中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

経産省「公正な買収の在り方に関する研究会」(第2回)ー平時型の買収防衛策の在り方は?

12月に入り今年も残すところ1ヵ月を切りました。私は来週は社外の忘年会が2つ入っています。社内の飲み会には、昔は率先して参加していましたが、結局は他愛のない話題で終わることがほとんどで(人の話題、愚痴など)、副業の開始準備に最大の関心がある今となっては、社内の飲み会は時間とお金の無駄かなと強く感じるので、社内の飲み会の参加は可能な限り減らし(そもそもこの3年でコロナで飲み会自体が激減しましたが)、社外の方との情報交換に参加することを心がけています。

さて、本日は簡単なネタになりますが、研究会の第2回が12月1日に開催され、事務局資料が次のとおり公表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/002_03_00.pdf

資料の34ページに議論頂きたい論点として次の内容が記載されています。

  • 「買収防衛策」に関する類型の整理
  • 「平時導入型買収防衛策」の在り方
  •   対抗措置の「必要性」の要件
  • 「必要性」の判断者(株主意思確認総会/取締役会限りでの発動)
  •  対抗措置の「相当性」の要件について

いずれも気になりますが、「平時導入型買収防衛策の在り方」などは企業の方は特に気になるのではないでしょうか。次のような内容が検討されるようです。

平時導入型買収防衛策については、買収防衛指針において適法に導入するための要件整理を行っている。他方、近時、導入企業と機関投資家の間で評価が乖離し、対話を通じた相互理解が難しくなってきていることも踏まえ、あるべき姿について、どのように考えるべきか。

平時型の導入企業は、現行のスキームの見直しが必要になるかも知れませんし、また、機関投資家も「事前警告型=反対」というスタンスをあらためる必要が生じるかも知れませんね。

議事要旨はまだ公表されていないので詳細は分かりませんが、議事要旨が公表され次第、ブログでも議事のポイント、それに対する解説を行いたいと思います。

経産省「公正な買収の在り方に関する研究会」(第1回)の議事要旨が公表 ー 各委員の意見は参考になります

本日は研究会の第2回会議が開催されましたね。1回会議(11月18日)の会議議事録が経産省のホームページに次のとおり公表されていますが、本日は、議事要旨をしっかりと読み込みました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/001_gijiyoshi.pdf

各委員の意見が色々と書かれており、なるほどと思うところがあり、勉強になりました。議事要旨に記載されている中からいくつか参考になる意見を切り出して紹介したいと思います。意見を述べた方の氏名は記載しませんが、議事要旨の該当ページ番号を付けておりますので、詳細は議事要旨本文をご覧頂ければと思います。

(P10)まず、買収者側は十分な情報開示が必要であろう~(※途中省略します)~買収者側が企業価値向上策を示した場合には、対象会社側においては、買収者側の企業価値向上策と十分な比較可能性を有する具体的な企業価値向上策を提示することが強く期待されるのではないか。加えて、自らの本源的価値を可能な限り定量的に株主・投資家に対して提示することが強く期待される 

そのとおりですね。買収者は自分なら企業価値を高めることが出来ると思い買収をするのですから、買収提案を受けた対象会社としては、自社の理論上の企業価値を株主に説明して、自前でも中長期で企業価値向上が出来ることを時間軸を決めて、株主の賛同を求めることが必要になりますね。 

(P12)買収防衛指針について、平時導入型買収防衛策の発動に関わる事項や有事に買収防衛策を導入するための要件や、有事導入型買収防衛策の発動に関わる話はスコープ外となっていた。今回の研究会で、これらを検討することは必要~(※途中省略します)~買収防衛指針を策定した2005 年当時は、日本は政府をあげて買収防衛策に賛成しているのかとマーケットから見られたこともあったので、当該指針の新たなバージョンという打出しではなくて、公正な買収の在り方という広い概念を用いて整理するほうがよいと思っている

2005年当時は安定株主がいるのが常識の時代でした。政策保有株式が悪いなどという国内の機関投資家もいなかったと思います。これに違和感を覚えていたのが海外機関投資家です。そのような環境下で策定されたのが、買収防衛指針ですので、そもそも今の時代にそぐわないのかも知れませんね

(P15)会社の支配権争いの方向性について、基本的には株主が判断するべきであるが、企業が果たしてきた社会的及び経済的責任を買収提案者が負えるかどうか確認する機会や制度が必要と考えている。買収防衛策の適法性や合理性にばかり焦点を当てるのではなく、買収提案者の行為規範を見直すとともに、たとえば、ドイツやイギリスなどの制度なども参考に、買収提案者に対する情報提供請求権を会社に付与することなども検討すべきではないか

(P19)平時導入型買収防衛策が本当に必要だと考えているが、議案が否決されてしまうという消極的な理由で廃止している企業もいる。買収防衛策が保身目的だと主張する投資家の意見も理解できるが、マイナス面ばかりに注目されて杓子定規に判断をされているようにも思われる。企業側にも工夫が必要であるが、買収防衛策のプラスの側面にも焦点が当たるべきではないか~(※途中省略します)~ 平時導入型買収防衛策を入れることが買収提案対応の予見可能性を高めて買収提案が真摯に検討されることにも資するのではないか

 個人的にはとても納得できます。機関投資家はマイナス面だけを強調して一律反対というのがほとんどです。背景にはアセットオーナーから「廃止せよ」と言われているからです。でも、アセットオーナーが求めるからというだけで反対してよいのでしょうかね。機関投資家はプロのアセットマネジャーであり、企業の実態を踏まえて柔軟に議決権行使をすべきです。

