コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

インフロニア・ホールディングスの東洋建設へのTOBが不成立

5月も後半になり上場企業各社の定時株主総会の準備もかなり慌しくなっているかと思います。上場企業各社は、招集通知の発送段階に入り、株主総会リハーサルに向けて総会QAの準備が山場になってくるところが多いと思います。

私は、社会人になって最初に勤務した化学素材メーカーでは、最初に法務部に配属され、商事法務チームでしたので株主総会実務を1年目から4年ほどやりました。学生時代に会社法は予備校まで通い真剣に勉強していたので相当に自身があったのですが、実務ではなかなか通用せず、最初の2年間は3月下旬~6月下旬まで、ほぼ毎日終電近くまで働き、10歳年上の課長と2人で土曜日を含め仕事をしていました。土曜日の昼前から招集通知の読み合わせを開始して、食事でランチビールを飲み過ぎて、若干酔いながら午後読み合わせを継続した懐かしい記憶が毎年この時期になると思い出します。

さて、余談が長くなりましたが、インフロニア・ホールディングスが東洋建設にTOBをしていましたが、不成立に終わったようです。

https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/05/20220520.pdf

1株770円でのTOBですが、東洋建設の昨日の株価の終値は930円ですので成立しないのは当然かとは思います。TOBは不成立ですが、今後、提携は模索していくようですね。上記プレスリリースに次の記述があります。

公開買付者は、当社を完全子会社化する検討を一旦中止し、他方で当社との間の従来の資本業務提携関係を継続しつつ、様々な選択肢を視野に入れながら公開買付者グループの企業価値向上を目指していくとこのことです。当社は、公開買付者のこのような意向等も踏まえて、公開買付者の完全子会社として公開買付者グループに参画することに関する検討を中止しました。また、当社は、当社の 2022 年 5 月 19 日付けプレスリリースでお知らせ致しましたとおり、YFO の日本国内の事業会社である合同会社 Vpg 及び株式会社 KITEから受領した書簡に記載された提案の内容を精査中ですが、現時点では、土木・建築事業での協働の取組みを含む公開買付者グループとの間の従来の資本業務提携関係を維持するとともに、今後も、当社が2020年 3 月25日に公表した①人財への投資、②生産体制の維持、③付加価値生産性の向上、④海外建設市場における収益力の強化、及び⑤社会課題の解決による成長を基本戦略とする中期経営計画“Being a resilient company”の実現に引き続き取り組み、様々な選択肢を検討しながら、当社グループの企業価値の向上を目指してまいります

任天堂創業家によるTOBに対して、東洋建設、インフロニアは今後どう対応していくのか注視して行きたいと思います。

任天堂創業家一族が東洋建設にTOBの正式提案

本日は日経平均株価が前日比で508円安でした。必ずしも日経平均と連動しているわけではないのですが、私の保有する某銘柄が、通期決算が嫌気され、連日株価を大きく下げています。これをチャンスを見て明日は日中に買い増しを進めようかと思案中です。明日は株価を常に気にしながら仕事をする一日になりそうです。

さて、任天堂創業家一族である山内家を背景に持つファミリーオフィス、Yamauchi-No.10 Family Officeの東洋建設に対するTOBに関してこれまでに何回か記事を書きましたが(最後に再掲しています)、今回、東洋建設に対する正式なTOBの開始を決定したようですね。

東洋建設株式会社(証券コード:1890)の株券等に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ|Yamauchi-No.10 Family Officeのプレスリリース

東洋建設に対して「経営方針・企業価値向上策(案)」も提示しているようですね。

東洋建設への長期的な企業価値向上に向けた対話状況について(5月18日)|Yamauchi-No.10 Family Officeのプレスリリース

まだ全く読めていないので、週末に時間を作り読んでみたいと思います。今週までは3月期の通期決算の分析等が仕事の中心でしたが、それも本日で終わり、明日は株価を気にしながら雑務をこなし、来週からは最近の買収防衛策の事例整理・分析に集中する予定ですが、その際にこの東洋建設へのTOBのケースもあらためて整理する予定です。

  

