市場の教育を本来すべきなのだと思います。一流大学出とまではいかずとも、中堅クラスの大学(MARCHレベル)を出て、そこそこの規模の上場企業でサラリーマンをしていながら、中高年になっても「機関投資家は何?」、「財務指標や株式指標が読めない」などといった人はいなくなるような時代が来れば良いなと思います。

ということで、研修では資本市場の動き、ROE、TSRなどの指標も説明しようと思い資料準備をしており、ESG投資にも触れようと思っているのですが、3月19日の日経新聞に「ESGは業績の免罪符か」という記事がありましたので、紹介します。

仏ダノンの経営トップがESG経営の旗振りをしていたようですが、解任をされたようです。その理由はライバルのネスレと比べて株価が長期的に低迷していたことが理由のようです。つまり、ステークホルダー主義を掲げていれば株主からの攻撃をかわせるわけではないということが記事に書かれています。経営陣がステークホルダー主義を主張することで、一時的に「煙幕」を張れてきているのではないかと考えているということです。

ESGの言葉や脱株主第一主義の話題が出るたびに、「株主だけがステークホルダーではない」という主張をする人を時々目にします。特に、自分で株式投資をやったことのない人にこういう意見を持っている人がとても多い印象を受けます。しかし、上場企業の役割は、株主価値の最大化を目指すのであり、その中で、他のステークホルダーにも配慮する経営をすることで持続的な成長をすることが重要なのです。ESGに力を入れるにしても、それは企業の業績と必ずセットで考える必要があります。ESGに取り組むことが将来のリスクを低減するのであれば、企業の持続的成長に繋がり、とても意味のあることです。

しかし、企業の持続的成長といっても、ほとんどの投資家は30年~40年といった超長期での企業の成長には関心はありません。そこまでの期間を考えて投資する人は極めて少数でしょう。であれば、ESGの取組みも今後10年~15年といった一定の期間でのリスクを軽減する効果がないのであれば、あまり意味はないと言えます。「30年後のリスクを軽減するのです」といっても、株主からすれば「だから?」ということなると思います。

企業の中計経営計画でESG経営といった言葉を盛り込むというか、ちりばめる企業が最近かなり増えています。私も株式投資をする上で投資先銘柄の中期経営計画はじっくり読みますが、ESG経営の意味が分かっていないと思われる計画を結構目にします。上場企業は社会貢献をするために存在するのでなく、金を儲け、株価をあげるために存在するのです。そこを理解しないでESG経営などという言葉を漫然と中期経営計画に掲げると機関投資家から見ると「この企業の経営陣は大丈夫?」という疑問を持たれることになります。

この先10年~20年の期間でESG経営を行うことが、企業の業績にどう結び付くのかを、明確にしないと投資家は「この会社の経営トップはESGの意味が分かっていないのだな」と馬鹿にされてしまいます。であれば、ESGなどという言葉は最初から一切使用しない方が良いと思います。

中長期株式投資の銘柄分析:東京個別指導学院(4745)は「買い」

本日は四季報オンラインのデータが2021年2集・春号データに更新されました。四季報オンラインに掲載されている銘柄の分析記事がアップデータされましたので、保有銘柄や気になる銘柄には本日から目を通し始めています。

以前にもブログで記事を書いたことがありますが、学習塾の東京個別指導学院について紹介します。四季報オンラインでは次のとおりとなっています。

【費用増】22年2月期は期初には生徒数戻るうえ、前期からの増加基調続く。受験学年中心のオンライン授業が非受験学年に浸透。年間8出校の計画見直しなら開校費減。ただ、システム刷新に6億円で本復は先に 【オンライン】コロナ下で加速。生徒の通塾負担なく、ライブ授業に上乗せの提案が円滑に。今期は関東でオンラインのみの指導をテスト、実現なら全国が営業圏へ

同社は2月期決算ですが、2020年度の四半期業績は、次のとおりです(単位は百万円)。Q4は2020年度の通期予想から3-11月の9ヵ月の実績を除いた予想値になります。

  • Q1 売上高 2,134(▲43.6%) 営業利益 ▲1,761(  4.4%)
  • Q2 売上高 6,052(+ 0.3%) 営業利益    935(▲26.1%)
  • Q3 売上高 4,769(▲ 0.1%) 営業利益    490(▲30.1%)
  • Q4 売上高 5,745(▲13.8%) 営業利益    596(▲62.8%)

