中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

今更ではありますが「プライム市場の上場基準」ー流通株式がポイント

最近、いくつかの銘柄について時々ヤフーファイナンス掲示版を見ると、「プライム市場に適合するの?」といった書き込みが多く、個人投資家の多くはプライム市場の基準が理解できていないのだと思います。聞いたところでは、株式時価総額が4000億円ある企業にも「当社はプライム市場に入るのか?」といった拙い質問が個人株主から時々あるようで、個人投資家の方にはもう少し勉強して欲しいところではあります。

ということもあり、上場企業で株式関係の仕事をしている方には百も承知の話ですが、今更ですが、プライム市場の上場基準について簡単に触れたいと思います。分かりやすいのは、東証が開示している次の資料になります。

プライム市場の上場維持基準は、①株主数:800人以上 ②流通株式数:2万単位以上 ③流通株式時価総額:100億円以上 ④売買代金:1日平均0.2億円以上 ⑤流通株式比率:35%以上 ⑥純資産:正であることとなっています。ポイントは流通株式です。発行済株式数の言葉は良く耳にすると思いますが、流通株式の定義が分からない方が結構多いのだと思いますが、流通株式の算定式は次のとおりになります。

流通株式=発行済株式 -(主要株主(10%以上)の所有する株式+役員等の所有株式+自己株式+国内普通銀行・保険会社・事業会社の所有株式+東証が固定的と認める株式)

この中で、今回新設されたのは、「国内普通銀行・保険・事業法人の所有株式」です。大量保有報告書で純投資とされている場合を除き、流通株式から除外されることになりました。政策保有株式の縮減の流れで、「これら政策保有株式は流通株式とは見なさないので縮減を早く進めよ」という金融庁東証のメッセージです。

発行済株式数をベースに株式時価総額を算出すると100億円は超えるが、流通株式をベースに時価総額を算出すると100億円を下回る企業も多いです。となると、プライム市場への上場を希望する企業は、株式時価総額を上げるには、流通株式数を増やすか、株価をあげるかのいずれかを施策を講じることになります。

7月9日に上場企業各社には、東証より各市場への適合が記載されているA4版1枚のレターが東証の窓口担当者宛に送付されてきています。上場企業各社は本年9月から12月末までの間に自社の取締役会でどの市場区分に移行するかを決議し、取締役会議事録を添付して東証に通知することになります。現在の東証1部企業でプライム市場の条件を充足していない場合には、充足する計画を東証に提出すれば、ひとまずプライム市場に入れるので大きな懸念はないですが、基準の充足度合いによっては将来、TOPIXから外れる可能性があり注意が必要です。