金融庁フォローアップ会議が再開 ー 内部留保の有効活用などが焦点。物言う株主、アクティビストにとって好材料

昨年の6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されました。コードレートガバナンス・コードは、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、金融庁フォローアップ会議)で議論されて改訂されたわけですが、昨年3月31日に開催されて以来、久しぶりに再開されました。議事資料等は次のとおり掲載されています。

「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第27回)議事次第:金融庁

本日の議題は、コーポレートガバナンス・コード再改訂(2021年)後の中間点検として、「持続的な成長に向けた課題」と「企業と投資家との対話に係る課題」が議論された模様です。事務局資料によれば、「持続的な成長に向けた課題」としては、「積み上がり続ける日本企業の内部留保(特に現預金)の有効活用に向け、下記の点をどう考えるか」として次のような内容が記載されています。

  • 中長期的な企業価値の向上に向けた経営資源の適切な配分(設備投資、研究開発・知財投資、人的投資等)。その際の成長投資と、資本コストを踏まえた株主還元のバランス
  • コロナ禍、資源高、ウクライナ情勢等、不確実性の高い状況における現預金保有の方針
  • 企業が上記の課題に取り組む際の取締役会や株主、両者の対話の役割、及び企業の説明責任のあり方

内部留保が現預金として積み上がる結果などが大きな課題とされているようですね。特に2021年度は、過去最高益の企業が多いので、株主還元を強化せよという流れに向かうのかも知れません。まだ資料の全部は読めていませんが、今後、ブログでもフォローアップ会議の動向は注視して、記事を書いていきます。

今回の事務局資料を見た限りでは、今後のフォローアップ会議の議論は、物言う株主、アクティビストにとっての好材料になるので、全ての投資家と企業経営陣はしっかりと見ていく必要があると思います。

電源開発への株主提案 ー 一般の機関投資家の株主提案が将来は増えるかも

今週はずっと忙しい1週間で週1回の在宅勤務も出来ず、アウトプットに追われていました。最近、勤務先でもかなり出社人数が増え活気があり、コミュニケーションを取るにはとても良いのですが、一方、資料や業務関連書籍を読んでインプットに時間をかけるには静かな在宅が必須かなとあらためて思っています。コロナ禍のこの2年間はオフィスにほとんど人がいなかったので、オフィスの方が静かで集中できたのですが、今は逆です。来週は資料を大量に集中して精読する時間が必要なので2日ほど在宅をしようかと思案中です。

さて、前置きが長くなりましたが、今週は環境関連の株主提案で日経新聞の1面に欧州最大の資産運用会社の仏アムンディ等が電源開発に脱炭素の株主提案をしたとの次の記事が掲載されていました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB108EO0Q2A510C2000000/

電源開発は株主提案の受領を次のとおり公表しています。

https://www.jpower.co.jp/news_release/pdf/news220513.pdf

アムンディ等の提案内容は、定款に次のような内容を盛り込むことを求めるもののようです。

  • 長期的な企業価値を高めるため、気候変動にかかるリスク及び機会を踏まえ、また2050年までにカーボンニュートラルを達成するとの電源開発の宣言に従い、パリ協定に沿った温暖化ガス排出量削減にかかる科学的根拠に基づく、短期的及び中期的目標を明記した事業計画を策定し公表すること
  • 年次報告書において、電源開発の設備投資が電源開発の温暖化ガス排出量削減目標との整合性についての評価の詳細を開示すること
  • 年次報告書において、電源開発の報酬方針が温暖化ガス排出量削減目標の達成をどのように促進するものであるかの詳細を開示すること

新聞でも報道のとおりですが、定款変更は株主総会の特別決議ですので、この株主提案が可決される可能性は極めて低い(とうかゼロ)とは思います。それよりも本件で一番の驚きは、アムンディが株主提案をしたことです。アムンディはフランスでESG投資に力を入れている機関投資家で、日本にもアムンディジャパンがあります。アクティビストではありません。