ここで気になるのは、Q3と比較するとQ4の売上の伸び率が20%となっている点です。同社の過去の業績を見ると、Q3と比較したQ4(12-2月期)の売上高増加は+40%程度なのですが、それと比較して今回のQ4の売上が小さいのです。この時期は学習塾に通う生徒は増えるはずですし、東京個別が公表した月末の生徒数は7月から11月までを見ると前年度同月比ではマイナスが続いていますが、マイナス幅は大きく減少しています。つまり回復しているのです。リソー教育のQ4予想値と比較しても東京個別の2020年度通期予想前提でのQ4予想は保守的な気がしています。

なお、同社の2020年度の業績予想値をベースにしたPER(計算式の分母は、特別損益を無視するため、税引後経常利益を使用)は193倍ですが、同社は21年度~23年度の中計経営計画を公表しており、現在の株価ですとこの3年間の予想PERは18倍~25倍となります。同社の過去のPERは30倍台後半ですので、割安と言えるかと思います。

東京個別の中期経営計画はホームページ上にある社長の動画を視聴するのをお薦めします。とても詳しく、ホスピタリティー経営2023を公表しており、今後の戦略・取組み、社長の意気込みが良く分かると思います。また、同社の親会社はベネッセホールディングですので、近い将来、ベネッセホールディングによるTOBでの上場廃止の可能性も期待できます。

不二家(2211)の酒井美紀の社外取締役選任理由 ー 「主婦としての観点」というのはかなり違う気がします

本日はお遊びのような記事を1つ書きます。中堅クラスのお菓子メーカーの不二家(2211)がタレントの酒井美紀(1978年生)を社外取締役に選任する旨を公表していましたが、同社の3月3日付の定時株主総会の招集通知の取締役選任議案に酒井美紀の経歴と選任理由が掲載されていました。社外取締役候補者とした理由は、次のとおりです。

酒井美紀氏は、女優として活躍される一方、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使として世界の子どもたちを支援する活動もされており、これらの経験と優れた人格、見識を有しております。当社は同氏に社会貢献の観点から助言をいただくことのほか、主婦としての観点からも助言をいただけるものと判断し、新たに社外取締役として選任をお願いするものであります。同氏は過去に会社経営に関与したことはありませんが、上記の理由により、当社の社外取締役としての職務を適切に遂行することができるものと判断しております。

「主婦としての観点からも助言をいただける」とあります。酒井美紀と言えばかなり有名なタレントであって、「白線流し」などのテレビドラマに出ており(かなり古いですが)、これまでに稼いだお金も数億円を軽く超えているのだろうと想像します。一般人の生涯賃金を軽く超える額をこれまでの人生で稼いでおり、超富裕層のカテゴリーに入る人です。そういう超富裕層が「主婦の視点」というのはかなり不適切な表現かと思います。

そもそもとして、不二家社外取締役の役割が良く分かっていないのかなと思ってしまいます。社外取締役には、企業経営や事業戦略を理解し、企業の方向性をナビゲートする役割が求められており、芸能活動の経歴や世界の子供たち支援といったおおよそ企業経営とは直接の関係がない経歴しかない人を社外取締役にするというのは根本的な考えに誤りがあるのだと私は思います。不二家のPRのために採用したというのが正直なところだと思うので、素直にそのように記載すればよいのになと思ってしまいます。

取締役の選任理由は今後、具体的な記載が求められる動きにあります。スキルマトリクスが春に改訂のコーポレートガバナンス・コードで規定される動きにあります。そうなった場合、不二家酒井美紀のスキルをどう記載するのでしょうか。スキルに「芸能力」「タレント力」と記載するわけにもいかないと思いますが、「主婦力」ということを記載するのでしょうか。今後が楽しみです。

日銀公表の全国の銀行預金残高 ー 2月は前年同月比+10.0%

4月、5月に3月期決算企業の通期決算が発表されますが、本日はそれに備えて投資銘柄の周辺情報整理をしていますが、併せて株式投資案関連の名著を今週からじっくりと読み直したりしています。

中長期株式投資での名著と言われているのが米国のファンドマネジャーであるピーター・リンチの「株で勝つ」(ダイヤモンド社)かと思います。1944年生まれで、ボストン大学を卒業、ペンシルべニア大学ウォートン校でMBA取得、1977年に1,800万ドルにすぎなかったフィデリティ・マゼラン・ファンドの運用資産を1990年には140億ドルに育てあげた凄腕のファンドマネジャーです。米国のタイム誌は「全米1のマネー・マネジャー」と評しています。あらためてじっくりと読み直していますが、読まれたことのない方にはお薦めします。

