中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

不二家(2211)の酒井美紀の社外取締役選任理由 ー 「主婦としての観点」というのはかなり違う気がします

本日はお遊びのような記事を1つ書きます。中堅クラスのお菓子メーカーの不二家(2211)がタレントの酒井美紀(1978年生)を社外取締役に選任する旨を公表していましたが、同社の3月3日付の定時株主総会の招集通知の取締役選任議案に酒井美紀の経歴と選任理由が掲載されていました。社外取締役候補者とした理由は、次のとおりです。

酒井美紀氏は、女優として活躍される一方、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使として世界の子どもたちを支援する活動もされており、これらの経験と優れた人格、見識を有しております。当社は同氏に社会貢献の観点から助言をいただくことのほか、主婦としての観点からも助言をいただけるものと判断し、新たに社外取締役として選任をお願いするものであります。同氏は過去に会社経営に関与したことはありませんが、上記の理由により、当社の社外取締役としての職務を適切に遂行することができるものと判断しております。

「主婦としての観点からも助言をいただける」とあります。酒井美紀と言えばかなり有名なタレントであって、「白線流し」などのテレビドラマに出ており(かなり古いですが)、これまでに稼いだお金も数億円を軽く超えているのだろうと想像します。一般人の生涯賃金を軽く超える額をこれまでの人生で稼いでおり、超富裕層のカテゴリーに入る人です。そういう超富裕層が「主婦の視点」というのはかなり不適切な表現かと思います。

そもそもとして、不二家社外取締役の役割が良く分かっていないのかなと思ってしまいます。社外取締役には、企業経営や事業戦略を理解し、企業の方向性をナビゲートする役割が求められており、芸能活動の経歴や世界の子供たち支援といったおおよそ企業経営とは直接の関係がない経歴しかない人を社外取締役にするというのは根本的な考えに誤りがあるのだと私は思います。不二家のPRのために採用したというのが正直なところだと思うので、素直にそのように記載すればよいのになと思ってしまいます。

取締役の選任理由は今後、具体的な記載が求められる動きにあります。スキルマトリクスが春に改訂のコーポレートガバナンス・コードで規定される動きにあります。そうなった場合、不二家酒井美紀のスキルをどう記載するのでしょうか。スキルに「芸能力」「タレント力」と記載するわけにもいかないと思いますが、「主婦力」ということを記載するのでしょうか。今後が楽しみです。