昨今、株主至上主義からステークホルダーキャピタリズムへのシフトといった議論がアメリカでも生じている。社会課題の解決と企業の存続意義とを企業価値の向上の観点から整合的に考える立場も踏まえ、今回ガイドラインを策定する際には、そのような背景事情や議論の推移も整理してアップデートした上で、今企業が公正な買収の在り方についてどのように考え、どのように振る舞うべきかがわかるようなものになれば良いと思う。

ステークホルダー資本主義の時代ですので、株主のことだけでなく、企業は他のステークホルダーのことを考える必要があります。従って、他のステークホルダーの利益を毀損しないか否かという観点から敵対的買収の妥当性であったり、その対抗手段である買収防衛策の是非を考えるべきと思います。

今回の委員の中には、これまで私が仕事でお会いした方も複数おり、参考になる意見も結構ありましたが、特に気付いた点を参考までに紹介させて頂きました。西村あさひ法律事務所の太田氏の意見なども非常に分かり易いです。各委員の意見は有用ですので、議事要旨と事務局資料はじっくりと読まれることをお薦めします。

「四半期決算短信」の開示の任意化案②ー 四半期決算で企業が充実すべき情報は?

前回、記事に書きました経産省の「公正な買収の在り方に関する研究会」の第2回会議は明日開催されます。第1回の会議の議事要旨が先日、公表されました。まだ細かくは読めていないのですが、各委員からの貴重な意見が記載されている模様で、明日精読する予定です。週末にはブログで第1回会議の議事要旨のポイントを紹介したいと思いますので、ご関心のある方は、是非ご覧頂ければと思います。

さて、本日は、前々回に書いた四半期決算短信の開示の任意化案の続きを書きます(前回の記事は最後に再掲しています)。前回は、四半期決算短信の有無を議論する前に、現行の四半期決算短信の開示情報が「しょぼい」という話で終わりました。では、「企業はどうすればよいか?」ということを今回はお話をしたいと思います。

まず投資家が四半期決算で知りたいのは何かというと、四半期の数値そのものではないと言うことです。決算短信の最初のページの一番下に通期の業績予想を記載しています。この数値を達成できるかどうか否かに投資家は関心があります。四半期決算で知りたいのは、現時点でこの通期予想が予定どおりに進んでいるか否かなのです。

通期の業績予想を立てる時に売上高、営業利益等を算定したベースとなる事業戦略・販売戦略等があるはずです。この戦略が期中の現時点で予定どおりか否かを投資家は知りたいのです。その結果として、決算短信の数値がついてくるということです。仮に4ー9月期の6ヵ月間の売上高の進捗率(=6ヵ月間の売上高÷通期売上高予想(%))が低い場合でも、前提とする年間の戦略にブレがないのであれば、それを開示するべきなのだと思います。

もっとも決算短信の様式は東証で決まっていますので、自由に記載するには限度がありますので、そういった内容は決算短信以外の決算補足資料や別の何らかの説明資料に開示することになるのだと思います。こういう手間をかけることを怠り、短信の様式に沿った数値のみを開示していると、四半期決算の開示の都度、株価が上がったり、下がったりして、その間隙をついてアクティビストが入り込むといったリスクも出てくると思います。

一方で、中長期株式投資を志向する個人投資家の方には、是非とも投資先企業のIR部門に四半期決算の都度、質問をすることをお薦めします。12月16日に四季報が出た後、四季報の内容を読んで、投資先銘柄のIR部門に進捗にブレはないかを細かい質問すると色々と気づきもあるし、投資先企業の勉強にもなるかと思います。

ちなみに、私は毎四半期決算発表の都度、投資先銘柄(そこそこの金額の投資をしている数銘柄に限定して)のIR部門に必ず問い合わせをして、ブレがないかを確認するようにしています。万一、満足の行く回答をしない企業であれば、株主総会に出席して議長に質問をするという行動に移せばよいのだと思います。

経産省「公正な買収の在り方に関する研究会」第1回 ー 研究会で今後議論されていく論点は?

本日は、仕事上の必要があり、経済産業省経産省)が11月に立ち上げた「公平な買収の在り方に関する研究会」の第1回会議の事務局資料をじっくりと読んでいます(本日は在宅勤務ですので、誰の目も気にすることなく、情報収集に時間をかけたり、副業の準備をしたり自由にやっています)。第1回の事務局資料は以下になります。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/001_04_00.pdf

この資料ですが、かなり有報な情報が分かりやすく盛り込まれていますね。日本の敵対的買収の裁判例のポイント、関係者へのインタビュー結果などもかなり詳しいです。とても参考になります。

さて、この会議ですが、11月18日に開催されたのは第1回目で、今後も月1回の頻度で開催されますので、今後論点はより絞られていくのだと思いますが、第1回の事務局資料で論点らしきものをいくつかピックアップすると次の内容かと思います。以下は事務局資料の一部になりますので、今後、論点はこれだに限られないと思いますので、この点はご留意ください。

