8月6日の日本経済新聞で、政策保有株式の保有の合理性の検証について、2019年3月期の有価証券報告書(有報)で踏み切んだ開示がされている会社例として、川崎汽船と大和証券グループ本社が紹介されていました。
各社の有報を見たので、開示例を紹介します。有証では、政策保有株式について、「保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容」を開示することになっています。
それぞれの会社の開示文の内容を私の方で箇条書きにしました。
<川崎汽船>
- 取締役会において、独立した客観的な立場から少なくとも年1回、政策保有目的の上場株式について、個別にその保有目的や中長期的な経済合理性等を具体的に精査して保有の適否を検証
- 経済済合理性の検証の際には、{配当実績+(期末時価―期初時価)}÷期初時価の利回り数値が10%(当社中期経営計画の目標ROEである10%を比較対象とした)を下回る場合には、売却を検討
- その上で、これらの基準に抵触する銘柄については、毎年取締役会で売却の是非に関する審議を行い、売却する銘柄を決定
- 保有意義の検証においては、定量基準判定としての取引先に関連する収益や受取配当金などのリターンが、基準としている資本コストを上回るかという経済合理性の観点や、定性基準判定としての成長性、取引関係の強化等の保有目的の観点から、当社グループの中長期的な企業価値向上に資するかを確認。その上で、取締役会において、定期的に上場株式である全ての政策保有株式について個別に保有意義の検証を実施
- 当社が保有する上場株式である政策保有株式の銘柄の約7割が保有方針における定量基準の目標値を上回っている。目標値を下回る約3割の銘柄については、今後の取引関係の維持・強化等の定性基準における検証も行い、採算改善を目指しますが、一定期間内に改善されない場合には売却を検討
コーポレートガバナンス報告書での開示と同じように、有報の記載もふわっとした中身のない開示が多くの企業ですが、日本経済新聞の記事では、金融庁関係者のコメントとして「期待外れと言わざるを得ない」との記述がありました。
金融庁は詳細な開示を期待してコーポレートガバナンス・コードやそれも参考にして有報を改正したのであり、それが徒労に終わったということで、相当に不満があるのであろうと想像できます。
先日、ICGNの東京総会が開催されましたが、政策保有株式については、「企業は、持ち合い株式の特定期日までの削減目標を自社のポリシーとともに公表すべき。また、持ち合い株式の性格について、例えば、親会社、子会社、供給業者等の情報も公表すべき」が重点課題とされたようにも聞いています。
次回のコーポレートガバナンス・コードの改訂は、2021年が予想されますが、その前に金融庁などから政策保有株式について、踏み込んだ開示要請等があるかも知れません。
次回のブログでは、ICGNの総会で承認された日本のコーポレートガバナンスの重点課題について紹介したいと思います。