コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

【中長期株式投資】投資家「人的資本」見極め ー けど人材投資は昔からやっています

中長期での株式投資の視点として気になる新聞記事を取り上げて行きます。本日の日経新聞の記事になります。

〈人への投資 開示始動〉(下)投資家「人的資本」見極め: 日本経済新聞

最近、機関投資家と会話をすると人的資本への関心も昨年と比べて高まってきているとは感じますが、一方、まだまだ手探りという感も強いです。「企業は人なり」とは昔から言われている言葉であり、企業は人的資本への投資は昔から実施しているところかと思います。

だから、個人的には人的資本の充実など今更何故?と思います。難しく考える必要はなく、20年前に比べて転職に抵抗のない若手が多い今の世の中で、優秀な人材に企業で長きにわたり働いてもらい、企業業績の向上に資するためには、従業員のモチベーションを如何に高める労働環境にしているかということだと多います。

そして、モチベーションを高めるということは、自分の仕事にやりがいを感じることに他なりません。やりがいが高いと企業の業績が高まるというのは至極当然かなと思います。というシンプルなことを考えておけばよいのではないでしょうか。

ところで従業員意識調査で従業員の「働きやすい」という評価が高い企業は、投資先としては注意する必要があるかも知れません。「働きやすい」=「ストレスがない」ということだと思いますが、ストレスのない会社が従業員のモチベーションを高めるということとは違うと思います。

【株式投資】原子力政策に関する政府の検討状況

先日、「決戦 株主総会 LIXIL死闘の8ヵ月」(文藝春秋)という本を買いました。少し前になりますが、LIXILで創業家と雇われ社長が争った内容がドキュメントで書かれており、これが面白いです。まだ途中ですが、コーポレートガバナンス上の問題やお家騒動の経緯などが細かく記載されております。

さて、本日は、簡単な情報を1つ紹介します。

原子力放射性廃棄物関連で日本の原発政策の情報には注視しているところで、数日前の日経新聞にも政府が原発の利用促進に向けて動きだすといった記事がありました。ベースになっているのは、経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力小委員会の議論かと思います。直近ですと9月22日に開催されており、資料は次のとおりです。

この会議は、議論の様子も視聴でき、先日2時間かけて聞きました。資料の内容をコンパクトに説明してあり、また委員からの意見も出ていますので、資料を一から読むよりも先に視聴した方が短時間で理解が進むかも知れません。

事前警告型の買収防衛策を廃止する際のポイント(その2)

前回、9月4日に「その1」の記事を書いてから時間が経ってしまいましたが、本日は続きを書きたいと思います。なお、前回の記事は次のとおりです。

前回、いざという時のために、有事導入型の買収防衛策をきっちりと社内で議論・整理した上で廃止することが大事だと書きました。「有事の時に法律事務所を使えばいいので、今はプレスリリースにうたっておけばいいや」は駄目ですということです。というか、廃止する企業でなくともこれだけアクティビストの動きが活発であったり、事業会社の敵対的買収が普通になっている時代ですので、全ての上場企業が検討すべき事項であるのですが。

では、有事型の準備以外に廃止する際に注意すべきことは何でしょうか? それは、廃止後に機関投資家との非財務情報の対話を継続して実施することだと思います。「なんだそんなことか」「そんなのはIRが決算説明会をやっているよ」「IR取材を受けている」といった意見をお持ちの方が多いかと思います。

それはそれで勿論大事ですが、大事なのは、通期決算の今期見通しを語るのではなく、3年以上の期間での自社の中長期な企業価値向上成の施策を機関投資家と議論することであり、それが非財務情報の対話です。

敵対的買収が起きた時には、短期保有機関投資家は買収価格が市場より高い場合には直ぐに売却します。この場合でも保有を継続してくれる、つまり会社をサポートする株主は誰かというと中長期保有機関投資家になります。ちなみに、現状、個人投資家は中長期保有の「投資家」ではなく「投機家」(=企業の財務など理解しないまま株を少額で買ってる人々)です(この個人投資家の方々に、コーポレートガバナンス等も理解頂きたくて、私はブログやツイッターで記事を書いています)。

機関投資家に中長期保有の投資家となって貰うには、彼らが中長期でも株式保有を継続したいという意思を持たせることが必要です。そのためには、先ほどの3年を超える期間での自社の企業価値向上に向けた取り組みについて会話をすることが大事になるわけです。1~3年は中期経営計画期間ですので、この中期経営計画を超える期間での持続的成長かつ中長期での企業価値向上を語ることが大事です。この対話を継続して、会社の理解を深めてもらうことで、有事の際には会社をサポートして貰うのです。

この際、対話に参加する企業サイドの人は経営トップ又はこれに極めて近いポジションの役員の方であることが大事です。常務クラスの役員では駄目です。「なんちゃって役員」の執行役員(=法的な役員でない)、それ以下のIR部長などの部長クラスは100%論外でNGです。だって企業の中長期の話をするわけですので、その方針を決める責任者である経営トップに語ってもらいたいと機関投資家は考えています。担当役員や部長クラスで足る業績説明や通常のIR取材とは次元が違います。