  • 対抗提案や事業切り出しの提案の場面については、「真摯な提案には真摯に対応する」(具体的かつ実現可能性のある真摯な買収提案については、取締役の善管注意義務の趣旨も踏まえ、原則として、取締役会において取り上げ、真摯な検討を行うことが望ましい)という考え方が示されているが、買収提案についての一般論として、こうした考え方を適用できるかどうか(資料P32)
  • 市場買付けにおける取得目的・経営計画・取引条件等の情報提供や、買収者側の実質株主に関する情報提供の在り方について、どのように考えるべきか(資料P44)
  • 純粋に株主のための時間・情報・交渉機会等を確保するための対抗措置等について、「買収防衛策」という保身的な用語を用いることは正確ではないとの指摘もあり、従来の指針の定義の見直しも含め、用語法について改めてどのように考えるべきか(資料P46)
  • 「平時導入型」については近時、導入企業と機関投資家の間で評価が乖離し、対話を通じた相互理解が難しくなってきていることも踏まえ、あるべき姿について、再検討する必要がないか。また、現行指針では対象としていない有事導入型についても在り方を示すことで予見可能性を高めるべきではないか(資料P50)
  • 市場内買付けにより3分の1を超える株式を取得する場合でも、MoM決議による発動が認められる場面は限定すべきか。また、市場内買付けによる3分の1以下の株式の取得、もしくは公開買付けによる取得について、MoM決議による対抗措置発動の許容性をどう考えるか(資料P55)
  • 「有事導入型」について、取締役会決議限りでの導入・発動を肯定的に捉えるべき場面はあるか。仮にありうるとすれば、いわゆる高裁四類型のほか、どのような場合か(資料P56)

この1~2年の有事型の買収防衛策の裁判例で論点となっている内容が記載されていますね。これが全て議論されるのか、今後論点が追加されていくのかなどは、第1回会議の議事録や第2回以降の会議資料を見る必要があるかと思います。平時導入型のスキームも今後、見直しをする必要も出てくるかも知れませんね。第2回は12月1日開催の予定です。

次回、第1回会議の議事録または第2回会議の資料が掲載された時点で解説を深掘りして行きたいと思います。

「四半期決算短信」の開示の任意化案①ー 四半期決算短信の制度自体は必要かと思います。問題なのは・・・

本日、1ヵ月ぶりに自分の個人用PCが修理から戻ってきました。この1ヵ月はもう1台の自宅の家族用PCでブログの記事を書いていたのですが、かなり重く、またキーボードが非常に使い勝手が悪く、記事を書くのに悪戦苦闘していました。やはり慣れ親しんだ自分のPCが一番です。

さて、本題ですが、本日の日経新聞金融庁が議論中の四半期開示に関して次の記事が掲載されていました。

企業に適時開示充実促す: 日本経済新聞

四半期決算の開示の見直しが進んでいることはご存じの方も多いと思います。金融庁の審議会の資料はまだ見ていないので、詳細を把握しきれてはいないのですが、新聞報道によれば、①四半期報告書は廃止し、四半期決算短信に1本化する ②将来的には適時開示を拡充することを条件に、四半期開示の義務をなくす方向ということのようです。

①はこれまでも報道のとおりですが、②は今回初めて聞いたので、今回、突如として出てきた考えかと思います。四半期決算短信の開示を任意とし、開示をするしないは企業の判断に委ねるということですね。この金融庁の公表を受けて、新聞の社説では四半期決算開示の任意化について反対する意見がありましたが、多くの機関投資家も反対する意見が強いのかも知れません。

そもそも四半期決算開示が批判されているのは、伊藤レポートに記載されているように株式投資のショートターミズムを助長することになるというのが大きな理由です。つまり、3ヵ月の業績数値を見て、アナリストが企業を評価し、結果、企業の株価が乱高下します。サラリーマン社長はオーナー社長と違って任期が短いこともあり、短期の業績に強くこだわり、長期での成長に資する研究開発費、設備投資等の戦略を企業は打ち出せず、中長期でのイノベーションが出来ないということです。

言わんとすることは分かりますが、中長期投資を志向する機関投資家であっても企業の業績の進捗は把握したいところだと思いますので、四半期での業績の開示がなくなるというのはよろしくないのだろと私は思います。けど、最大の問題は、現状の四半期決算の開示があまりにしょぼいという点だと私は思います。これがショートターミズムを助長している最大の要因かなと。

どういうことかと言いますと、四半期決算短信の開示内容があまりに少ないのだと思います。四半期(累計期間)のPLとBSの数値が記載されているだけで、あとは直近の四半期決算短信とほぼ変わらない経営成績の文章がつらつらと書いてあるのが多くの上場企業の四半期決算短信です。

とすると、記述情報(=数値以外の情報)が少ない分、投資家は数値のみで企業を判断せざるを得なくなります。例えば、コストインフレの売価転嫁が下期に効果が現れるのであれば、それを文章で書かないと投資家には分からず、結果、上期の決算短信の数値が芳しくないとマイナス評価をすることになります。

ということを考えますと、四半期決算短信自体が問題なのではなく、現状の四半期決算短信の開示の内容がそもそも問題なのだと思います。では、どうすればよいでしょうか? 続きは次回になります。

アニュアルレポート、統合報告書は誰のため?

本日は夜10時からサッカーワールドカップの日本対ドイツですね。私はサッカー、野球はじめスポーツ全般の観戦の習慣は子供の頃から元々なかったのですが、子供がサッカーを始めて以降、日本のサッカーやラグビーの試合観戦が楽しみで、本日は夜ビールを飲みながら家族でテレビ観戦の予定です(これから車でコンビニにビールとおつまみを買いに行く予定です)。

本題に入りますが、11月18日の新聞報道で日本IR協議会がIR優良企業13社を公表したとの記事がありました。大賞がアサヒホールディングス、NTT、優良企業賞は味の素、荏原、日立製作所富士電機などのようです。

私はこの賞のことはあまり詳しくはないので、表彰の基準は分かりませんが、想像するに統合報告書はじめIR関連資料の分かりやすい開示が評価されたのだと思います。私も統合報告書の作成の関係で、これら企業の統合報告書は前から時々見ていますが、大変分かりやすく記載されており、参考になる構成や記述も多く、機関投資家から見ても高い評価なのだろうと想像します。