さて、本日は3月8日に日銀が公表した銀行の預金残高について紹介します。日銀は毎月、貸出・預金動向を公表していますが、3月8日に2月の動向を公表しました。

2月の全国における銀行の預金平均残高は前年同月比+10.0%の805兆5614億円です。1月の残高が最高最高で806兆1633億円でしたので、これを若干下回る数値ですが、依然として高い水準にあります。2020年8月以降の数値を並べると次のとおりです。伸び率は前年同月比です。

  •  8月   788兆6462億円  +8.8%
  •  9月   793兆3629    +9.0
  • 10月   792兆8973    +9.0
  • 11月   799兆5626    +9.0
  • 12月   802兆8673    +9.3
  •  1月   806兆1633    +9.8
  •  2月   805兆5614   +10.0

消費の抑制で、企業や個人の預金が大きく増えているわけですが、コロナ終息後にこのお金がどうなるかなど色々と考えるヒントになるかと思います。

OECDが世界の経済成長率を上方修正

世界経済成長率はマクロ経済指標のベースになるものですが、OECDIMF世界銀行の3つがそれぞれ公表しています。

この中で3月9日にOECDが世界経済成長率の見通しの上方修正をしました。2021年に関して、昨年12月に公表したOECDの数値と今回の改訂値を並べると次のとおりです。

      前回(20年12月) 今回(21年3月)

  • 世 界      4.2%      5.6%
  • 日 本      2.3%      2.7%
  • 米 国      3.2%      6.5%
  • 欧 州      3.6%      3.9%
  • 中 国      8.0%      7.8%

OECD公表資料にも書いてありますが。昨年12月の見通しでは、2021年末までにコロナ前の水準に達するとしていたところ、コロナワクチンの有効性が確認されてきたことなどを背景に今回の修正をしています。特に変化が大きいのが、米国の経済成長率で3.3ポイントの上方修正になっています。これは追加の大型経済対策の決定の公算が大きいことなどが理由です。

なお、IMFが本年1月に公表した2021年の経済成長率見通しは、世界:5.5%、日本:2.4%、米国:2.5%、欧州:3.6%。中国:5.6%となっています。3月9日に公表された2月の日本の工作機械受注総額は1,055億円と4ヵ月連続で前年実績を上回りました。単月1,000億円というのが好不況のメルクマールと言われていますが、10,00億円を超えたのは19ヵ月ぶりです。企業各社の業績の上方修正が今後相次ぐと思います。

日本製鉄の東京製綱に対する敵対的TOBが成立 ー 今後は東京製綱の定時株主総会での役員選任が焦点

本日は15時30分から金融庁フォローアップ会議が開催され、約2時間オンラインで会議を視聴しました。プライム市場に入る企業のコーポレートガバナンス・コードの在り方などについて委員からの意見が色々とありました。フィデリティ投信の三瓶氏の意見がなかなか興味深かったですが、ここで書くには分量も多いので触れませんが、会議の最後に事務局から説明があり、次回会議では改訂コーポレートガバナンス・コード案が提示され、議論されるということです。

さて、3月7日に記事を書きましたように昨日が日本製鉄によるTOBの期限でしたが、本日、日本製鉄はTOBが成立したことを公表しました。10%程度の株式取得を目指したTOBですので、成立するのは当然で何ら驚くことではないかとは思います。

日本製鉄のプレスリリースによれば、買付予定数の上限が1,625,500 株であったところ応募株券の総数は2,142,516株と予定数を大きく上回ったようですが、日本製鉄は応募株数の全株を買い取る必要はありません。日本製鉄の本日のプレスリリースでは次の記述があります。

本公開買付けにおいては、応募株券等の総数(2,142,516 株)が買付予定数の上限(1,625,500 株)を超えたため、公開買付開始公告及び公開買付届出書(その後の公開買付届出書の訂正届出書により訂正された事項を含みます。以下同じです。)に記載のとおり、その超える部分の全部又は一部の買付け等を行わないものとし、法第 27 条の 13 第5項及び府令第 32 条に規定するあん分比例の方式により、株券等の買付け等に係る受渡しその他の決済を行います。

TOBでは、公開買付者の買付後の保有割合がたしか3分の2を超える場合には全部買取義務が金融商品取引法で規定されていますが、そうでない場合には、全部を取得する義務はなく案分比例となります。つまり、応募した東京製綱の株主は全株を買いとっては貰えないことになります。