かなり前にも非財務情報情報に関する機関投資家との対話のすすめのような記事を書いたことがありますが、この対話がつくづく大事かなと感じます。私も4~5年前には、対話って何をやるのだろうかと手探りでしたが、最近はこの非財務の対話の重要性をあらためて感じます。

「中小型株に仕込みの秋」 ー 時価総額1000億円以下の企業は万一に備える必要あります

今週は連日忙しく、ブログの記事の十分な更新ができませんでした。経産省のCGSガイドラインのポイント解説と事前警告型の買収防衛策を廃止する際のポイントの続きの記事を書く予定でしたが、投資先企業のIR部門とのメール交信での質疑応答で時間がとられてしまいました。ちなみに、この企業はIR部門の方が毎回、丁寧なメール回答をしてくれており、こういう対応をして頂ける企業には、個人投資家としては中長期で株式を保有して応援したい気持ちが強くなります。一方、2週間以上も回答をくれない某空間ディスプレイ銘柄の企業もありますが。

さて、昨日の日経新聞に次の記事が掲載されていました。

中小型株に「仕込みの秋」: 日本経済新聞

アクティビスト(物言う株主)が株主提案をするためには6カ月以上前から継続して一定数の株式を保有する必要があり、6月末総会の場合、10月中下旬が株式取得のリミットで、実際は時間的余裕をもって進めるため、9月中に株式を取得するアクティビストが多いという内容です。

アクティビストがターゲットにするのは、日本企業の場合、株式時価総額100億円~1000億円クラスが過半数を占めます。ご存じの方も多いとは思います。

問題はこの規模の企業は、アクティビストに狙われるリスクが大であるにも関わらず、人的リソースが十分でないため、コーポレートガバナンス対応が不十分な状況にあることが多いということです。コーポレートガバナンスを整備しても、直ちに収益に直結するものではないため、そんなことに時間をかけるより、目先の売上を伸ばそうと考えることが多いと思います。けど、それが危険です。

アクティビストに株を取得されると、経営が混乱し、アクティビスト対応にかなりの時間を費やすことになります。であればこそ、平時からコーポレートガバナンス対応をしっかりやっておくことが重要なのです。株主総会対策は10月から始まっていると言ってよいかと思います。

引き続き、ブログでもコーポレートガバナンスについて、上場企業の経営トップやご担当の方に有用な実務家目線での記事を掲載して行きます。まずは、この3連休に、CGSガイドラインのポイント解説と事前警告型の買収防衛策を廃止する際のポイントの記事を書きたいと思います。

【株式投資】自動車生産台数データ の収集

9月16日に四季報データが更新されたこともあり、投資先銘柄の決算情報の整理と各企業の経営環境に係る周辺情報の収集・分析を行っており、その過程で昨日は1社のIR部門にメールで質問しました。

そういえば、投資先銘柄の1つである某銘柄(中小型株)に情報開示のあり方について、ホームページから9月9日にメールで質問をしたのですが、先週は回答がありませんでした。株主の質問の重要性が分かっていないようで、週明けにメールで催促をして、場合によってはIR部門に電話をして「どうなっているの?」と質問する予定です。要は、この銘柄は株主総会の様子などを動画拝見していますが、総会動画などは投資家にとってあまり意味はなく、投資家にとって一番大事な決算説明の動画を配信していないため、今後は「配信を検討してはいかがか?」ということをIR部門に注文したわけです。この銘柄は、検討題材の1社として、諸々開示情報を分析して、コーポレートガバナンス・コードに照らして、少し理論的な提案をしてみたいと思います。

さて、前置きがだいぶ長くなりましたが、久しぶりに株式投資に関連する情報をブログで紹介します。私の投資銘柄の1つに国内の自動車の生産台数の影響を受ける銘柄があり(自動車産業は裾野が広いですね)、自動車生産台数を時々確認するのですが、有用なデータとして以下があります。  https://www.marklines.com/ja/

自動車メーカー、自動車部品メーカー等の自動車関連業界にいる方には、とても有名な会社かと思います。有料データだとより詳細なデータの提供を受けられるのですが、無料の範囲でも一定程度は有用なデータが拾えるかと思います。個人投資家には十分かと思います

また、自工会もデータを公表しています。

JAMA - データベース

これらのデータをもとに、あとは投資先企業に質問をすれば、自分なりに自動車業界の動向が整理できるように思います。大きなマクロレベルの情報は自分で収集して、そこから先の詳しい情報は投資先企業に直接質問をして収集するというのは、中長期投資の鉄則かなと私は考えています。そうすることで、企業側に「この投資家は勉強しているな?あなどれないな」という印象を与えることが出来ます。

また、トヨタ、日産、ホンダはじめ各自動車メーカーもホームページでグローバルでの自動車の生産・販売台数をエクセルで細かく公表していますので、こちらも有用かと思います。