統合報告やIR活動の関する表彰については、これ以外にどういうものがあるのか私は知りませんが、こういった賞をとりたいと考える企業のIR部門は多いのだろうと思います。IR部門は仕事の成果の貢献が非常に見えずらい部署です。企業業績が悪かったり、業界の今後の見通しが悪いといくらIR活動を頑張ってみたところで、株価はなかなか上がらないし、また、IR部門の担当者は優秀でも、投資家とのミーティングで説明する経営トップやIR担当役員のプレゼン能力が低いとアナリストが判断すると、IR担当が頑張ってもこれまた株価は上がりません。

ちなみに、この経営トップやIR担当役員のプレゼン能力は極めて大事です。プレゼン能力が低いと「この会社に投資して大丈夫か?」と投資家は思ってしまいます。「プレゼン能力が高い=単なるおしゃべりが上手い」というのではなく、口頭での説明ににじみ出る自信です。企業業績が悪かったり、業界の先行きが不透明な企業ほど、経営トップなどのプレゼン能力が株価を左右するのだと、投資先企業の決算説明会の動画を見るたびに私は感じます(業績がよければプレゼン能力の重要性は当然下がります)。

 少々脱線しましたが、ということで、IR部門の方が賞をとりたいという気持ちは私はよく分かります。けど、ここで良く考えなければならないことがあります。それは、賞をとることと、自社の株主・機関投資家が求めることのベクトルがあっているかです。これはかなり大事です(ところで、企業には様々なステークホルダーが存在しますが、統合報告書は取引先、社内の従業員が読むことは少なく、また、就職活動中の学生もさっと眺める程度だと思います。隅々まで読むのは機関投資家です。つまり機関投資家のための資料と言ってよいです)。 

表彰にばかり目が行き、細かい数値を沢山開示する企業も最近増えていると言われていますが、その数値の意味が不明な企業も結構目にします。「この企業がこの数値を公表する意味は何?」という疑問です。他社の開示例やコンサルタントのアドバイスから「当社も沢山、非財務情報を開示せねば」と考えているのだと思います。

けど、単なる数値の羅列ではなく、数値の裏にあるストーリーが肝であり、そこを知りたいというのが投資家です。投資家がどこまで定性情報(短期の業績数値以外の情報)を理解できるのかという問題もありますが(長期投資の能力のある投資家は少ないのも現実)、このストーリーを骨太にして、それを裏付ける数値を必要な範囲で掲載するというのが肝になるのだと思います。このスト—リーは業界や個社によって大きな差異があるので、何が正しいのかの決まりはありません。賞をとることを目指すのはIR部門の担当者の励みになるので大事だとは思いますが、その前にまずは自社の株主・機関投資家が望む情報が開示出来ているかをしっかりと考えるべきと思います。

経済産業省が買収防衛策の在り方の検討を開始しますー「公正な買収の在り方に関する研究会」の立ち上げ

この1、2年で有事型の買収防衛策に関する事案、裁判例が増えていることはご存知の方も多いと思います。ブログでも何度か触れてきました。最近の事例を踏まえて経済産業省金融庁あたりで買収防衛策の在り方の議論を開始しないのかなと思っていましたが、経済産業省で開始するようですね。次のとおり11月18日付で経済産業省が「公正な買収の在り方に関する研究会」を立ち上げました。

既に第1回会合が開催されたようです。第1回会合の事務局資料は以下にあります。

第1回 公正な買収の在り方に関する研究会(METI/経済産業省)

経済産業省は2005年5月に 「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を策定、2008年6月には 「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(企業価値研究会)などを策定、公表してきました。しかし、その後、敵対的買収に対する対抗措置発動の事例も10年以上なかったことから、これら指針の効力が疑問でしたが、最近の事例を踏まえ検討を開始するということですね。

事前警告型の買収防衛策に対しては、ほとんどの機関投資家は反対する一方、有事型については、機関投資家はケース・バイ・ケースで判断するとしています。どういう判断基準で賛成するのかを機関投資家に聞くと、「敵対的買収者と企業サイドのいずれが企業価値を向上させるかで賛否を決める」という回答をします。「そりゃそうだろう」と思いますが、どういう有事型であれば機関投資家は賛同するのか明確な基準がなく、企業は判断に迷うところも多いかと思います。株主総会過半数の賛同があればよいのか? 株主総会の賛同さえあれば良いということであれば、全てを株主任せで良いのか、企業経営者として何も考えていないようにも思えます。

今回の研究会の結果は、今後の事前型の買収防衛策のあり方にも影響を及ぼすかと思います。研究会の成果については、来年の春頃までに整理するようです。来年、6月の定時株主総会で事前警告型の買収防衛策の更新期限を迎える企業などは、この研究会の議論の行方に十分に留意する必要があるように思います。

仮に事前警告型を廃止するとした場合には、有事型を社内で十分に検討することになると思いますが、その際の有事型のスキームについては、この研究会の議論を踏まえた内容にする必要があると思います。上場企業、アクティビスト、機関投資家ともに関心を持つべき研究会と私は思います。言われなくてもアクティビストは当然、関心をもって見るのだと思いますが。

 今後、この研究会の動きや会合での論点はしっかりとウォッチして、このブログで記事を掲載して行きたいと思います。企業の実務者向けに少し難しい内容になるかも知れませんが、なるべく分かりやすく、平易な文章での記事の掲載を心がけますので、ご関心のある方は、是非とも今後のブログの記事をご覧頂ければと思います。

