中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

東証の上場区分 ー プライム市場の上場維持基準

以前に東証の上場区分の見直しに関してプライム市場区分について紹介する旨をお伝えしましたが、それきりになっていましたので、本日はプライム市場区分の要件について書きたいと思います。

プライム市場の上場維持基準は、株式の流動性とガバナンスに分かれています。まず流動性については、次のとおりとなっています。

  • 株主数       800人以上
  • 流通株式数     2万単位以上 (事業年度末の数で算出)
  • 株式時価総額      100億円以上(事業年度末以前3ヵ月の株価平均値で算出
  • 売買代金        1日平均売買代金0.2億円以上

次に、ガバナンス基準としては流通株式比率 35%以上(=事業年度末日における流通株式数÷上場株式数)となりますが、この流通株式の定義が変更されるのが重要です。

現状の流通株式は「上場株式数 ー(10%以上の株主の保有分+役員の保有分+自己株式分)」かと思いますが、上場区分の見直しにおいては、「国内普通銀行(都銀・地銀)」「保険会社及び事業法人」の保有分も流通株式から除外されることになります。

大株主に銀行、生保、政策保有株主(持合い株主)がいる場合、これらの持分は流通株式から除外されるため、これらの保有持分が大きい場合、流通株式比率が小さくなってしまうのです。このため、政策保有株式の売却の動きが現在増えているところです。3月18日の日経新聞でも「政策保有株 売却益5割増」という見出しで記事が書かれていました。

もっとも、プライム市場の上記維持基準は上記のとおりであるものの、当分の間、経過措置が設けられており、東証1部上場企業はプライム市場に移行できます(但し、時価総額10億円以上、流通株式比率5%以上等の最低の基準あり)。

ここが今回の市場区分で非常に緩いところです。当初は株式時価総額250億円以上でないとプライム市場に移行できないという議論もありましたが、株式時価総額250億円以下の小さい企業が猛反対をしたようです。結果、時価総額が100億円程度の小さい企業もプライム市場に移行できるわけです。

市場区分の移行の今後のスケジュールは次のとおりです。 

  • 6月末   : 移行基準日(適合状況の判定)
  • 7月中   : 東証が事業会社に必要な手続・書類を通知
  •  9-12月末 : 企業は東証に市場区分の申請(市場区分の申請に当たっては、市場選択に関する取締役会の決議と決議内容を証する書面(取締役会議事録)の東証への提出が必要が求められます)
  • 1月中   : 新市場区分一覧を東証サイトで公表
  • 4月    : 新市場区分移行日

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえたコーポレートガバナンス報告書の提出期限は12月末になることが予想されていますので、10月~12月の間に市場区分の選択とセットでコーポレートガバナンス報告書の更新をする企業が増えそうです。