コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

エーザイは今年も買収防衛策を取締役会決議で継続更新 ー 「患者と生活者を含む主要なステークホルダーズの安心と安全を守るため」

先日、エーザイアルツハイマー新薬の承認で大きく話題になりましたが、そのエーザイは本年も買収防衛策を継続更新したようです。

https://www.eisai.co.jp/news/2021/pdf/news202147pdf.pdf

エーザイの買収防衛策は、他社の買収防衛策と承認プロセスが大きく異なっています。事前警告型の買収防衛策のほとんどは、定時株主総会で株主の承認を得ているのですが、エーザイは取締役会の決議のみで毎年、継続更新しています。結果、エーザイの経営トップの取締役選任議案に対して、機関投資家の議決権行使の反対が増えます。今年の定時株主総会でのエーザイの社長である内藤氏の取締役選任議案での賛成率は67.27%でした。ところで、このエーザイのプレスリリースの中で、買収防衛策が必要な理由として次の内容をあげています。

  • 本対応方針は買付者が現れた場合に買付者との交渉を通じて大多数の既存株主に有利な条件を引き出すことを可能とする施策になり得るものである一方、その運用において経営陣の恣意性が排除される仕組みを有し、経営陣による濫用的な新株予約権の発行(いわゆる買収防衛策の発動)を防ぐことが可能であることから、株主、投資家にとって、むしろこれを保有していることが望ましいと思われる
  • 当社のビジネス環境や業界動向より、当社の企業価値・株主共同の利益を毀損する恐れのある買収リスクの存在は否定できず、患者様と生活者の皆様を含む当社の主要なステークホルダーズの安心と安全を守るという観点から、リスクに対する十分な備えを取締役会として行うのは必要かつ妥当である。
  • 欧米各国の企業買収を取り巻く法制度と対比した場合、我が国でも金融商品取引法において大量買付時の手続きの整備はなされたものの、未だ当社の企業価値・株主共同の利益を守るために十分とはいえないと認識する。

いずれも合理的な理由かと思いますが、この中でも「患者様と生活者の皆様を含む当社の主要なステークホルダーズの安心と安全を守るという観点」は興味深いです。買収防衛策導入企業のほとんどは、企業価値ひいては株主共同の利益の毀損を防ぐためという文言を用いて、株主の利益のために導入しているということをアピールしています。

これは2005年頃に経産省法務省が策定した買収防衛策ガイドラインに従っているものです。しかし、私はこの説明はもはや時代にあわなくなっていると考えます。株主資本主義ではなく、ステークホルダー資本主義の時代です。前にもブログで買収防衛策の継続に当たっては株主をはじめ企業の様々なステークホルダー(得意先、従業員、サプライヤー、地域社会など)の共同の利益の確保のためにあるということを明示すべき」と書きましたが、このエーザイの理由はまさしくその通りと思います。以前に書いたブログを再掲しますのでご関心のある方はご覧頂ければと思います。

  •