ジャフコグループとシティインデックスイレブンスの攻防 ー シティの保有割合が増加

今週金曜日は四季報秋号の発売ですね。週末は更新された四季報データを読み込む予定です。先週末から仕事がかなり多忙で、週末に買収防衛策を廃止する企業のポイントの記事を書くことができませんでした。今週は平日は纏まった記事を書く時間がないため、あらためて今週末に記事を書く予定です。

さて、ジャフコですが、シティインデックスイレブンスが大量保有報告を出しており、保有割合が11.78%となったようですね。以下は株探のニュースです。  

ジャフコGについて、シティインデックスイレブンスは保有割合が増加したと報告 [変更報告書No.5] | 株探ニュース

ジャフコは8月15日に有事導入型の導入を取締役会決議し、臨時株主総会を今後開催する可能性があることも公表しています。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2174167/00.pdf

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2174169/00.pdf

ところで、この後出しジャンケンの有事導入型は完全にプラクティスとして定着しつつありますね。2005年頃の経済産業省企業価値研究会の時代には、有事型などは「もってのほか!」ということで事前警告型が大前提で、それがこの10年以上続いたのですが。

資本市場関係者は自社の投資先企業が敵対的買収となった場合、新株予約権の無償割当を行う、正確にはその時に開催される株主総会で判断し可決された場合に割当を行う、ことは当然のこととして見ているのかも知れません。

一方、事前型も有事型も反対という機関投資家(リソースの小さい機関投資家だったりしますが)もわずかにいますが。最近の有事型の案件増や裁判例を考えると、経済産業省法務省あたり(金融庁も?)が買収防衛指針であったりTOB規制の見直しを検討した方が良いのではないでしょうか? 東京機械製作所最高裁が認めたMOM要件の適用範囲も明確にしないと、有事型を検討する企業も色々と悩ましいところがあるかと思います。そもそも2008年頃の買収防衛ガイドラインは今の現状に鑑みると、どこまで意味を持つのか疑問があるところですし。

物言う株主(アクティビスト)の武器 ー コーポレートガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)のポイント

昨日は、経済産業省が7月19日に公表したコーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)について、某オンラインセミナーでの経済産業省の産業組織課長の説明資料と旬刊商事法務に記載の課長補佐クラスの方の解説記事を読みました。CGSガイドラインは次のとおりです。

「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を改訂しました (METI/経済産業省)

今回の改訂箇所はいくつかありますが、大きなポイントの1つは、取締役会の監督督機能の再度の整理と社外取締役の評価になると私は考えています。

まず、監督機能ですが、監督=監視というイメージを未だに持つ企業が多いですが、そうではなく、経営陣のリスクテイクを後押しし、リスクテイクをしないことのリスクを提起することも監督に含まれるということです。私も社内で会話をすると監督のイメージを勘違いしている方がかなり多い印象を持ちますが、単に業務執行の進捗等を監視するのは取締役会の仕事ではないということです。勿論、執行サイドから報告があれば取締役会も何らかの発言はしますが、報告を受けるのを主と考えるのではなく、能動的に行動せよということかと思います。例えば業績が向上しないCEOについて指名委員会は解任を検討したり、報酬減額を検討するなども取締役会の監督機能になります。

次に、やはり社外取が重要ですね。プライム上場企業では社外取3分の1以上がコーポレートガバナンス・コードで要請されているので(コンプライではないですよ)、とりあえず、数あわせのため税理士や弁護士あたりに社外取になって貰ったという企業も大変多いかと思います。けど、事業も分からない素人を社外取にして、「本当に機能しているのか?」「質は大丈夫か?」ということです。社外取を指名委員会委員長や筆頭独立社外取が主導して評価せよということです。これは重要ですね。

私が物言う株主であれば、これを理由に業績の低迷する企業に対して、事業成長に貢献できる社外取への交代を強く提案すると思います。投資先銘柄の中でいくつかの企業の来年の株主総会に参加して、こういった主張を議長にしてみたいなと思います。

ということで、「中長期投資を志向する個人投資家」の方は、今回のCGSガイドラインを一度じっくり読み、自社の投資先企業はこのガイドラインに照らしてどうかを良く考え、必要に応じて投資先企業に提案や質問をすることが大事かと思います。株式市場の約17%を占める個人投資家物言う株主的な行動をすることが株価向上に繋がるのだろうと考えます。ブログでも今後、CGSガイドラインについて、複数回にわたり個人投資家向けに分かりやすく解説をして行きたいと思います。

次回は、事前警告型の買収防衛策を廃止する際のポイント(その2)を書きたいと思います(多分今週週末)。

事前警告型の買収防衛策を廃止する際のポイント(その1)

明日月曜日は久しぶりの在宅勤務です。この週末には、CGSガイドラインや伊藤レポートを結局、じっくり読むことができませんでしたので、明日は、これらガイドラインの精読などのインプットに時間を費やす予定です。これに加え人の目がないので、思う存分に株式投資銘柄の情報収集をする予定でもあります。