日本製鉄と東京製綱の今後については、前回、以下のとおりブログで書きましたように東京製綱の本年の定時株主総会において、日本製鉄が問題と考えている東京製綱の会長の人事などが焦点になるのだと思います。東京製綱の筆頭株主である日本製鉄の意向を踏まえ、東京製綱が役員人事から問題とする会長を外すか、または、日本製鉄が株主提案をして東京製綱の株主(主として機関投資家)の賛同を求めるかのいずれかのように考えます。

ただ、株主提案となると議決権行使助言会社であるISSに日本製鉄は株主提案への賛成推奨を求めて説明したり、また、ISSが株主提案に賛成推奨しない場合もあり得るので、そういうリスクを考えると株主提案というドラスティックな手法ではなく、東京製綱に対して日本製鉄の考える役員人事を水面下で求めていくのだと思います。

ちなみに、東京製綱も本日プレスリリースを出しており、今後の見通しとして、「当社は、本公開買付けが終了したことを受け、2020 年 2 月 4 日付「日本製鉄株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ」でお知らせいたしましたとおり、改めて日本製鉄株式会社と建設的な協議を行う所存であります。」と書いております。

本件は興味深い案件ですので、引き続き注視していきたいと思います(東京製綱が買収防衛策を発動して、日本製鉄の議決権割合を希釈化するという措置を講じると新たな論点に焦点が当たり、一段と興味深い事案になるのですが)。

日本製鉄による東京製綱への敵対的TOB ー 明日3月8日はTOB期限。今回のTOBでの日本製鉄の指摘は上場企業各社が留意すべき視点です

日本製鉄が1株当たり1,500円で東京製綱に敵対的TOBを実施しており、直近ではブログで次の記事を書いております。

このTOBですが、期間は1月22日からの30営業日ということで明日3月8日が最終日となっています。TOBでの取得予定株式数は約10%で、取得後の日本製鉄の保有比率は約19%ですので、このTOBは容易に成立するのだと思いますが、明日が期限ということもあり、日本製鉄が1月21日のTOB公表日に開示した資料「東京製綱株式会社に対する公開買付け開始に関するご説明資料」を眺めてみました。この中で、日本製鉄が東京製綱の課題として指摘している事項の中で、一般の事業会社も留意すべきと思われる視点を2つほど紹介します。

まず、日本製鉄は東京製綱の株価水準が低いことを資料の中で指摘しています。具体的な指標は次のとおりで、このいずれも同業他社と比較して低迷していることが問題と日本製鉄は指摘しているわけです。

  • TSR(株式総利回り):1年、3年、5年、10年の4つ
  • PER(株価収益率)
  • PBR(株価純資産倍率)
  • PSR(株価売上倍率)
  • 営業利益率

東京製綱は当期純損失のためPERの算出が適当でない期間もあるため、PSRを指標として日本製鉄はあげているのだとと思います。上記の視点は、いずれもアクティビストが会社を攻撃する際の視点と全く同じです。事業会社は、自社の上記指標が同業他社と比較してどうか、低いのであればその改善をどうすべきかの留意が必要と思います。

また、日本製鉄は、東京製綱の代表取締役の選任理由の問題もあげています。つまり、東京製綱は、代表取締役の選任理由について2017年~2020年の4年間の株主総会の招集通知で次の記載をしています。

当社取締役副社長、取締役社長、取締役会長を歴任し、その間に当社の抜本的な構造改革を断行するなど、当社グループの企業価値の向上に貢献しています。豊富な経験と実績に基づいた、当社の経営管理及び事業運営を公正・的確に遂行する資質と見識を備えており、今後の当社グループの成長戦略を牽引することが期待できることから選任しました

この太字にある「企業価値の向上に貢献している」という理由が、東京製綱の業績に鑑みると問題ということを指摘しています。

この日本製鉄の鋭い指摘は、多くの事業会社にとっても考えるべき視点です。社長はじめ取締役の選任理由については、「経営者としての高い知識、業務経験、海外経験があるため取締役に選任した」といったようなことを招集通知に記載している企業がかなり多いのが現状です。過去からの前例踏襲、また役員の選任理由などあまり深く考えるべき事項でもないというのがその理由かと思います。

しかし、今回の日本製鉄の指摘を考えると、役員の選任理由には今後気を付ける必要があります。あまりに抽象的な記載、漫然とした記載の選任理由にすると足元をすくわれる材料にもなりかねないと思います。

ところで、結局、東京製綱はTOBに反対と公表しながらも何らの措置も公表しませんでした。日本製鉄の保有株比率が20%以下ということで法的にはたいした意味を持たないことなども1つの理由かと思います。

