中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第4回)ー 政策保有株式の保有の合理性の検証はしているか?

前回、政策保有株式について物言う株主が指摘する視点として、「政策保有株式を縮減せよ」「保有する場合には保有の合理性あることを開示せよ」「保有に合理性ある場合でも、議決権行使基準を策定して、その基準に即した適切な議決権行使をせよ」の3つがあることをあげました。

1点目について、純資産の20%を超える政策保有株式を有する企業は、物言う株主にとって攻めやすい企業ということを書きました。前回の記事は最後に再掲しています。今回は、この続きで2点目の「政策保有株式を保有する場合には保有の合理性あることを開示せよ」について説明します。

コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式は縮減することが基本方針であり、保有する場合には、次のとおり保有の合理性を検証して開示せよとコードに規定されています。

上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方 など、 政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに 、そうした検証の内容について開示すべきである。

この中でのポイントは太字の箇所です。「保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査」が肝です。

具体的な検証の方法は企業に委ねられていますが、基本的には投資先企業の株主資本コスト(=期待するリターン)とROEの数値比較が1つの考え方になるのだと思います。つまり、投資先企業への株式投資で期待されるリターンと実際の対象企業のROE実績を比較して、過去数年間において、ROEが株主資本コストを下回るようであれば、基本的には保有の合理性はない方向に向かいます。それでも企業が政策保有株式を保有する場合には、保有のメリット、つまり投資による財務数値上のリターンはないものの株式を保有する意義を具体的に開示する必要があります

しかし、多くの企業では保有の具体的なメリットは開示されていません。取引上のメリットがある等の開示にとどまり、どうメリットがあるのかの肝心の部分が全く不明です。こういう開示の企業がほとんどです。

では、何故そのような状況になっているのでしょうか?それは、2018年にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、政策保有株式に関する原則が改訂された際に多くの上場企業が「どう開示しようか?」「他社さんはどのような開示をするのだろうか?」ということで悩む中、いくつかの企業が抽象的な記載の開示をしたことから、各社横並びで「これに倣おう!」ということで似たような開示文案になったのです。

いずれにせよ、このような開示は物言う株主にはつっこみどころ満載の開示です。物言う株主としては、「保有の合理性は何であるのか?」「合理性について取締役会でどう検討したのか?」を指摘することができます。取締役会で検証したということであれば、社外取締役も熟知していてしかるべきですが、社外取締役で政策保有株式の保有の合理性を正確に理解している方は少ないのではないでしょうか?