先週は仕事上の必要があり、国内の主要機関投資家20社程度の議決権行使基準を整理しました。事前警告型の買収防衛策の行使基準は、昨年、一昨年から変わりなく厳しいですね。社外取締役過半数いない企業や過半数いても業績が低迷していてROEが低い企業(かつ機関投資家の株式保有比率の高い企業)は、新規導入や更新での株主の過半数の賛同を得るのは正直なところかなり厳しいところかと思います。

従い、やむなく事前警告型の廃止を検討するという企業も多いかと思います。こういう企業は廃止に当たって何を検討すべきかを複数回にわたり記事を書きたいと思います。

まず、直ぐに思いつくのは有事導入型ですよね。事前警告型を廃止する企業の中には、「今の時代は有事導入型が認められているので安心」と考える企業も結構多いと想像します。廃止の際の東証へのプレスリリースには、次のような文言を掲載することになります。

当社の企業価値向上および株主共同の利益の確保・向上に取り組むとともに、当社株式の大量取得行為が行われる場合には、大量買付を行う者に対し、株主の皆様がその是非を適切に判断するために必要かつ十分な時間と情報の提供を求め、独立性を有する社外役員の意見を尊重した上で、金融商品取引法会社法その他関係法令の許容する範囲内において、その時々において適宜適切な措置を講じてまいります。

これは廃止する企業のほとんどが「お作法」として記載しています。5年以上前の廃止企業のプレスではこのような記載はまず見かけませんでしたが、3年ほど前から廃止企業のほとんどがこの文言を記載しています。理由はシンプルで買収防衛策は事前開示が重要ですので、有事型を採用する余地があることを予め開示するのです。

この有事型で一番大事なのは、本当に有事導入型のスキームを十分に社内検討した上で廃止していますかという点です。最近の事例を見て「有事の時には大手法律事務所を起用して有事型を導入すればよいから、今の時点では深く考える必要はない。まあ、事前警告型と同じような内容で足るだろう」という安易に考えている企業も多いのではないでしょうか? 

しかし、この考えは要注意です。有事型の場合には、株主総会の後日の賛同が必須になりますが、大量買付者が出現してから総会基準日の設定までには時間がかかり、この間に株式保有比率が高まるリスクがあります。安易に事前型と同じスキームと考えることはリスクがあると思います。有事導入型のスキームについて事前警告型との違い等を具体的に社内で検討しておくことが大事です。

廃止にあたっては、社外取締役から細かい質問が出ることも想定しておいた方がよいと思います。社外取といっても能力・資質に大きな開きがあるので(大手総合商社の社外取と株式時価総額1000億円程度の企業の社外取では能力に大きな開きがあるのは当然です)、質の低い社外取は何の問題意識がないかも知れませんが、買収対応戦略は、取締役会の重要な検討事項でもあるので、通常は社外取の関心も高いと思います。

有事導入型と事前警告型の詳細検討は、最近の旬刊商事法務に記事が掲載されているので熟読をおすすめします。では他に事前型を廃止するに当たって企業が検討すべき事項は何かありますでしょうか? 有事型の発動を視野に入れて、検討すべき重要な事項があると私は考えていますが、これは次回紹介します。

【株式投資】ASEAN主要国での自動車販売台数 ー 電動車の見通し

最近、コーポレートガバナンス関連の記事が続きました。以前は株式投資関連の記事も良く掲載していたのですが、ここ最近は遠ざかっており(自身の株式投資ノートには、ファンダメンタル投資情報を結構細かくメモする習慣は変わりませんが)、久しぶりにファンダメンタル投資情報を書きたいと思います。

欧米が完全に電動車に舵を切っており、今後、10年、15年後にはグローバルに占める電動車の比率はかなり高まることが予想されています。先日、仕事で自動車メーカーの決算分析でトヨタ、日産、ホンダの自動車生産台数を調べる中で、アセアンの自動車販売台数や電動化の予想が気になりましたので(勿論、自分の株式投資の観点からです)、ネットで調べてみました。

まず、アセアン主要国における自動車販売台数ですが、2021年度は約278万台で、トップ3は、インドネシアが89万台、タイが75万台、マレーシアが51万台となっています。次のジェトロのビジネス短信に記載があります。

https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=33888189

インドネシアとタイが2強ですね。

では、この2国における電動化の見通しについてですが、これもジェトロの公表資料等の情報になりますが、インドネシアでは工業省が2019年に自動車産業ロードマップを公表しており、2035年に自動車生産台数400万台を目標とし、うち30%を低炭素排出車(BEV、HBV、PHB等含む)とする予定のようです。

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2022/0302/9ad103e301baf59d.html

では、次にタイはどうかといいますと、2021年に政府が計画枠組みの議論を開始したようですね。また、ある媒体の情報によりますと、タイ電気自動車政策委員会は2030年の自動車生産台数は250万台で、このうち、EV化は30%の約75万台。この75万台の内訳は、BEVが50%で、PHEV+HEVが50%といった予想を立てているようです。タイ政府やタイ電気自動車政策委員会の公表する生データで確認をしたわけではないので、どこまで正確であるかの保証はできませんが。

