コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

ESGは業績の免罪符か? ー 投資家は超長期スパン(30年~40年)での株価向上までは期待していません

来週は社内のマネジメント層を対象にコーポレートガバナンス全般のテーマについて、約1時間の時間枠で社内研修の講師をする必要があるため、昨日から資料を作成しています。

最近まわりの状況を見て思うのですが、金融機関以外の会社のサラリーマンの金融・株式投資リテラシーの低さがひどいと感じます。少し前になりますが、社内の50代の中高年の部門長の社員から「機関投資家って何?」と聞かれたことがあり、「まじか!」とびっくりしました。金融機関の方から見ると「それって入社1年目で知るべき常識だよね」ということになるかと思います。このお粗末な事態の原因は、日本の子供が金融教育を受けなかったことが理由だと思います。高校の授業で、金融機関の方を招き、四季報の読み方はじめ株式市場の教育を本来すべきなのだと思います。一流大学出とまではいかずとも、中堅クラスの大学(MARCHレベル)を出て、そこそこの規模の上場企業でサラリーマンをしていながら、中高年になっても「機関投資家は何?」、「財務指標や株式指標が読めない」などといった人はいなくなるような時代が来れば良いなと思います。

ということで、研修では資本市場の動き、ROE、TSRなどの指標も説明しようと思い資料準備をしており、ESG投資にも触れようと思っているのですが、3月19日の日経新聞に「ESGは業績の免罪符か」という記事がありましたので、紹介します。

仏ダノンの経営トップがESG経営の旗振りをしていたようですが、解任をされたようです。その理由はライバルのネスレと比べて株価が長期的に低迷していたことが理由のようです。つまり、ステークホルダー主義を掲げていれば株主からの攻撃をかわせるわけではないということが記事に書かれています。経営陣がステークホルダー主義を主張することで、一時的に「煙幕」を張れてきているのではないかと考えているということです。

ESGの言葉や脱株主第一主義の話題が出るたびに、「株主だけがステークホルダーではない」という主張をする人を時々目にします。特に、自分で株式投資をやったことのない人にこういう意見を持っている人がとても多い印象を受けます。しかし、上場企業の役割は、株主価値の最大化を目指すのであり、その中で、他のステークホルダーにも配慮する経営をすることで持続的な成長をすることが重要なのです。ESGに力を入れるにしても、それは企業の業績と必ずセットで考える必要があります。ESGに取り組むことが将来のリスクを低減するのであれば、企業の持続的成長に繋がり、とても意味のあることです。

しかし、企業の持続的成長といっても、ほとんどの投資家は30年~40年といった超長期での企業の成長には関心はありません。そこまでの期間を考えて投資する人は極めて少数でしょう。であれば、ESGの取組みも今後10年~15年といった一定の期間でのリスクを軽減する効果がないのであれば、あまり意味はないと言えます。「30年後のリスクを軽減するのです」といっても、株主からすれば「だから?」ということなると思います。

企業の中計経営計画でESG経営といった言葉を盛り込むというか、ちりばめる企業が最近かなり増えています。私も株式投資をする上で投資先銘柄の中期経営計画はじっくり読みますが、ESG経営の意味が分かっていないと思われる計画を結構目にします。上場企業は社会貢献をするために存在するのでなく、金を儲け、株価をあげるために存在するのです。そこを理解しないでESG経営などという言葉を漫然と中期経営計画に掲げると機関投資家から見ると「この企業の経営陣は大丈夫?」という疑問を持たれることになります。

この先10年~20年の期間でESG経営を行うことが、企業の業績にどう結び付くのかを、明確にしないと投資家は「この会社の経営トップはESGの意味が分かっていないのだな」と馬鹿にされてしまいます。であれば、ESGなどという言葉は最初から一切使用しない方が良いと思います。