アクティビストなどの株主提案に機関投資家が賛同するケースも少しずつ増えている事実はありますが、アムンディのような一般の機関投資家が自ら企業に株主提案をすることはこれまで耳にしたことはありません。今回のアムンディの株主提案を契機に一気に株主提案が増えるとは思いませんが、多分、株主提案へのハードルはかなり低くなったと思います。アセットマネジャーである機関投資家に資金の運用を委託しているアセットオーナーから、今回の電源開発の件をきっかけに機関投資家に対して株主提案を後押しする動きが出てくるかも知れませんね。

しかし、最近のニュースを見ると株主提案が昨年より確実に増えていますね。私の場合、M&A関連のニュースが毎日配信される設定にしているのですが、毎日、数件の株主提案のニュースがあります。昨年より格段に増えています。

上場企業はアクティビスト・物言う株主のリスクをきちんと把握して対策する必要があります。また、個人投資家を含め物言う株主コーポレートガバナンス・コードをしっかりと読み込み、投資先銘柄に色々と株主提案が出来る絶好のチャンスということになります。「物言う株主の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方」の連載記事を本日か明日にブログに掲載したいと思います。

住友不動産が買収防衛策を継続更新

本日は仕事で夕方から10社ほどの決算短信と決算説明会資料を短時間で読み込みましたが疲れました。自動車メーカー、半導体メーカー、工作機械メーカーが主でしたが、原材料価格の高騰が今後のリスク要因と多くのの企業が記載していますね。当然と言えば当然ですが。

本年、買収防衛策の継続更新時期を迎える企業の中で関心の高い企業の1つに住友不動産がありますが、本日、買収防衛策の継続更新を公表しました。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120220512542281.pdf

住友不動産は前回の2019年の更新の際の株主総会での買収防衛策議案の賛成率はたしか55%程度でしたが、今回も更新するのですね。社外取締役過半数いませんので、機関投資家の賛同を得るのは困難かと思うのですが、安定株主の賛成から株主総会過半数の賛同が得られるという予定なのでしょう。

前回同様に賛成率は高くないと予想されますが、賛成率が仮に60%を下回っても事前警告型の買収防衛策を継続したいというのも並々ならぬ強い意思かと思います。プレスリリースの買収防衛策の導入理由にも熱い思いが記載されています。不動産は、恐らく外資規制のコア業種ではないのだと思いますので、外資敵対的買収について政府が守ってくれるわけではないので、自ら守るということかも知れません。

買収防衛策の議論は悩みますね。今回の住友不動産のように敵対的買収者の出現していない段階で導入すること、つまり事前警告型に対する機関投資家や生保の批判はかなり強いですが、一方、敵対的買収者が出現した段階で後出しジャンケンで有事導入というのもどうかとは思いますし。悩ましいところです。そろそろ経済産業省金融庁あたりで買収防衛策の在り方の議論を開始して欲しいところです。

自社株買いが株価上昇となることの初歩的な考え方

今週は仕事が多忙でブログの更新に十分な時間をかけることができないのですが、先日、社内で自社株買いの知識の雑談をした時に意外に理解していない方が多いことに気付きました(私の勤務先は金融ではなく、一般事業会社ですので、IR部門以外の方は悲しくらいに株式関連の知識がないので(50代半ばのある部長クラスの社員と話しをしても「機関投資家って何?」というほどの証券のど素人も多く)、自社株買いの知識がゼロなのも仕方ないところではありますが。

自社株買いは一時的であるにせよ株価が上がると一般的には言われています。私の保有銘柄で少し前に自社株買いを発表したところもあり、本日は雑談的な話になりますが、自社株買いで株価が上がることの初歩的な知識について触れてみたいと思います。

まず1つ目は、EPS(1株当たり当期純利益)の向上に伴う株価の上昇です。自社株買いをすると市場で流通する発行済株式数が減少します。とすると、EPS(=当期純利益÷発行済株式数)が増加します。EPSを使った指標にはPER(株価収益率)があるかと思います。「PER=株価÷EPS」ですね。EPSが増加した後でもPERを一定とした場合、分子である株価が上昇することになるというわけです。

2つ目は、ROEの改善です。自社株が増えるということは株主資本にはマイナス要因になります。とすると「ROE=当期純利益÷株主資本」ですので、分母の株主資本が減るのでROEが向上しますよね。ROEが向上することは株価にプラス材料と言われています。