いずれにせよ足元のEVの普及率は非常に低く、EV車の価格や充電設備のインフラ整備を考えると、EV化の急拡大は時間がかかるという意見もあるようです。これは、日本総研の方のレポートです。

以上になります。EV化はまだ先の話であり法規制や世の中の動きで急加速する可能性もあるので、実際のところは、今後の動きを注視して変化の有無を注視する必要があるかとは思いますが、現時点での今後の見通しの1つとして私は参考にしています。

2週間に1回は、投資先企業に対するメモノートと周辺情報の整理をしているのですが、整理の都度、新しい情報の発見があるものだなと思います。

当然ですが、これら情報はいずれもネットでの公表情報であり、情報は使ってはじめて価値が増すものです。私の投資先企業である某自動車部品関連企業が今後は東南アジア市場での展開に力を入れるという説明が前にありましたので、上記の情報をもとにIR部門に今後の戦略や見通しについて質問をする予定です。その上で回答に納得がいけば、株価の下がった局面で買い増しです。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第13回) ー 前回からの続き。企業は何をすればよいか?

前回の第12回で、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)は順守すること(=コンプライ)が必須ではなく、コンプライしない場合には、その理由を説明すること(=エクスプレイン)でもOKなのですが、世の中の多くの上場企業は、何故か「コンプライできないこと=恥」と考えており、開示が要求されていない事項について深く考えずに「全てコンプイしています」と安易に開示している企業がかなり多いであろうという話をしました(業績低迷や株価低迷の方がよっぽど「恥」と企業は考えるべきと、私は、いち個人投資家としては思うのですが・・)。このため、個人投資家は投資先企業にコンプライの実態を株主総会等で確認すると面白いことも話をしました。

では、企業としては何をすべきでしょうか? 私は個人投資家の立場からコーポレートガバナンス・コードを武器として使いこなし、投資先企業の企業価値をいかに向上させるべきかのスタンスでブログを書いていますが、今回は、いつもと異なり投資家から攻められる企業側の立場として、何をなすべきかを説明したいと思います。

答えはシンプルで、物言う株主から指摘を受ける前に、どうコンプライしているのかを開示するのです。そして問題はどう開示するかです。

この点、コーポレートガバナンスガイドラインといった名称でコーポレートガバナンスに対する自社の考えを策定、ホームページで開示している企業が結構多いです。けど、私はこれは不十分かと考えています。何故ならば、このガイドラインですが、各社各様で内容がバラバラで、自社の裁量で独自に記載しているケースが非常に多いのです。構成、項目、記載の順番も各社違うのです。恐らく各社とも自社の事情に照らして、開示しやすい箇所に重きをおいて作成しているのだとは思いますが、投資家から見ると非常に見ずらいです。

では企業はどうすべきかということになりますが、コーポレートガバナンス・コードの対比表の策定・開示が大事かと思います。次に紹介するブリヂストン大東建託西松建設のような内容です。

https://www.bridgestone.co.jp/corporate/manage/governance/pdf/2022_5_J_0704_Corporate_Governance_Code.pdf

https://www.nishimatsu.co.jp/company/pdf/business.pdf

https://www.kentaku.co.jp/corporate/ir/governance/img/cgc.pdf?20211227

他にも同様の形式のものを作成している企業もそれなりにありますが、これは優れていると私は思います。機関投資家はCGコードへの対応を見るわけですから、各社が独自に作成したガイドラインよりも、CGコードの原則・補充原則に1つずつどう対応しているのかが分かるのが有難いのだと思います。

先日、経済産業省がCGSガイドラインを改訂しました。経済産業省はこれまでにいくつかのコーポレートガバナンスに関するガイドラインを公表していますが、いずれも土台にはCGコードがあります。

企業としては1つ1つの対応を文章にして開示するのは結構大変です。なんとなく曖昧にしてすましていることを文章で明確にして、かつ開示するわけですので、実務がしっかりしていないと開示文章も貧弱になります。

けど、CGコードはコーポレートガバナンス憲法です。大変ですが、この作業をすることで自社のコーポレートガバナンスの欠点を社内で把握・共有でき、それを強化することで、物言う株主から指摘を受けても対抗できるし、さらには他の機関投資家の賛同も得られることに繋がるように思います。いかがでしょうか?

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第12回) ー 本当にコンプライ出来ているか?