今後の日本製鉄の動きとしては、東京製綱の会長を解任したいのだと思いますので、東京製綱の今年の6月の定時株主総会で株主提案をする可能性も十分考えられます。いずれにせよ20%未満の株式取得では法的にはたいした意味は持たないので、日本製鉄が他の機関投資家の賛同を得ながら、どういう方策を講じるか引き続き注視したいと思います。ブログでも今後も記事を書いていきたいと思います。

株式投資指標であるPERの読み方

本日は保有銘柄のこの1週間の株価の動き、ニュース等の確認をしていますが、この他に最近購入したものの読めていない本が沢山あるので、少しずつ読み進めています。人の奨めもあり日本史、美術など自分の業務に全く関係のない本も最近購入したのですが、意外に面白いなと感じています。これらの書籍もタイミグを見てブログで紹介したいと思います。

さて、前回の記事でストラテジストの広木隆さんの書籍を紹介したこともあり、個人投資家向けにPERの実務上の読み方について簡単に説明したいと思います。

PER(株価収益率)は株価をEPS(1株当たり純利益)で割ることで算出されますが、EPSを算出するのは面倒なこともありますので、株式時価総額当期純利益で割ることでも一緒です。

株式時価総額600億円の上場会社の純利益が60億円であればPERは10倍です。つまり、この会社を100%買収するとした場合、10年間の純利益で投資額を回収できるということになります。仮にPERが50倍ということは、買収に費やした金額を回収するのに50年かかるということを意味します。つまり、何年分の純利益で投資額を回収できるかという指標です。

このPERを活用する際のポイントはいくつかあります。まず、このPERは何と比較するかですが、その企業の過去のPERとの比較になると思います。同業他社と比較することも良く言われますが、同業で比較する意味が本当にあるのか良く分かりません。それよりもその企業の過去のレベルと比較することで、今時点のPERが割高にあるのかどうか等を見ることが重要なのだと思います。比較する過去の年数は最低でも5年、できれば10年程度が良いと思います。

次に、先ほど株式時価総額当期純利益で割るといいましたが、正式にはそうですが、過去のPERと比較するという観点からは、PERの算式の分母は純利益ではなく、「経常利益×70%」が良いと思います。日本の会計基準の場合、会計年度に特別利益及び特別損失が生じた場合、当期純利益に変動が生じますが、この特別な事情を除いて平常値で算出するには、経常利益がベストということです。純利益に近づけるためなどの理由から法人税等実効税率の30%分を控除すべく経常利益×70%とします。

最後に、分母の経常利益は通期予想の経常利益を使用します。株価は半年~1年先を織り込むと言われていますので、予想の経常利益(×60%)の数値を使用して算出するのが適切です。以上の3つがPERの留意事項になります。

書籍紹介「ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論」(ゲーテビジネス新書 / 広木隆)

昨日、ブログでクニミネ工業の記事を掲載しましたが、クニミネ工業の昨日の終値は前日比+54円の1,268円でした。日経平均株価は65円安でしたが、やはり四季報でサプライズ銘柄の紹介などがされると、個人投資家は企業の分析などすることなく「買いだ!」といって群がるのでしょうか。

さて、本日は、書籍を1つ紹介いたします。前にもブログで触れましたが、「ストラテジストにさよならを  21世紀の株式投資論」という本です。著者はテレビ東京のモーニングサテライトなどに出ているマネックス証券のストラテジストの広木隆さんです。ユニークなレポートを書かれる比較的有名な方だと思います。この本は2011年に書かれたものなので、約10年前の本になります。

本の内容ですが、ストラテジストの言うことを鵜呑みにせず、自分で社会経済、政治動向などの情報収集をして、銘柄を分析して株式投資をせよというものです。また、株式投資で短期で資産を倍増させるなどはほぼ困難で、株式投資の期待リターンは7%程度なので、10年ほど運用することで少しずつ資産を増やすべきなどといったことが書かれています。分量の少ない本のため1時間かからない程度で読みましたが、さらっと一般的なことが書かれているだけで、株式投資に精通した個人投資家が読む必要性はゼロですが、これから株式投資をはじめようとする方、PER、PBRなどが分からない方が手にするには良い本かと思います。

