中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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日本製鉄によるTOBについて東京製綱は意見表明を留保 - 対抗措置の準備に入るか?

日本製鉄による東京製綱へのTOBですが、本日、東京製綱が意見留保を表明いたしました。テレビ東京のニュースでは、反対意見が確実のような報道でしたが、反対ではなく意見留保にしたようです。テレビ東京の報道も東京製綱のどのレベルの関係者に裏を取ったのか知りませんが、結構いい加減ですね。

それはさておき、東京製綱の本日付の「日本製鉄株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ」に次のとおり記載されています。

当社は、公開買付者から、対質問回答報告書が提出され次第、速やかにその内容を精査し、公開買付届出書の内容その他の関連情報とあわせて慎重に評価・検討を行った上で、本公開買付けに対する当社の賛否の意見を最終決定のうえ、表明する予定です。株主の皆様におかれましては、当社から開示される情報に十分にご留意いただき、慎重に行動していただきますよう、お願い申し上げます。

東京製綱は日本製鉄に質問を投げています。その内容も本日のプレスに記載されており、10個の質問事項がありますが、その中でいくつか取り上げます。

(2) 本公開買付けに関して、貴社がファンドや当社株主、当社の協業会社その他の第三者との間で、何らかの連絡、協議、合意、その他の意思連絡等をなされたか、なされた場合にはその具体的な内容をご教示ください。また、今後このような連絡、協議、合意等を行う予定がある場合は、その相手先及び内容等について、具体的にご教示ください。
(4) 貴社は、本公開買付けを実施せずに、本公開買付けの買付予定数の上限である1,625,500 株の当社株式を市場で買い進む方法もあったはずですが、その方法を採用せずに敢えて本公開買付けを実施した理由及び目的についてご教示ください。
(5) 事前に当社に対して当社株式の買付けについて何らの協議も申し入れることなく、突然、本公開買付けを開始することが、当社のステークホルダーの皆様(当社の取引先様、従業員、他の株主等を含みます。)にもたらす不安・混乱等の影響、ひいては、当社の企業価値に及ぼす影響について、いかなる評価・検討を行われたのかにつき、具体的にご教示ください。
(6) 実際に、本公開買付けの公表後、当社の顧客等から懸念の問合わせが来ております。具体的には、本件に対する当社の意見表明の内容によっては、貴社が当社への材料供給等に関して何かしら不利益を課すことを考えておられるのではないかとの懸念であります。このような懸念に対し、当社の主要サプライヤーである貴社は、どのようなお考えをお持ちか具体的にご教示ください。 

個人的には太字でハイライトをした記述が興味深いのですが、特に(2)などはどういう意図で質問したのかなと想像をすると、日本製鉄が他の第三者と共同して、つまり意思を通じてTOBを実施するのであれば、その者の保有分も含めて20%超ということで東京製綱は買収防衛策を発動することを念頭に置いているのかなとついつい想像してしまいます。

また、(5)や(6)の質問なども日本製鉄の行為が東京製綱の企業価値ひいては株主共同の利益、株主以外のステークホルダーの利益を損うことの証拠作り、つまり買収防衛策の対抗措置発動の下準備のためのような質問にも思えてしまいます。「買収防衛策の発動=企業価値ひいては株主共同の利益の確保」は常套文句です。

今回は東京製綱は意見表明を留保しましたが、反対表明に近い留保表明で、東京製綱は既に戦いの準備に入っているかも知れません。万一、買収防衛策の発動などとなった場合にはとても面白い事案になると思います。引き続き注視して行きたいと思います。