1週間の夏季休暇も明日で終わり、月曜日から仕事に復帰です。火曜日から木曜日まで旅行をしており、旅行中も時間を見て新聞や読書をしようと思いましたが、株価をスマホで確認する程度で終わりました。移動が車であり、そもそも旅先で新聞や読書をするなどナンセンスだなと今更ながら感じた次第です(毎回、そう感じながらも読みもしない本を旅先に持参しているのですが)。

さて、8月18日の新聞に次の記事(電子版)がありました。ツイッターでも紹介したのですが、これに関連した記事を書きたいと思います。

東証プライム企業、「持続可能性」指針順守63%どまり: 日本経済新聞

今更ですが、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)では、コンプライ又はエクスプレインが求められています。CGコードの原則・補充原則の1つ1つに対して、必ずしも企業は遵守する(コンプライ)必要はなく、コンプライできないということであれば、その理由を説明(エクスプレイン)することでも何ら問題ないのです。

例えば、プライム上場企業には社外取締役3分の1以上が求められていますが、3分の1が必要ないと考える企業は、その理由をエクスプレインすることで足ります。だから上記の日経の記事のように「『持続可能性』順守63%どまり」であっても何ら問題はなく、逆に遵守しないことがあたかも悪いことであるかのような新聞の見出しがいかがなものかと私は思います。記事を書いた記者はCGコードをどこまで理解しているのかなと疑問に思ってしまいます。恐らく実務には精通していないのだと思います。

CGコードで一番問題なのは、原則・補充原則についてコンプライできていないのに「当社はCGコードで定める原則・補充原則の全てをコンプライしています」という表明をしている企業です。このような文言をコーポレートガバナンス報告書で記載している企業はかなり多いのですが、その中には、実際のところはコンプライできていない企業も相当数あると思います。

CGコードの原則・補充原則の中には、コーポレートガバナンス報告書で開示が求められている事項がいくつかあります。これらの事項は開示事項であるため、何らかの理由をあげてコンプライしていますが、一方、開示が求められていない多くの原則・補充原則については、外からは実態が分かりません。

上場企業ですから、積極的に嘘をついているケースは少ないと思いますが、担当者レベルで「解釈の仕方によってはコンプライしていると言えなくもないな」ということで、安易にコンプライと判断しているケースはかなり多いかと想像します。要は開示が求められているところに限定して真面目に考えているということです。実務ではよくある対応かとは思いますが。

従い、個人投資家の方は、投資先企業のコーポレートガバナンス報告書を読んで「当社は全てコンプライしています」という記述があれば、一度企業に問い合わせをして確認して見ると面白いかと思います。勿論、1つずつ質問すると企業も取り合ってくれない可能性も大ですので、開示が求められていない事項の中で重要なものをいくつか取り上げ、「コンプライしているとあるが、どうコンプライしているのか具体的に教えて下さい」ということで質問をするのです。未だにCGコード対応をやっつけ仕事として考えている上場企業も多いかと思いますが、その考えをあらためさせるきっかけになると思います。CGコードにしっかりと対応することが企業の中長期的な企業価値の向上に繋がります。つまり理論株価の向上にプラスになるのです。企業にはCGコードの原則・補充原則を1つずつ真剣に対応して欲しいところです。

では、逆に企業サイドとしてはどうすべきでしょうか?この続きは次回以降にお話しをしたいと思います。

ジャフコグループが有事型の買収防衛策を導入

本日から今週1週間は夏休み休暇です。明日から外出・旅行等の予定ですが、世の中は動いていますので、①新聞 ②株価 ③ツイッターの3点セットは毎日確認する予定です。ツイッターは気にいった情報があればブックマークを付けて保管し、後で読むことが出来、かなり重宝しています。ブログも都度ツイッターに掲載しており、有難いことにツイッターで記事を読んで頂けるフォロワーの方も徐々に増えており、近い将来における副業の準備を少しずつですが、試行錯誤をしながら歩みを進めているところです。人との繋がりを今後は大きく増やしていくことが大きな課題の1つといったところです。

さて、前置きが長くなりましたが、旧村上ファンド系の投資ファンドのシティインデックスイレブンスらが専業ベンチャーキャピタルで最大手のジャフコグループの株式を10%以上保有していますが、本日、ジャフコは有事型の買収防衛策を導入することを次のとおり公表しました。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2174167/00.pdf

プレスリリースでは「本対応方針は、既に具体化している本株式買集めを含む大規模買付行為が行われる具体的な懸念への対応を主たる目的として導入されるものであり、平時に導入されるいわゆる事前警告型買収防衛策とは異なるものとなります。」との記載があります。また、プレスリリースの3ページに次の記載があります。

 本対応方針の導入それ自体は、株主総会決議等株主の皆様の明示的なご判断に基づくものでないことに鑑み、本対応方針に基づく対抗措置(具体的には新株予約権の無償割当て)は、(a)株主総会(以下「株主意思確認総会」といいます。)による承認が得られた場合であって、かつ、大規模買付者が大規模買付行為等を撤回しない場合、又は、(b)大規模買付者が下記 III2(3)に記載した手続を遵守せず、下記 III2(3)④に記載する株主意思確認総会を開催する以前において大規模買付行為等を実行しようとする場合にのみ、独立委員会による勧告を最大限尊重して発動されます。また、本対応方針の導入につきましては、上記取締役会において、監査等委員である独立社外取締役 4 名を含む当社取締役全員の賛成によって決議されております