議決権行使助言会社ISSの2023年版の議決権行使助言ポリシー改定案

先日、ブログのある記事について久しぶりにコメントを頂きました。大変ありがとうございます。ただ、はてなブログの場合、コメントの返信が少し複雑なところがあり(返信用のボタンがないなど)、以前には別の方からの質問に対してネットでやり方を調べて返信をしたこともあるのですが、しばらく時間も経ち、やり方をすっかり忘れてしまいましたので、確認した上で、ご質問を頂いた方には明日以降にご回答を差し上げたいと考えております。

さて、議決権行使助言会社ISSが来年2月の株主総会から適用になる2023年版の議決権行使基準の改定案を公表したようですね。次のとおりです。

https://www.issgovernance.com/file/policy/2022/2023-Benchmark-Policy-Changes-For-Comment-Japanese.pdf

取締役の選任に関して2点となりますが、うち1点は2022年版で改訂は公表されております。とは言え、これは改訂に向けたコメント募集ということですので、これで確定したわけではないです。ただ、過去の改訂においては、最終的には改訂案そのままで確定したことが多かったかと思いますので、今回もこの改訂案で確定する可能性は高いのだと私は考えています。

今回の改訂案では驚くところはないですね。Climate Action100については、対象となる日本企業はごく一部の超大手企業の10社程度になるかと思いますので、ほぼ全ての上場企業には関係のない話ですね。

それよりも、気になるのはROE基準の適用の復活があるかどうかです。過去5期平均のROEが5%を下回る場合、経営トップに反対推奨という基準をISSは有していますが、この数年、日本企業に対しては適用を停止しています。今回の改訂案では、これについては触れられていませんね。とすると2023年度も適用停止が続くのかも知れません。まだなんとも言えませんが。

業績の低迷している企業で、かつ海外機関投資家による株式保有比率の高い企業は、適用が復活となると経営トップへの反対が一気に増えるところもあり、かなり気になるところかとは思います。今後、動向を注視して変化があれば、ブログでも掲載したいと思います。

個人投資家のコーポレートガバナンスの理解力の向上が大事です ー 近いうちにブログのタイトルを変更する予定です

このブログですが、開設した当初は、実務ニュースの解説が主でしたが、ブログを継続する中で、少々目的が変化してきました。2018年、2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂、この数年での非財務情報に着目しての機関投資家の中長期視点での投資の高まりなど、機関投資家コーポレートガバナンス・コード、ESGへの造詣が非常に深くなってきていると感じます。今更言うことでないのかも知れませんが。

私の場合、これまで5年以上にわたり機関投資家と定期的に意見交換などをしてきましたが、4〜5年前には非財務情報、ESGに関心を払う機関投資家は少なかったのですが、ここ2〜3年で潮流が大きく変化したなと感じます。機関投資家との非財務情報に関する面談を実施する際、数年前であればアナリストは同席しないケースも結構多かったのですが、ここ最近はアナリストと責任投資の担当者が同席することが普通になっており、投資対象の観点から非財務情報の比重が高まってきたことの証と言えます。コーポレートガバナンス・コードは、上場企業と投資家との対話の手順書になっているのだと思います。

一方、依然として個人投資家にはコーポレートガバナンス・コードは馴染みが薄いのではないでしょうか? けど、中長期投資を志向するプロの機関投資家が対話の手順書としてコーポレートガバナンス・コードを活用しているのですから、個人投資家も是非ともこのコードを深く理解した方がよいのではと私は強く思います。

勿論、機関投資家個人投資家の銘柄に対する投資金額は違います。機関投資家は1銘柄あたり数十万株〜数百万株以上を保有することが常です。一方、個人投資家は1銘柄あたり数百株からせいぜい数千株、お金の余裕のある人でも数万株となります。この程度の株式しか持たないのに、コーポレートガバナンスなど理解しても投資への影響はないのではないか、という考えを持つ方もいると思います。

しかし、個人投資家も中長期で株式投資をする場合には、機関投資家と視点は同じであるべきと思いますコーポレートガバナンス・コードは、企業の持続的成長かつ中長期での企業価値向上に資するルールであり、金融庁、大学の著名な教授、資本市場関係者などが時間を割いて議論をして、作り上げたものです。つまりそれだけ価値があり、有用なものだと思います。

であれば、個々の個人投資家の力は小さくでも、多くの個人投資家コーポレートガバナンスに精通して機関投資家と同程度のレベルにまで到達し、企業に建設的な提案をすることで企業価値向上を図ることが出来るのだと思います。

ということを考えてながらブログを書いています。個人投資家の方向けにコーポレートガバナンスに関するセミナーなど出来ればよいのですが、実現にはかなりハードルがありますので(お声がかかればやりたいところです)、当分の間はブログでの情報発信に力を入れています。ということで、週末にでもブログのタイトルを上記のような内容に沿った内容に少し変更しようかと思案中です。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第15回)ー社外取との面談の要請

今週の日経ビジネスに「ボード3.0の時代」というタイトルの記事がありました。社外取の役割を再考するということです。社外取に求める役割も変化していますね。

今回は、第15回ということで、社外取との面談要請について書いてみたいと思います。前回の第14回の記事の冒頭でも少し触れましたが、アクティビストがサッポロホールディングスの社外取に対して書簡を送付していますが、このように物言う株主が社外取の意見や面談を求めるケースが今後益々増えるのだと思います。そもそもコーポレートガバナンス・コードで社外取との面談について次のとおり規定されています。

補充原則5-1① 株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部、社外取締役を含む取締役または監査役が面談に臨むことを基本とすべきである。

この規定ですが、実は2021年に改訂がされており、改訂前の文言は「株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で経営陣幹部または取締役(社外取締役を含む)が面談に臨むことを基本とすべきである」です。この2つの違いはお分かりでしょうか?