3つ目に市場で買いオーダーが積み上がるので、買い需要が生まれて株の需給が改善されるということです。

4つ目にシグナリング効果です。自社の内情を社外者よりはるかに詳しい経営陣が自社株買いをすることは、自社の株価が安いと思っていることの証拠ということです。このため割安であるなら株を買おうという人が出て株価が上がるということです。

自社株買いを公表しても、一時的に株価が上がることで終わることも多く、中長期投資では継続的に株価上昇に寄与するというものではないと思います。やはり、株価は業績に収斂されるのが基本かとは思います。ということで自社株買いの実務に精通している方にはあまりに初歩的な知識かも知れませんが、紹介いたしました。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第5回)ー 政策保有株式に対する議決権行使は適切か?

前回(第4回)では、政策保有株式の保有の合理性について物言う株主(アクティビスト)として企業との攻防の際の考え方を説明しました。第4回の記事は最後に再掲しています。

今回は、政策保有株式について物言う株主が指摘する視点として、「①政策保有株式を縮減せよ」「②保有する場合には保有に合理性あることを開示せよ」「③保有する場合、議決権行使基準を策定して、その基準に即した適切な議決権行使をせよ」の3つのうち、3つ目の議決権行使について解説をしたいと思います。

まずコーポレートガバナンス・コードの規定を再度確認します。物言う株主にとっての武器がコードの規定ですので、ここをしっかり認識することが何より大事です。

【原則1-4.政策保有株式】 (途中省略)上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。 

政策保有株式の株主総会の議案について議決権行使をする際には、議決権行使基準を予め策定し、開示した上で、行使基準に即した権利行使、つまり議案への賛成又は反対の行使をせよということを上記のコードはいっています。

ポイントは、議決権行使基準の策定と開示です。政策保有株式の問題の1つは、少数株主の意思が経営に反映されないことにあります。分かりやすくいうと、ある企業の業績が低迷している場合、経営トップは交代して欲しいと思うのが投資家の合理的な意思ですが、政策保有株主が会社提案議案に対しては常に賛成というスタンスでいると少数株主の利益が阻害されることになります。それが問題とされてます。そこで、公正な議決権行使基準を策定せよといっているわけです。

では、どういう議決権行使基準の策定が必要になるのでしょうか?

ここで参考にすべき視点は、機関投資家の議決権行使基準です。各社とも公表しているので一度見て頂きたいのですが、結構細かいです。ROEが過去3年間5%を下回る場合には経営トップに反対する、不祥事のあった企業の経営トップには反対するなどの厳しい議決権行使基準を定めています。政策保有株主は機関投資家ではありませんが、株主の投資したお金を事業の成長に投資するのではなく、株式に投資しているのですから、機関投資家と同じような立場ともいえます。そこで、これに準じた厳しい議決権行使を策定することが本来求められます。

では、多くの事業会社はこの議決権行使基準を制定しているのでしょうか? 答えはNOです。理由は簡単です。投資先企業の株主総会議案に賛成することが当然のことと考えているからです。そりゃそうですよね。政策保有株主=安定株主=会社議案には必ず賛成をする株主という構図が、30年、40年と続いてきたわけですから、反対の議決権行使をするなどというのは企業にとってはこれまで考えられないことでした。だから、コーポレートガバナンス・コードが2018年に改訂されても議決権行使基準を真面目に考える企業は少ないのです。

けど、時代が変わりました。また政策保有株主も自社の株主に対する説明責任もあります。投資先企業の業績が数期にわたって低迷している、今後の挽回策が明確でない、低ROEが継続している、不祥事があったような企業の株式を保有する政策保有株主に対しては、会社提案に反対しなければならない場合も出てくるのです。そこで、物言う株主として、次の4点を投資先企業に質問・追及をするとよいかと思います。

  1. 議決権行使基準を策定しているか
  2. 行使基準の具体的内容を教えて欲しい。特に投資先企業の経営トップの反対基準、株主提案があった場合の株主提案議案への賛成基準はどうなっているか
  3. 議決権行使基準に従い投資先企業に対する議決権行使実績は
  4. 議決権行使の判断に当たってはどのような社内手続きを経ているか

