中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

買収防衛策の非継続の早期公表という手段もあります ー 資本市場へのアピールのため

本日の日経平均株価終値は前週末比+697円の2万9663円でした。日経平均株価が3万円を超えた頃から「現在の株価はバブルではないのか?」という意見が聞こえてきますが、全くバブルではないと思います。日経平均もまだまだ大きく上昇が続くように想像しています。次回以降のどこかのタイミングでPERについて書きたいと思いますが、バブルの頃のPERは約50倍(1989年12月末の日経新聞では「61倍」と記載)で、今時点はまだ20倍台です。日経平均の上昇は企業業績の裏付けがあるところ、コロナ禍収束を見越して企業が本決算、Q1、Q2で業績上方修正をするであろうことを考えると、これに伴い株価も大きく上げるのではないでしょうか。ということで、今の相場は買いと思います。

さて、昨日、買収防衛策について記事を書きましたが、これに関連する記事を本日は書きます。昨年の12月4日にフジテック(6406)が買収防衛策の非継続を公表しました。フジテックは2019年6月の定時株主総会で買収防衛策を継続更新しており、次回の更新期限が3年後の2022年6月ですが、2020年12月時点で次回更新期限の到来をもって更新しないことを公表しています。つまりだいぶ早い段階で次回は非継続であることを公表しているということです。非常にめずらしいケースです。

現時点で廃止せずに次回までは継続することについては、プレスリリースに次のような記載があります。

本対応方針は2019年6月開催の定時株主総会にて3年間の継続をご承認いただいたものであることに加え、世界的にコロナ禍収束の目処が依然として未定なことによる経済への影響など、昨今の経済環境の不透明な中においては、混乱に乗じた敵対的買収による株主利益の毀損リスクに備える必要があると考えております。以上を鑑みて、本対応方針については、今年度または来年度ではなく、有効期間が満了する2022年6月開催の定時株主総会終結の時をもって継続しないことが、当社の企業価値・株主共同の利益に資するものと判断し、上記の決議をいたしました。

なるほどと思う文面です。昨年、一昨年と買収防衛策を継続更新したが、次回は難しいと判断する企業はこのような取り組みも1つの考え方としてあるかも知れません。もっとも、買収防衛策を有することのデメリットは、取締役選任議案への反対の可能性(買収防衛策を有することで選任議案に反対する機関投資家も一部存在)、ESGスコアの「G」の評価点が下がるということがありますが、総じて大きなデメリットではありません。従い、自発的にこのような公表をする必要性は高くないと私は思いますが、買収防衛策に対する機関投資家の批判は益々強まる傾向にありますので、次回の更新は確実に難しく、市場にガバナンスのアピールをしたい企業はフジテックのような開示を参考にするとよいかも知れません。

ちなみにフジテックは自発的に積極的にこのような公表をしたとは考えられず、恐らく機関投資家との何らかのやとりがあったか、将来、株主提案があった場合に会社提案への賛同を確保するため買収防衛策の非継続を早期に公表したような気がします。