1月22日の日経新聞に「政策保有23名銘柄 グンゼが売却」との小さい見出しの記事がありました。グンゼのプレスリリースを見ると昨年6月10日から12月29日の期間に23銘柄の売却を実施したようです。売却の理由については、次のとおり記載されています。
コーポレートガバナンス・コードに基づく政策保有株式の見直しによる資産効率の向上と財務体質の強化をはかるため。なお、2020 年 12 月末時点で、当社は政策保有株式縮減の方針に掲げておりました政策保有株式時価残高の 2018 年3月末対比 30%削減目標を達成しております。
2020年3月末でのグンゼの保有する政策保有株式は36銘柄(上場株式に限定)です。グンゼの有報では政策保有株式の縮減方針について次のように記載されています。
(保有継続可否の判断基準) これらの政策保有株式の保有継続可否および保有株式数の適切性については、保有に伴う便益やリスク、資本コストを勘案した株式保有基準に基づき、毎年、取締役会で個別に検証しております。なお、保有意義の経済的合理性の検証は取引事業部門の加重平均資本コストを基準とした個社別のROIC(税引き後事業利益÷保有株式時価)により実施しております。
(政策保有株式縮減の方針) 株式保有リスクの低減、資本効率向上の観点から、取引先企業との十分な対話を経た上で、政策保有株式時価残高を2021年3月末までに2018年3月末対比30%削減を目標に縮減を進めております。なお、上記記載の保有継続可否の判断基準に基づき、保有の妥当性が認められた銘柄についても、残高縮減の基本方針に即し、市場環境や財務戦略を勘案して売却する可能性があります。
ここまで踏み込んだ縮減方針を開示する企業はかなり少数の企業しかありません。勿論、政策保有株式の縮減を求める機関投資家にとっての好開示例の1つと言える開示かと思います。
政策保有株式は、この3年間変わらず、機関投資家から縮減の要請がとても強い印象を受けます。というか年々この要請は強くなっている印象です。東証の上場区分での流通株式数でも政策保有株式が関係していますし、確実に今後数年以内に政策保有株主という言葉、ひいては安定株主という言葉はなくなるのだと思います。そういう観点からも、有報で政策保有株式の保有目的について「取引関係の維持のため」等と開示している多くの企業(ほとんどの企業はこのレベルの開示)は考え直しが求められるように考えます。
今年の有報での政策保有株式の開示について上場企業各社は、見直しをした方がよいかと思います。勿論、粛々と売却を進めている企業は、「売却しているぞ」という強い事実があるので、開示にこだわる必要はないとは思いますが。