つまり投資先企業に遠慮して、少数株主の利益に反するような不適切な議決権行使はしていませんよねということを企業にちくちく追求するのです。なお、4について補足すると、担当者、つまり経理部長や財務部長クラスあたりの一般社員が単独で判断しているのはマズイです。少なくとも、財務担当取締役が判断に関与していることが必要だと思いますし、更に言えば、やはり議決権行使という企業の意思決定への関与ですので、財務担当取締役も参加する会議体で会社毎にかつ議案毎に議決権行使の意思決定をするということが重要になると思います。上記4つが、物言う株主として投資先企業との攻防の際の視点になります。

インフロニアによる東洋建設へのTOB ー インフロアがTOB期間を延長

昨日から今週1週間は仕事が休みです。先週までに購入した「関西スーパー争奪 ー ドキュメント混迷の200日」「人新世の『資本論』」「転んでもただでは起きるな 定本・安藤百福」の3冊をまずは読む予定です。子供たちが部活で毎日外に出ているので残念なことに家族旅行も出来ないので、読書、四季報オンラインでの決算情報整理、投資銘柄の関連情報収集に集中してこの休みは取り組む予定です。

さて、GWのため大きなニュースもないのですが、昨日、インフロアがTOB期間を延長することを決定したようです。

https://www.infroneer.com/topics/blog_assets/attachments/45/20220502.pdf

色々と細かいことが沢山書いてあり、プレスリリース全文は読めていませんが、期間を5月19日まで延長するようです。

そういえば、話は変わりますがアクティビストであるストラテジックキャピタルの動きが最近激しいですね。今年の株主総会は株主提案件数が大きく増えるかも知れません。今、読んでいる「関西スーパー争奪 ー ドキュメント混迷の200日」でも関西スーパーの政策保有株主であった伊藤忠食品関西スーパーに対する質問状を公開するなどしており、安定株主と言う言葉が意味をなさなくなりつつあります(東京機械のようなケースもあることにはあるのですが)。10年前であれば株主提案などする株主は、「頭のおかしい株主」と見られていましたが、大きく時代が変わりましたね。とても良いことと思います。次回は、「物言う株主視点のコーポレートガバナンスコードの読み方」について書く予定です。

インフロニアによる東洋建設へのTOB ー 応募は株主の判断に委ねるようです。東洋建設の次の手は?

本日は半導体製造措置メーカー、工作機械メーカーなどの通期決算短信と決算説明会資料を20社ほど分析・整理していました(仕事です)。2021年度は過去最高の売上高・利益という企業も多く、2022年度予想も今のところ各社好調ですね。

さて、東洋建設に対するインフロニアによるTOBに対して、任天堂創業家が対抗TOBをしているところですが(前回の記事は最後に再掲しております)、本日、東洋建設が次のとおりプレスリリースを公表しています。

https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/20220428.pdf

1ページから2ページにかけて、「本公開買付けにおける買付価格(770円)が本公開買付け開始後の市場株価を下回っていることから、本公開買付けが成立すると公開買付者が見込める程度の価格に引き上げることの検討を公開買付者に要請したところ、公開買付者から買付価格(770円)の変更はできないとの回答があった」との記載があります。

こういったことを踏まえて、「当社の株主の皆様に対して本公開買付に応募することを推奨する旨の意見を撤回し、当社の株主の皆様が本公開買付けに応募することを推奨することの是非については中立の立場をとった上で、最終的に株主の皆様のご判断に委ねるのが相当であると判断し、本公開買付けに賛同する旨の意見は維持するものの、当社の株主の皆様が本公開買付けに応募するか否かについては、株主の皆様のご判断に委ねる」とのことです。

インフロニアは任天堂創業家TOB価格1,000円を超える価格を出してまで東洋建設を買う価値はないと判断したのでしょうか? 