これを読んで気になったのは、有事導入型の場合には、後日、株主総会を開催して株主の賛同を得ることを導入の条件にする、逆に言うと株主総会過半数の賛同が得られない場合には取締役会決議は遡及的に効力を失わせるというスキームが最近の東京機械製作所、富士興産等の判例から1つのプラクティスになっているはずですが(私の記憶の限り・・)、このジャフコのケースではプレスリリースをざっと読んだ限りでは、導入において株主総会の開催は予定されていないようにも思われます。

つまり、上記のプレスの「(b)大規模買付者が下記 III2(3)に記載した手続を遵守せず、下記 III2(3)④に記載する株主意思確認総会を開催する以前において大規模買付行為等を実行しようとする場合にのみ、独立委員会による勧告を最大限尊重して発動」の箇所ですが、この場合には、買収防衛策について一切、株主の意思を問うことなく導入・発動となるように読めます。記憶が少し曖昧なのですが、1年以上前のシティ社と日本アジアグループとの攻防では、日本アジアが株主総会を開催しないまま取締役会決議で導入・発動したため裁判で負けたと記憶していますが、今回のスキームはどのように考えればよいのでしょうか? 

この手の案件は、中小の法律事務所がアドバイザーになることは考えられず、恐らく大手の法律事務所がアドバイザーになった上でのスキームと想像しますので、この1~2年の判例を十分に踏まえた上での今回のスキームとは思います。

今後、仕事で機関投資家と対話をする中で、買収防衛策の会話も出るはずですので、今週後半から旬刊商事法務の買収防衛策関連の記事を読み込む予定ですが、商事法務の記事を整理しつつ、過去の買収防衛策の事例と今回の事例の分析などもして行きたいと思います。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第11回) ー 中期経営計画が未達の場合に株主は何が言えるか?

今回からコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます)の第4章「取締役会の責務等」について個別論点の解説に入りたいと思います。CGコードでは、取締役会の役割として企業戦略等の大きな方向性を示すことが求められています。

では、この具体的内容は何かといいますと、1つには中期経営計画があります。中期経営計画については多くの上場企業が策定しており、この先3年程度の業績の見通しですね。日本企業の場合、業績の見通しとして売上高、営業利益の具体的数値を開示しているケースが多いです。ファンダメンタル投資をされている個人投資家の方であれば見たことも多いかと多います。ここで問題が1つあります。

それは具体的数値を掲げるのは良いのですが、中期経営計画の数値が達成できずに未達に終わる場合が結構多いという点です。つまり、3年後の実績値が当初の見通しの数値を達成できずに終わる場合です。結構多いですよね。このような場合についてCGコードでは、補充原則4-1②に次の規定があります。

4-1② 取締役会・経営陣幹部は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである。仮に、中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以の計画に反映させるべきである。

ポイントは太字の箇所です。会社は、中期経営計画が未達に終わった場合、株主にその理由を説明する必要があるのです。本来、当然と言えば当然ですよね。だって投資家は、中期経営計画に基づく企業業績に期待をして、現在の株価が割安と判断して株式投資をしているわけですので、それが未達となると投資の前提が大きく崩れることになり、つまり会社に裏切られたことになります。

しかも、個人投資家の場合には、機関投資家のように経営トップとの対話やIR取材の機会もなく、中期経営計画の進捗を確かめる場がないのです。機関投資家であれば、「この会社の中期経営計画は未達になりそうなだな」ということが企業との会話で判断できますが、個人投資家にはこのような機会や情報はほぼゼロです。であればこそ、未達の場合には企業は株主に対して、詫びるとともに未達の理由を説明する必要が本来あるのです。株式を買ってくれた株主に対するマナーとも言えます。

このように、CGコードでは、株主への説明が企業には求められているわけですので、株主としては、投資先企業の中計経営計画の数値が未達に終わった場合、その理由を投資先企業に質問してみてはいかがでしょうか。

欧米においては、数値が未達の場合には投資家からの訴訟リスクがあります。このため欧米企業は明確な業績予想値は示さず、「売上高XX%の成長」等のガイダンスを開示するケースが多いです。この点、日本企業は、訴訟リスクがないためか数値未達に対する責任の意識が乏しいですね。

「CGコードの補充原則4-1①に基づき説明してください」というと、企業の担当者はきょとんとする可能性大ですが(CGコードなど読んだこともないIR担当者はかなり多いので)、株主の正当な正当な権利行使ですので、個人投資家の方は上記の補充原則の規定を武器に企業に是非質問をしてみて下さい。それにより、企業が次の中期経営計画を策定する時の意識も大きく変わると思います。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第10回) ー 取締役会関係は株主にとって「材料の宝庫」です

先日、三ツ星の有事導入型の買収防衛策に基づく対抗措置の差し止めが最高裁でも認められましたね、つまり投資ファンド側が勝訴したということです。事前警告型の買収防衛策を廃止して有事導入型を検討する企業は、有事導入型がどういう場合に使えるのか、つまり裁判になった時に負けないためのスキームに十分に整理しておく必要があると思います。