改訂前は「取締役(社外取締役)」でしたが、改訂後は「社外取締役を含む取締役」になっています。同じような表現ではありますが、意図するところは実は大きく違うと私は思います。これまでは「社外取締役が面談してもよいよ」という意味合いでしたが、改訂により、「社外取が社内取と同じ立場で面談せよ」という意味に大きく変化したのです。これにより、社外取との面談を求める物言う株主の要請について、会社は簡単には無視出来ないことになったと言えます。

コーポレートガバナンス・コードを全て遵守しています」ということをコーポレートガバナンス報告書の冒頭でうたっている企業(ほとんどの企業はそうだと思いますが)は、遵守している以上は注意する必要があります。遵守しているということは、社外取との面談も前向きに実施するということを表明していると言えると思います。

企業には通常、IR担当取締役がいます。この方は、投資家とのお話には慣れていると言えますが(もっともIR担当役員でも、話がめちゃくちゃ下手な方もいますが)、社外取は対外的に話をすることに必ずしも馴れている人ばかりではありません。他社での経営トップ経験者であれば別ですが、社長経験のない技術・生産一筋、情報システム一筋、経理一筋などの社外取の方だとおしゃべりがかなり下手な方も多いと思います。あくまで私の証券会社時代の経験です。これらの方々は、社内向けの仕事一筋の方々ですので、切った張ったの交渉経験もないことがその大きな要因です。おしゃべりの下手な社外取が面談に出て、しどろもどろの話をしたら、物言う株主につけこまれる材料を与えることになります。物言う株主にとっては格好のターゲットと言えます。

投資先企業のコーポレートガバナンス報告書に「全て遵守しています」とうたっている企業は社外取の面談を求められた場合、どのように対応するか良く検討しておいた方がよいかと思います。「社外取の日程調整が難しいので面談は難しいです」という理由は、もはや通じない時代になってきているのだと思います。予め投資家との面談対応する社外取を決めておき、その方に十分な訓練をするといったことが必要になるように思います。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第14回) ー 取締役会の実効性評価の大事な点は?

昨日の日経新聞投資ファンドの3Dインベストメントがサッポロホールディングスの社外取に改革主導を果たすことを求める書簡を送付したとの記事がありました。社外取と投資家との面談はコーポレートガバナンスの流れに沿ったものでありますので、何ら違和感はないのですが、会社としては大変かと思います。今後、アクティビストが社外取に課題を投げかけ、対話を求めるという手法が増えるかと思いますので、アクティビストに株式を持たれている企業は、自社でも同様の事態が起こることは念頭においた方がよいかと思います。近日中にブログでも触れたいと思います。

さて、前回、取締役会の実効性評価において、自前で行う実効性評価はイマイチであり機関投資家の評判があまり良くない(であろう)ということを書きましたが、今回は続きになります。自前でやっても、社長に生殺与奪権を握られている社内取・社外取が、仮に取締役会の実効性に問題があったと考えても馬鹿正直にそれを語るインセンティブはありえないため、コーポレートガバナンス報告書等で「実効性あり」と開示しても、機関投資家としては「本当かい?」となります。

ではどうすればよいかというと、シンプルですが、外部専門業者を実効性評価者として起用するのがよいかと思います。外部業者を起用して、アンケートから取締役各位へのインタビューまでの一切を業者に任せるのです。この外部業者起用のポイントは取締役が、比較的本音で語ることが期待できるということです。社内の人には話は出来ないが社外の方であれば心を許し、本音を語ることが出来ると思います。外部専門業者は、他の多くの企業の取締役会の実効性評価を実施していますので、取締役に納得のいくアドバイスもしてくれるはずです。

ただし、この手のインタビューは塾の講師と一緒でインタビュアーの力量が全てです。従って、たいした経験もなかったり、スモールからミドルサイズの上場企業しか扱ったことのないインタビュアーであれば、ラージサイズ(=株式時価総額の大きい)の企業には役不足と思います。従い、会社としては、誰がインタビューアーになるのか、そしてその人物の経験を把握することも大事です。また、ラージサイズの企業の社外取であれば、一流企業の経営トップ経験者も多いと思います。となると、必然的に超一流大学卒の社外取が多いので、そういったハイレベルの方と遜色のない学歴をインタビューの方は有していることも結構大事です。

そして、実効性評価で大事なことは、評価の結果として判明した課題と課題の解決に向けた取組みを正直に開示することです。課題のない会社はないです。折角、プロの業者を起用して評価したのですから、何らかの課題があることは分かるはずであり、それを開示して欲しいというのが機関投資家の要望です。

課題というのは、中長期な企業価値の向上を目指す上での現時点での課題です。そして、この課題をどう解決していくのかも機関投資家が知りたいところです。課題は必ずしも1年で解決できるものではありません。その場合には、解決に向けた取組みを1年目、2年目というようにして開示を継続することでよいと思います。

「課題はありません」という会社より、課題を開示した会社の方が機関投資家には嬉しいのだと思います。課題の開示を恥ずかしいと考える企業もあるかも知れませんが、その考えはあらためた方がよいと思います。ただ、課題が多すぎる会社の場合、全部開示すると機関投資家がかえって心配になるので、そのあたりの配慮は必要になるとは思います。課題と解決に向けた取組みを開示することによって、万一、アクティビストが会社の課題を理由に株主提案をしても、「いま会社は課題の解決の途上にある」とことにいて他の機関投資家の理解を得ることも出来るのだと思います。ということで取締役会の実効性評価については、これで終わりたいと思います。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第14回) ー 取締役会の実効性評価。投資家の満足する手法は?