読んでいて面白かったのは、日経平均の予想をするストラテジストを批判しており、彼らの言うことは当てにするなということが書かれています。日本のストラテジストのほとんどは、大学を出て銀行、証券、生保で働いているサラリーマンに過ぎず、能力的には五十歩百歩で相場の先行きを占う能力などなく、そもそもとして自分で金を出して相場を張っている人間ではないので、この手の予想は話半分に聞くべきということです。昨年の11月の日経新聞でJPモルガン証券、三菱UFJ国際投信、野村証券、ニッセイアセットマネジメントのストラテジストが2021年3月末までの相場見通しを書いていますが、ほぼ全員が2万5000円~2万6000円と言っていますが、大きく外れています。広木さんが言うようにこの方かちは、自分の金で相場を張っていない単なるサラリーマンの株価評論家程度なので、話半分に聞いておけば良いということが良く分かるかと思います。

ということで、内容に深みのある本ではないですが、株式投資の初心者、企業の財務分析をすることなく株価予想屋の意見などに注目して株式投資をしている個人投資家の方向けの本と言えるかと思います。

中長期株式投資の銘柄分析:クニミネ工業(5388)ー四季報サプライズ銘柄

本日(今朝)は株式投資関係で簡単に1つ記事を書きます。昨日、四季報オンラインで3月期決算企業の中から、配当利回りの大きい5銘柄が紹介がされていますが、その中でクニミネ工業(5388)が入っていました。以下は四季報オンラインの記事になります。

【特色】ベントナイト(特殊粘土鉱物)の最大手。自動車、建機、建設が主な納入先。海外市場を開拓中  【最高益】好採算の復興案件が想定上回る伸び。鋳物も自動車生産復調で出直る。一転営業増益に増額。22年3月期は自動車回復本格化でベントナイトが鋳物向け需要活発。高付加価値の農薬堅調。最高純益更新  【脱炭素】21年度からの次期中計3カ年では脱炭素社会に向け地熱発電・掘削井の崩落防止のベントナイトなど拡販。新卒、中途採用増で若手の人材補強、研究部門強化。

クニミネ工業はこれまでもブログの株式投資関係で何度か紹介している銘柄ですが、現在、同社が公表している2020年度の通期予想からQ4(1-3月期)業績を算定するかなり低い数値となり、自動車生産台数はじめマクロ経済環境から考えると4月頃に通期予想の上方修正をする可能性が高いのではと私は考えています。前回のクニミネ工業についての記事は次のとおりです。

クニミネ工業はアナリストのカバレッジがほぼされていない銘柄です。さて、明日から週末ですが、明日はこの1週間の銘柄の動きを分析するとともに、書籍紹介、東証市場区分、今年の株主総会テーマなどについてブログで紹介したいと思います。

買収防衛策の非継続の早期公表という手段もあります ー 資本市場へのアピールのため

本日の日経平均株価終値は前週末比+697円の2万9663円でした。日経平均株価が3万円を超えた頃から「現在の株価はバブルではないのか?」という意見が聞こえてきますが、全くバブルではないと思います。日経平均もまだまだ大きく上昇が続くように想像しています。次回以降のどこかのタイミングでPERについて書きたいと思いますが、バブルの頃のPERは約50倍(1989年12月末の日経新聞では「61倍」と記載)で、今時点はまだ20倍台です。日経平均の上昇は企業業績の裏付けがあるところ、コロナ禍収束を見越して企業が本決算、Q1、Q2で業績上方修正をするであろうことを考えると、これに伴い株価も大きく上げるのではないでしょうか。ということで、今の相場は買いと思います。

さて、昨日、買収防衛策について記事を書きましたが、これに関連する記事を本日は書きます。昨年の12月4日にフジテック(6406)が買収防衛策の非継続を公表しました。フジテックは2019年6月の定時株主総会で買収防衛策を継続更新しており、次回の更新期限が3年後の2022年6月ですが、2020年12月時点で次回更新期限の到来をもって更新しないことを公表しています。つまりだいぶ早い段階で次回は非継続であることを公表しているということです。非常にめずらしいケースです。

現時点で廃止せずに次回までは継続することについては、プレスリリースに次のような記載があります。

本対応方針は2019年6月開催の定時株主総会にて3年間の継続をご承認いただいたものであることに加え、世界的にコロナ禍収束の目処が依然として未定なことによる経済への影響など、昨今の経済環境の不透明な中においては、混乱に乗じた敵対的買収による株主利益の毀損リスクに備える必要があると考えております。以上を鑑みて、本対応方針については、今年度または来年度ではなく、有効期間が満了する2022年6月開催の定時株主総会終結の時をもって継続しないことが、当社の企業価値・株主共同の利益に資するものと判断し、上記の決議をいたしました。