さて、今回からコーポレートガバナンス・コードの「第4章 取締役会等の責務」について、複数回にわたりポイントを説明します。個人投資家がアクティビストである投資ファンドと同じようにコーポレートガバナンス・コードを自分の武器にして、投資先企業の中長期の企業価値向上に向けた提案をするための視点です。まずは、第4章の出発点であるコーポレートガバナンス・コードの基本原則4について確認します。

【基本原則4】 上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、 (1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと (2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと (3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことをはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。 

この基本原則4から始まる第4章は結構大事ですね。大事というのは、個人投資家にとって投資先企業の中長期での企業価値向上を求めていく上での材料の宝庫ということです。

投資先企業の取締役会が企業価値向上に向けての十分な仕組みを備えていない、または仕組みはあるが運営が十分に出来ていないとして、色々な指摘や提案が出来るネタが沢山あるということです。会社側としては十分な理論武装をしておかないと「ヤバい」ということになります。

取締役会はコーポレートガバナンス・コードの肝の1つでありますが、その理由は何でしょうか? コーポレートガバナンス・コードが制定された背景、趣旨から考える必要があります。文章で書くと長くなるので、以下、箇条書きで紹介します。

  • 日本企業の生産性は低く、これが日本経済全体の足を引っ張っている
  • 日本企業の「稼ぐ力」、つまり中長期的な収益性・生産性を高めて、果実を広く国民にいきわたらせる必要がある
  • そのためには経営者のマインドの変革、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みの強化が重要
  • 内部留保を貯め込むのではなく、新規の設備投資、大胆な事業再編、M&Aを積極的に活用すべき
  • このようにして企業の「稼ぐ力」の向上を進めるには、社外取締役の積極的な活用を経営戦略の進化に結び付け、取締役会が実効的に機能する必要がある

上記内容は、2014年の日本再興戦略の記述の一部を私の方で少し表現を変えましたが、平たく言えば、社外取締役を取締役会に招聘して、多様性を持った取締役会で戦略を立案し、その下でCEOがリスクテイクをし、それが適切になされているかをモニタリング(監督)するのが取締役会のあるべき姿であり、こうすることで中長期的な企業価値を向上させるといったところかと思います。まずはここをしっかり理解する必要があります。

取締役会の役割・機能はコーポレートガバナンスの肝であり、第4章では色々なことが原則、補充原則で規定されています。まずはこれを念頭に置いて、どういう材料がこの第4章でちりばめられているのか、個人投資家はどういう視点で投資先企業のコーポレートガバナンスを見ればよいのか、次回からじっくり見ていきたいと思います。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第9回) ー 非財務情報とは何?

石野雄一氏の「道具としてのファイナンス」をご存じの方は多いかと多います。2005年に出版されたコーポレートファイナンスの実務の基礎について書かれた本ですが、この度、増補改訂版が出るようですね。発売が8月8日のようです。早速、昨夜、アマゾンで注文をしました。本が届くのは8月10日頃の予定ですので今から楽しみです。

さて、中長期の株式投資において非財務情報が重要になることを前回の第8回で書きましたが、では非財務情報の具体的内容は何でしょうか?

少し前に仕事上の知り合いなどと話をしたところ、どうも良く理解できていない方も多くおり、「非財務情報=E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の情報」という意見が意外に多かったです。「ではGとは何?」という質問をすると「会社の機関設計でしょう」と言う人もかなり多く、良く分かっていない人が結構多いのだなという印象を持っています。

では、非財務情報は何であるかというと、先日記事に書いたように、投資家が中長期で投資をするための判断材料となる情報です。ということを考えると、具体的には、次のような情報が非財務情報になるかと考えます。

  • 経営理念
  • 経営理念を踏まえて企業価値をいかに増大させるか
  • 自社を取り巻く経営環境
  • 経営環境の将来見通し
  • 経営環境の将来変化に対する企業価値増大の経営戦略
  • これを実現するための社内体制

環境や社会に関する情報も経営環境に関する情報ではあります。環境対応が不適切であれば取引を失注するリスクもあるし、従業員はじめステークホルダーとの関係が悪い場合には企業経営にマイナスとなる影響もあります。けど、これが全てではないはずです。というか、EやSへの対応は全体に占める比率は小さいと言えます。あくまで、現在から将来にわって企業が稼ぐためのベースになる情報が非財務情報ということの理解が大事です。

コーポレートガバナンス・コードでは非財務情報について、「基本原則3」で次のとおり規定されています。

上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

こういった非財務情報が開示される媒体は、中期経営計画であったり、統合報告書であることが多いかと思いますが、物言う株主としては、投資先企業の開示が不十分な場合には、開示を求めることが出来るというわけです。そして、開示情報が多ければ、今度は、それを契機に投資先企業に対する更なる質問へと発展させることができます。いずれにせよ非財務情報に関する開示が不十分な企業は狙い目ですね。

開示な不十分な企業に対して株主として適切な提案をすると、それに賛同する機関投資家も出てきます。