本日は、久しぶりに物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方を書きたいと思います。前回、第13回を書いてからだいぶ日が空いてしまいましたが(参考までに前回と前々回を最後に再掲しています!)、11月に入り、来年の定時株主総会を意識して会社、物言う株主双方ともに準備を開始する時期かと思いますので、実務目線での話をして行きたいと思います。

本日は、取締役会の実効性評価です。取締役会の実効性評価は、2015年のコーポレートガバナンス・コードの制定の際にコードに盛り込まれました。規定としては次の内容です。

補充原則4-11 ③ 取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

コーポレートガバナンス・コードは、社外取締役を含む取締役会を改革していくことで、企業の稼ぐ力をつけることを狙いとしています。従い、肝心な取締役会が実効性があるかどうかはとても大事であり、機関投資家の関心の高い事項の1つでもあります。

ではどういう点を投資家は気にするでしょうか?ポイントは2つあります。まず1つは、実効性の評価手法です

多くの企業は、評価を社内で自前でやっていることが多いかと思います。役員会事務局あたりが、アンケートを全取締役に配布して、書面ベースで回答をもらうやり方です。質問事項をいくつか書いて、それぞれに「○」「×」などの回答をもらい、集計をしているケースです。単なる書面での回答だけで終わるところもあれば、これに加えて取締役会の議長などが個別インタビューを実施することもあると思います。けど、私の感覚では、機関投資家はこの手法はあまり評価していないように思います。

だって自前でやるとなると、各取締役は正直に答えられないですよね。アンケートについても、仮に匿名の回答であっても、忖度をして差しさわりのない回答をするのだと思います。分別のある中高年の社会人なら当然の所作です。

というのも取締役を選んでいるのは、社長をトップとした取締役会です。社長や議長より役職の低い、専務や常務クラスが「当社の取締役会は議論が十分になされていない」などと馬鹿正直に回答するインセンティブは、普通はまずありません。これは社外取締役も同じです。社長や議長を批判することにつながり、任期満了とともに来年は選任されない可能性大です。また、社外取は社内情報に疎いのが常であり、そういう中で取締役会での議論が不十分であるというような回答をした場合には、議長から「それは無知な貴方の能力が低いのでは?」と疑念を持たれ、今年でお役御免という事態にもなりかねません。

社外取の平均的な年収は、たしか800万台ということが前に新聞に掲載されていました。結構な額ですよね。だって活動するのは基本的に取締役会への参加であり、毎月1回の参加で年12回とすると、時給ベースにすると、いかに割の良い、美味しい仕事かが分かります。年収が5000万円以上などの富裕層でもない限り、この地位を失いたくないというのが、普通の感覚かと思います。ということで自前での評価は実施したところで、本当に実効性が適切に評価されているのか機関投資家からしたら良く分からないということになるのです。

では、自前が駄目となるとどういう手法で実施すればよいでしょうか?これは次回説明したいと思います。

本には書かれていない株主提案への実務対応の考え方③ ー 株主提案を本気で行使するかどうかで判断します

本日の日経新聞に「訪日客再興 追い風」ということで訪日外国人関連で数銘柄が掲載されていました。この中のある銘柄は、中長期保有で買い増しを検討しているところです。コロナ禍で訪日外国人需要が蒸発しましたが、今後(2年後あたり)、確実に戻るはずですので、安い時点で仕込むチャンスかなと考えてはいます。

前回、株主提案について第2回を掲載しました。株主提案の300単元は持つものの、数万株程度の僅少な株式の取得にとどまる場合に企業はどう対応するかです。前回、基本的に静観でよいと説明しましたが、本日は続きを説明したいと思います。

前提としては発行済株式総数が3億株の企業で、投資ファンドであるアクティビストが仮に50,000株程度を取得している場合です。 この場合、株主はたしかに株主提案は可能です。けど、株主提案をしてそれを株主総会で通すには過半数の決議が必要です。つまり、この投資ファンドは、他の機関投資家をはじめ株主の賛同を得る必要があります。そのためには、他の株主の賛同を得るためには、もう少し保有比率を増やしておかないと現実には不可能です。

投資ファンドは趣味で投資をしているのではなく、アセットオーナーからお金を預かり、一定のリターンを得るために投資をしています。株主提案をして機関投資家の賛同を得るには、株主提案の内容を精練されたものにする必要があり、大手の法律事務所を起用するケースが多いです。となると、当然ながら、業者コストもそれなりにかかります。コストをかけてやるからには、それなりに覚悟をもって臨むのであり、わずか50,000株程度でコストをかけてプロの投資ファンドが株主提案をするということは考えにくいのだと思います。

だから企業としては、あせることなく、投資ファンドの株数の変動には気をつけつつ当面は静観することでよいのだと思います。 これが投資のプロである投資ファンドが取得した場合の対応です。

けど、個人株主の場合には、面倒ですが注意する必要があります。 個人株主は何も深いことを考えずに、株主提案をするケースも多いと思います。投資先企業への嫌がらせのための株主提案と思われるようなケースも散見されます。この場合、法律事務所を起用しているのかは知りませんが、仮に起用するにしても、知り合いの小さい法律事務所などを起用するだと思います。結果、たいしてお金もかからずに個人株主は株主提案が出来るということで、しょうもない提案をすることも多いです。

