中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・コンサルティング / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメント・カンパニーと安藤ハザマの攻防①-潤沢な政策保有株式の保有

香港の投資ファンドであるアクティビストのオアシス・マネジメント・カンパニーが安藤ハザマの株式を取得していることは先日のブログで紹介しましたが、本日は、オアシスが注目しているであろうと想像する安藤ハザマのコーポレートガバナンス上の課題について気付いたところを説明します。

先日、準大手のゼネコン各社のキャッシュリッチ度合いを紹介しましたが、安藤ハザマの2019年3月末のネットキャッシュの状況は、次のとおりです。

ちなみにネットキャッシュ=現金・現金同等物+有価証券+純投資目的以外の投資上場株式(政策保有株式)-有利子負債と私は定義しています。

  • 現金・現金同等物 135,093百万円
  • 有価証券         15,999百万円
  • 政策保有株式       19,138百万円(※)
  • 有利子負債        29,271百万円

保有目的が純投資目的以外の目的にある投資株式の中、非上場以外の株式

上記数値より、ネットキャッシュ=140,959百万円。総資産の40.3%、月商の4.9ヵ月分で、非常に潤沢かと思います。

安藤ハザマの課題は、政策保有株式の多さです。政策保有株式については、今更ながらですが、コーポレートガバナンス・コードでは、次のように規定されています。

「 原則1-4 上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証るとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。」

 これを受けて、安藤ハザマの2019年6月27日付のコーポレートガバナンス報告書では、次のように記載されています。

「当社は、取引先企業との関係維持・強化など当社の持続的な成長、企業価値の向上に繋がると判断する場合には、上場株式を取得、保有する方針としております。その上で、保有株式について、資本コストも踏まえてリスクとリターンを勘案した定量面および将来の展望も踏まえた定性面の両面から毎年、保有継続の是非を定期的に検討、検証することとしております。その結果、保有の妥当性が認められないと判断した場合には縮減等の見直しを行います。」

この開示の課題は何でしょうか。それは極めてシンプルで、保有の具体的な検証方法が不明である点です。定量評価としてどういう数値基準を用いたのか、また、定性評価にある「将来の展望」の内容も意味するところが分かりません。

また、有価証券報告書を見ると、この1年間で安藤ハザマが売却した政策株式数は1銘柄で、一方で増加した銘柄は6銘柄です。金融庁東証及び資本市場が政策保有株式の縮減を求める中、安藤ハザマは削減が進んでいないと言うことが出来ます。

と厳しいことを書きましたが、多くの上場企業の開示文も概ねこのような内容の開示であるというのが現実ではあります。

このあたりが、オアシスにはとても魅力ある会社と映り、狙われているように想像します。政策保有株式の保有の問題を論理的に徹底的につつけば、政策保有株式を売却してその売却代金は株主還元に向かうことが期待できます。

 次にそうはいうものの「短期間で政策保有株式を売却できるのか?」という点も見る必要があります。

これは「片持ち」銘柄数がどの程度あるかを見ることになります。「片持ち」とは、安藤ハザマだけが保有しており、相手方が安藤ハザマの株式を保有していない場合をいいいます。双方に持ち合う場合は、「両持ち」といいます。

2019年3月期の安藤ハザマの有価証券報告書を見ると、安藤ハザマの政策保有株式58銘柄中の「片持ち銘柄」(相手方は安藤ハザマの株式を持っていない)は、41銘柄あります(ざっと数えただけなので1、2銘柄程度違うかも知れません)。

「両持ち」銘柄を売却するとなると相手も売却に動くので自社の安定株主の確保との観点では慎重になります。

しかし、「片持ち」銘柄であれば、相手方は株式を保有していないのですから、「保有し続ける義理」はなく、売却し易いと言えます。

これは安藤ハザマに限らず政策保有株式の解消を考える企業は、まずは片持ち銘柄からの解消を考えることが実務上は多いのではないでしょうか。安藤ハザマは、片持ち銘柄の41銘柄を今後売却して株主還元することが株主としては期待できます。

オアシスは安藤ハザマの本年の株主総会で株主提案をしていますが、次回はこの意味するところについて紹介したいと思います。