もしそうだとすると、東洋建設の株主は高い価格を提示する方のTOBに応募するのだと思うので、東洋建設が自力で自社を守るには、有事導入型の買収防衛策をするか、何らかの方法で任天堂創業家に退場頂くか、またはホワイトナイトを探すかなどの方策が考えられますが、東洋建設は今後どうするでしょうか?

エーザイが買収防衛策を廃止 ー プレスリリースの内容に注目です

明日は週1回のテレワークの日です。この1~2ヵ月で東京都内の通勤者はかなり増えました。1、2年前は山手線で品川駅で降りても、元旦のようにガラガラだったのですが。山手線はじめ都内の電車が混雑するのは、経済活動が回復に向かうとても良いことなのですが、コロナで人が外にほとんどいなかった東京の日常にも少し懐かしさを感じたります。

さて、前置きが少し長くなりましたが、エーザイが事前警告型の買収防衛策を廃止することを本日プレスリリースを公表しました。

当社企業価値・株主共同の利益の確保に関する対応方針(買収防衛策)の非継続(廃止)について | ニュースリリース:2022年 | エーザイ株式会社

エーザイは取締役会決議で導入・継続更新するタイプの買収防衛策でしたが、これが機関投資家の批判が高く、エーザイの経営トップの株主総会での選任議案の賛成率はいつも60%台でしたが、廃止により、今後は賛成率が高まるでしょう。エーザイのプレスリリースで注目すべき点があります。次が廃止理由の箇所の抜粋になります。

現時点においても、当社のビジネス環境や業界動向より、当社の企業価値・株主共同の利益を毀損する恐れのある買収リスクが低下したとは認められず、当社の主要なステークホルダーズの共同の利益や長期的な価値を増大させるという当社の企業理念に基づき、リスクに対する十分な備えを取締役会として行うことは引き続き必要であると考えております。他方で、近時の裁判例を踏まえると、本対応方針のような施策をあらかじめ講じておく必要性は低下しています。したがって、実際に当社の企業価値・株主共同の利益を毀損する恐れのある買収者や買付者が現れた場合に、ステークホルダーズと対話をしながら、関連する法令の許容する範囲内において、当社の企業価値・株主共同の利益を確保するために、その時点において採用可能な適切と考えられるあらゆる施策(いわゆる買収防衛策を含む)を講じることが妥当であると考えております。以上を踏まえると、本対応方針を継続せず、その有効期間が満了する2022 年6月30日をもって廃止することが相当であると判断しました。なお、取締役会は、当社のビジネス環境や業界動向並びに当社の企業価値・株主共同の利益を毀損する買収者や買付者が現れた場合に、当該買収または買付についての情報収集・検討等を行う期間の確保や、買収者や買付者との交渉を通じてステークホルダーズに有利な条件を引き出すための施策に関する裁判例の動向等を注視していきます。

太字は私が付けた箇所ですが、要するに、事前警告型は必ずしも必要ではなく、敵対的買収者が出現した時に有事導入型で対抗するということを言っています。このプレスリリースは結構影響があると思います。

エーザイが廃止をした本音は何とも言えませんが、経営トップへの賛成率がいよいよヤバいと感じたのかも知れませんし(株主構成で機関投資家が増えたといった場合)、そういう危機感の中で、有事導入型の法的安定性がこの1年でかなり高まったと判断したのかも知れません。

いずれにせよ事前警告型の買収防衛策について、今後廃止を求める機関投資家の声は益々強くなるような気がします。今年の定時株主総会では、株主から事前警告型の廃止を求める質問が増えるかも知れませんね。

ナガホリ(8139)が株式買い集め行為に対して買収防衛策を導入 ー 有事導入型の買収防衛策

宝飾品の製造卸大手のナガホリ(8139)がリ・ジェネレーションという会社による株式買い集めに対して、買収防衛策を導入することを決定したようです。

http://www.nagahori.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/62_taiouhoushin.pdf

有事導入型の買収防衛策であり、プレスリリースの4ページにも「本対応方針は、既に開始されている本株式買集めを踏まえ、大規模買付行為等への対応を主たる目的として導入されるものであり、平時に導入されるいわゆる買収防衛策とは異なるものです」との記載があります。平時導入型は株主の賛同を得るのが昨今難しいのですが、それとは異なりますということを強調したいのかも知れません。