なるほどと思う文面です。昨年、一昨年と買収防衛策を継続更新したが、次回は難しいと判断する企業はこのような取り組みも1つの考え方としてあるかも知れません。もっとも、買収防衛策を有することのデメリットは、取締役選任議案への反対の可能性(買収防衛策を有することで選任議案に反対する機関投資家も一部存在)、ESGスコアの「G」の評価点が下がるということがありますが、総じて大きなデメリットではありません。従い、自発的にこのような公表をする必要性は高くないと私は思いますが、買収防衛策に対する機関投資家の批判は益々強まる傾向にありますので、次回の更新は確実に難しく、市場にガバナンスのアピールをしたい企業はフジテックのような開示を参考にするとよいかも知れません。

ちなみにフジテックは自発的に積極的にこのような公表をしたとは考えられず、恐らく機関投資家との何らかのやとりがあったか、将来、株主提案があった場合に会社提案への賛同を確保するため買収防衛策の非継続を早期に公表したような気がします。

買収防衛策導入企業数がピークから半減 ー 「投資家との対話重視=買収防衛策は不要」というのは間違っています

本日からは本年の定時株主総会に関連した記事を少しずつ書いていきます。2月22日の日経新聞の夕刊に「買収防衛策導入 ピークから半減」というタイトルの記事がありました。

買収防衛策は、ブログでも何度も記事にしていますが、日経新聞の記事によれば、2020年12月末時点での導入企業数は281社で2019年末から44社減と直近で最も減少した2019年の16%減に次ぐ水準であったということです。

減少の一途を辿っていることはブログでも何度も取り上げており、特に目新しいことではないのですが、新聞記事では上場企業の多くは投資家との対話を重視する姿勢に転換したことを廃止増加の理由としてあげています。企業は機関投資家との対話をするケースが増えており、大量買付者が出現しても投資家は合理的に判断できるので廃止が増えているということを記事は言っているのだと想像します。たしかに、機関投資家と対話をするとそう考える機関投資家もいます。しかし、これは企業サイドの現状を知らない発言・記事であると言えます。

企業は機関投資家の全てと対話が出来ているわけではなく、また、海外の機関投資家との対話となると不十分な企業もかなり多いのが現実です。そのような中、市場内外で株式の大量買付行為が開始された場合、企業が機関投資家の全てと短期間において対話の機会を持つことは不可能で、そうこうしているうちに株式の買占めがなされてしまいます。そういうリスクがあるが故、大量買付者が出現した際に投資家に十分な情報と検討の時間を与えるためにあるのが買収防衛策なのです。恐らく、買収防衛策の実務など分からない記者が書いた記事なのでしょうが、お粗末な内容の記事です。

なお、企業統治指針であるコーポレートガバナンス・コードでは、買収防衛策については次のとおり規定しています。

【原則1-5.いわゆる買収防衛策】
買収防衛の効果をもたらすことを企図してとられる方策は、経営陣・取締役会の保身を目的とするものであってはならない。その導入・運用については、取締役会・監査役は、株主に対する受託者責任を全うする観点から、その必要性・合理性をしっかりと検討し、適正な手続を確保するとともに、株主に十分な説明を行うべきである。

コードでは「廃止せよ」とは規定されておらず、「株主に十分な説明を行うべき」と規定されています。春に改訂されるコードでは、この原則1-5はどうなるのでしょうか。特に改訂の論点にはなっていないかとは思いますが、この原則が改訂されることを見越して日経新聞は記事に取り上げたのでしょうか。

関西電力が「ゼロカーボンビジョン2050」を策定 - 原子力の最大限活用を目指す

最近、保有銘柄の買増し検討の関係でエネルギー関係、海洋鉱物資源関係の情報収集に少し力を入れているところですが、2月26日に関西電力が「ゼロカーボンビジョン2050」を公表しました。

このビジョンで2050年までに二酸化炭素の排出「実質ゼロ」を目指すため火力発電の燃料として燃やしても二酸化炭素を排出しないアンモニアや水素を活用する方針を盛り込んだほか、原子力を主力電源と位置付けるようです。