とは言え、株主提案があった以上は、会社側としては会社法を踏まえた対応をする必要はあります。まあ、結果への影響はゼロですが、面倒ですが事務対応はせざるを得ないということです。

以上で簡単ですが、株主提案が可能な株数を有する株主への対応の考え方として、3回に亘り記事を掲載しました。

【株式投資】自動車の生産台数 ー 東南アジアの動向を注視

本日は、前回のブログの続きとして、株主提案の第3回目を書く予定でしたが、まだ文章を作成中のため、本日は別のネタの記事を1つ書きたいと思います。

週明けから投資先銘柄をはじめ、企業各社の2Q決算発表が続きます。仕事の関係では、工作機械、半導体関係、自動車や自動車部品関係を中心とした銘柄の決算に注視する予定ですが、本日の日経新聞に次の記事が掲載されていました。

車の世界生産、日本8社46%増: 日本経済新聞

日本のカーメーカーの国内・海外の生産台数が回復傾向が続くという内容の記事です。マークラインズなどが月次の各国の生産台数を公表しているかと思います。有料ですが。私はマークラインなどデータも定期的に見ているのですが、やはり東南アジアの自動車の生産台数は対前年比で4月以降は伸びていますね。東南アジアで自動車生産台数で大きいのは、タイ、インドネシア、マレーシアです。勿論、絶対数では日本、中国、米国、ドイツよりだいぶ少ないですが。

EUでは2035年にはガソリン車などの内燃車の販売が事実上禁止され、ハイブリッド車も販売できなくなる予定かと思います。となるとEV化にはまだ時間がかかると思われる東南アジアでのガソリン車、ハイブリッド車の日本のカーメーカの台数増に期待したいところです。そのためには、タイ、インドネシア、マレーシアの今後のGDP、人口の伸び率なども注視する必要があるかなと思っています(欧州での生産、欧州への輸出の減少分を全て東南アジア分で補うことは難しいとは思いますが)。

このあたりは、たしかジェトロのビジネス短信などが細かいデータを掲載していたような気がします。ということで、ブログには書きませんが、明日はこのあたりの情報収集をする予定です。

本には書かれていない株主提案への実務対応の考え方② ー 株主にコンタクトするか?静観するか?

本日はテレワークでしたが、やはり仕事には身が入りませんでした。前からブログでも触れていますが、私の場合、人の目がないと副業に向けた準備・学習、読書、投資先企業の周辺情報整理に目が向いてしまい・・。週1回のテレワークは半休のようなものですね。家で真面目に仕事が出来る人を本当に凄いなと思います。

10月15日の日経新聞に環境関連の株主提案に対する機関投資家の賛成が増えているという記事がありました。環境への不十分な対応は、企業の将来収益に影響を及ぼす可能性があるので、適切な株主提案であれば機関投資家も賛同するケースが増えているということかと思います。機関投資家は環境団体ではないので、環境自体に関心があるわけではないので、念のため。

本題に入りたいと思います。前回、株主提案の要件について書きましたが、本日は、株主提案が出来る程度の相当の株数を持つ株主が出現した場合の対応の考え方について説明したいと思います。

まずそもそもとして、どの段階でそのような株主が判明するのでしょうか? ひとつ考えられるのは、大量保有報告書が提出された時点です。大量保有報告とは対象企業の株式を5%を超えて取得した場合、取得者は取得した旨を届出る制度ですね。これにより「会社の株式が5%以上も取得された」と分かるわけです。けど、5%って結構な株式数ですよね。そもそもそこに至る前までに株価は上昇するので、「おかしいな」と普通は気付くはずであり、大量保有報告の段階ではじめて気づいたという間抜けな会社は、現実には少ないのだと思います。

次に考えられるのは、株主が自主申告をする場合です。会社のドアをノックするといった方が分かりやすいかもしれませんね。「当社の株式を沢山取得したので、今後宜しくね」ということをIR部門に自己申告をする場合です。けど、これは株主が申告してくれない限り分かりませんよね。株式を沢山取得したら会社に挨拶しなければならないという決まりもないし・・

ということで、実質株主判明調査の時に分かるのがほとんどかと思います。企業は最低でも年1回は株主判明調査をするところが多いですが、この時にはじめてある程度まとまった株数を保有している見慣れない株主が判明するということです。会社には何ら主張・要望を言ってきていないが、沢山株式を保有している見慣れないサイレント株主がいるということです。会社にとっては気になりますよね。

この場合、会社はどういう対応をすべきでしょうか? 会社によって考え方は色々あるのだと思いますが、保有株数によって対応は変わってくるのだと私は考えます。例えば、発行済株式総数が2億株の企業があるとします。この会社の発行済株式200万株を新たに取得したのがアクティビストなどの物言う株主であれば、会社側から株主にコンタクトをしてよいのかも知れません。発行済株式総数に占める比率は小さいですが、200万株も保有されている場合には、とても気になるかと思います。とはいえ、会社側からコンタクトをしてもプロである投資ファンド株主が本音を語るとは限りませんが。

では、仮に10万株程度と僅少な株数であった場合はどうでしょうか? この場合には、当面は静観ということで足るように私は思います。全くの私見ですが。理由はシンプルで株数が少ないからです。「10万株も突如として持たれたのに静観でよいのか?」という意見もあるかと思います。けど、株主提案の権利があるということと、実際に株主提案のアクションをするということは別次元であることを理解することが重要と私は考えます。株主提案は単独では実現が困難なのです。続きは次回書きます。