また、取締役会決議で導入するものの6月の株主総会に諮るようですね。プレスリリースの4ページの次の記載があります(太字は私が強調のため印をつけました)。

本対応方針は、本取締役会の決議により導入するものですが、株主の皆様のご意思をより反映させるという観点から、2022 年6月29日に開催予定の当社第61回定時株主総会(以下「本定時株主総会」といいます。)において議案としてお諮りさせていただくことを予定しております。なお、本対応方針の導入につきましては、本取締役会において、独立社外取締役 1 名を含む当社取締役全員の賛成によって承認されており、独立社外監査役 3名から成る当社監査役全員も、本対応方針の具体的運用が適正に行われることを条件に、本対応方針に同意しております。また、本対応方針は、本日付けで効力を生じるものとしますが、本定時株主総会において上記議案につ
き、株主の皆様のご承認が得られなかった場合には、直ちに廃止されるものとします。 

最近の判例を踏まえ、有事導入型の買収防衛策は後日に株主総会に諮り賛同を得るというのが買収防衛策実務の定石になってきています。ナガホリの有報で株主構成は見ていませんが、株主総会過半数の賛同は得られるでしょうか。

こういうケースを見るたびに平時から株主や投資家とのエンゲージメントを充実させ、自社の理解を深める取り組み、つまり仮に今は業績が悪くても将来の事業方向性を経営トップが自分の言葉で機関投資家と時間をかけて対話を行うとことがとても重要になってくるなとつくづく思います。日頃の関係構築が何より重要になるということです。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第4回)ー 政策保有株式の保有の合理性の検証はしているか?

前回、政策保有株式について物言う株主が指摘する視点として、「政策保有株式を縮減せよ」「保有する場合には保有の合理性あることを開示せよ」「保有に合理性ある場合でも、議決権行使基準を策定して、その基準に即した適切な議決権行使をせよ」の3つがあることをあげました。

1点目について、純資産の20%を超える政策保有株式を有する企業は、物言う株主にとって攻めやすい企業ということを書きました。前回の記事は最後に再掲しています。今回は、この続きで2点目の「政策保有株式を保有する場合には保有の合理性あることを開示せよ」について説明します。

コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式は縮減することが基本方針であり、保有する場合には、次のとおり保有の合理性を検証して開示せよとコードに規定されています。

上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方 など、 政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに 、そうした検証の内容について開示すべきである。

この中でのポイントは太字の箇所です。「保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査」が肝です。

具体的な検証の方法は企業に委ねられていますが、基本的には投資先企業の株主資本コスト(=期待するリターン)とROEの数値比較が1つの考え方になるのだと思います。つまり、投資先企業への株式投資で期待されるリターンと実際の対象企業のROE実績を比較して、過去数年間において、ROEが株主資本コストを下回るようであれば、基本的には保有の合理性はない方向に向かいます。それでも企業が政策保有株式を保有する場合には、保有のメリット、つまり投資による財務数値上のリターンはないものの株式を保有する意義を具体的に開示する必要があります

しかし、多くの企業では保有の具体的なメリットは開示されていません。取引上のメリットがある等の開示にとどまり、どうメリットがあるのかの肝心の部分が全く不明です。こういう開示の企業がほとんどです。

では、何故そのような状況になっているのでしょうか?それは、2018年にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、政策保有株式に関する原則が改訂された際に多くの上場企業が「どう開示しようか?」「他社さんはどのような開示をするのだろうか?」ということで悩む中、いくつかの企業が抽象的な記載の開示をしたことから、各社横並びで「これに倣おう!」ということで似たような開示文案になったのです。

いずれにせよ、このような開示は物言う株主にはつっこみどころ満載の開示です。物言う株主としては、「保有の合理性は何であるのか?」「合理性について取締役会でどう検討したのか?」を指摘することができます。取締役会で検証したということであれば、社外取締役も熟知していてしかるべきですが、社外取締役で政策保有株式の保有の合理性を正確に理解している方は少ないのではないでしょうか?