このビジョンでは3つの柱が掲げられていますが、その中の1つである「サプライサイドのゼロカーボン化」については、次のような記載がされています。

安全確保を前提に、全ての電気をゼロカーボン化し、エネルギー自給率向上による安定供給や経済性を同時に達成できる、電源の最適な組合せの実現を目指します。分散型エネルギーリソースの活用やレジリエンスの強化等、多様化する社会ニーズも踏まえて再エネを最大限導入・主力電源化し、それを可能にする送配電系統の高度化出力安定性に優れエネルギー密度が高い原子力エネルギーの安全最優先を前提とした最大限活用、再エネ大量導入に必要な調整力等に優れた火力のゼロカーボン化に取り組みます。さらに、国際的なゼロカーボン化に貢献します。

ビジョンの中では原子力については、①安全最優先を前提とした稼働率の改善に向けた運用の高度化 ②次世代軽水炉、高温ガス炉や小型モジュール炉(SMR)等を検討に入れた新増設、リプレースの実現などがあげられています。SMRとは小型原子炉で、日立製作所と米GEが開発を進めてきるようですが、実用化にはまだ至っていないようです。

関西電力の社長に対する2月25日の産経新聞のインタビューでも「2050年に向けて原子力発電を主力電源と位置づけ、小型モジュール炉開発等を検討する」といった発言があったようです(ヤフーでの産経新聞ニュースから)。本日の日経平均株価終値は前日から1,202円下げ、28,966円となりました。3万円を超えた段階で利益確定の売りが出ているように思えますが、調整局面も暫く続くかも知れません。週明けに日経平均株価が更に下げたところで、原子力関連銘柄の買増しをしたいなと思っています。

ところで最近は集中して株式投資をしていることもあり、株式投資関係の記事が続きましたが、明日以降は株主総会関係、コーポレートガバナンス関係の話題に変えたいと思います。

総合資源エネルギー調査会の分科会が開催 - 「エネルギー基本計画に対する経団連の考え方」

本日の日経新聞で「脱炭素へ原発『国が前面に』」という見出しの記事がありました。総合資源エネルギー調査会の分科会が2月24日に開催され、そこで経団連はじめ関係団体に対して原発や再生エネルギーに関する考えのヒアリングが行われたようです。

この分科会というのは、新聞では具体的な名称の記載がありませんでしたが、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の第37回会合になりますが、ここで経団連が「エネルギー基本計画に対する経団連の考え方」を公表しています。資料は次のとりです。

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/037/037_005.pdf

この資料の中で「2030年目標に対する考え方(各電源に対する考え方を含む)」として原子力の考え方が記載されています。一部抜粋すると次のとおりです。

原子力は、3Eのバランスに優れたエネルギー源。将来にわたり人類が必要なエネルギーを確保しカーボンニュートラルを実現するために不可欠な技術足元、地元の理解を得た上で、安全性が確認された既設発電所の着実かつ迅速な再稼働や設備利用率の向上を着実に進め、引き続き、重要なベースロード電源として活用する必要
・ さらに、2050年段階で然るべき水準を維持することを見据えれば、バックエンドの環境整備、安全性を前提とする運転期間に関する見直し・検討はもとより、前述の通り、政策方針へのリプレース・新増設盛り込みが求められる
・ メーカー等関係事業者の技術・人材を維持する観点から、対応は待ったなしの状況。今回のエネルギー基本計画が「ラストチャンス」になることを十分に認識し、政府として原子力に関する方針を明確化すべき

経団連は2050年カーボンニュートラルには原子力の活用が必要という考えのようですね。当然の主張の印象を受けます。風力発電では技術的課題がかなりあり、CO2削減には原子力の活用が不可欠なのでしょう。なお、エネルギーのことなどほとんど分かっていないであろう全国消費者団体連合会は「原子力=反対」の主張のようです。こういう素人集団の意見をヒアリングする意味がどこまであるのかなと疑問を感じるところではありますが、消費者である一般国民の意思を代表する機関ですので、形式的にせよヒアリングをせざるを得ないのでしょう。

原子力のメリットについては、関西電力のホームページに詳しく書かれておりますがいくつかあげます。1つ目は、燃料の安定的供給です。ウランは石油に比べて政情の安定した国に埋蔵されていると言われています。2つ目にCO2を排出しないということです。つまり発電の過程においてCO2を排出しません。3つ目に、年間を通じてフル出力で運転が可能ということです。日本の海では強い風が吹かないという課題があり、無風時には発電できないという欠点が風力発電にはあります。

素人ながらに最近色々と情報を収集した限りでは、やはり原子力の今以上の活用がどうもカーボンニュートラルには必須になるようですね。そして、原子力の活用となると放射性廃棄物の処理が伴います。従い、原子力の処理関連銘柄は長期での保有に期待できるということになるかと思います。