任天堂創業家が東洋建設に買収提案 ー インフロニアのTOB価格と大きな開きがありますね

本日の日経新聞にも記事が掲載されていますが、任天堂創業家の資産運用会社が東洋建設に買収提案をしたようですね。東洋建設が次のプレスリリースを公表しています。

https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/20220422.pdf

東洋建設に対しては、インフロニアが友好的TOBをしている最中ですが、そのTOB価格である1株770円よりかなり高い価格の1,000円でのTOB提案のようですね。いわゆる対抗TOBです。任天堂創業家は事業会社ではないと思うので、最近の対抗TOBの事例とは少し異なりますが、最近ではニトリによる島忠の買収、オーケーによる関西スーパーへの買収提案などがあったかと思います。面白くなってきましたね。

基本的に東洋建設の株主は、より高い値段をつけたTOBに応募するのだと思いますし、770円よりはるかに高い価格の1000円であればこちらに応募するのが通常の株主の合理的な判断と言えるように思います。ここで1つ疑問があります。

もし、インフロニアがTOB価格の大幅引き上げ、例えば1,000円を超えるような価格まで今後引き上げた場合には、そもそもインフロニアの770円という安い価格でのTOB価格が妥当と判断した東洋建設の当初の判断は、株主利益保護の観点から適切だったのだろうか?という素朴な疑問があります。インフロニアのTOBのプレスリリース、東洋建設のTOB賛同のプレスリリースを読めていないので、正確なところは読んだ上でないと何とも言えないところはありますし、それを法的にどう考えるかは法律専門家の判断に委ねるところになるのだと思いますが。

最近、対抗TOBや敵対的TOBの件数がかなり増えていますね。事前警告型の買収防衛策の導入、有事の際に導入する有事導入型買収防衛策シミュレーションを上場企業各社はしておく必要があるかと思います。

東芝が「潜在的な投資家及びスポンサーとの協議開始のお知らせ」を公表

昨日、仕事帰りに「関西スーパー争奪 - ドキュメント混迷の200日」(日本経済新聞社)を書店で購入しました。オーケーによる敵対的TOBを巡る争いについて書かれているようで、ツイッターでの評判が良かったので購入しました。週末に読む予定です。

さて、東芝がプレスリリースを公表しましたね。

https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/jp/ir/corporate/news/20220421_1.pdf

海外投資家が東芝を買収する場合には外資規制(東芝はコア業種)の問題があり、また物言う株主からの指摘もあると思いますので、今後も色々と動きがありそうです。こちらも今後ブログで記事を書いていく予定です。

電気興業(6706)に対して投資ファンドのリム・アドバイザーズが株主提案 ー 取締役の解任請求、政策保有株式の売却の提案など

本日の日経新聞ツイッターに対する敵対的買収でのポイズンピルの記事が掲載されていました。米国の買収防衛策は、シャドー型がこれまで一般的でしたが、ここ最近は事前警告型も増えてきたという話を2年ほど前に外資系証券会社の担当者と雑談をしたこともあるのですが、この案件がどうなるのか注視したいと思います。

最近、アクティビストの株主提案の状況を時々見ているのですが、大型通信アンテナの製造・工事を行っている電気興業(6706)に対して投資ファンドのリム・アドバイザーズが次のとおり株主提案をしたようです。

https://www.denkikogyo.co.jp/ir/ir/pdf/2022/20220414_release.pdf

株主提案の内容は、取締役3名の解任、クローバック条項の設定、政策保有株式の売却などです。電気興業は、四季報オンラインを見ると、2021年10月28日にオアシスマネジメントが変更報告書を提出しており約7%の株式を保有しているかと思いますが、リム・アドバイザーズも保有していたのですね。

電気興業については、次のダイヤモンドオンラインの記事もありました。

電気興業の有価証券報告書を見ると同社は、事前警告型の買収防衛策を有しているようですが、今後、買収防衛策の発動を巡る争いに発展するでしょうか。発展すると面白いですね。楽しみにしつつ今後の様子を注視したいと思います。

週末には「物言う株主の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第4回)」を書く予定です。