中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

経産省「公正な買収の在り方に関する研究会」第1回 ー 研究会で今後議論されていく論点は?

本日は、仕事上の必要があり、経済産業省経産省)が11月に立ち上げた「公平な買収の在り方に関する研究会」の第1回会議の事務局資料をじっくりと読んでいます(本日は在宅勤務ですので、誰の目も気にすることなく、情報収集に時間をかけたり、副業の準備をしたり自由にやっています)。第1回の事務局資料は以下になります。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/001_04_00.pdf

この資料ですが、かなり有報な情報が分かりやすく盛り込まれていますね。日本の敵対的買収の裁判例のポイント、関係者へのインタビュー結果などもかなり詳しいです。とても参考になります。

さて、この会議ですが、11月18日に開催されたのは第1回目で、今後も月1回の頻度で開催されますので、今後論点はより絞られていくのだと思いますが、第1回の事務局資料で論点らしきものをいくつかピックアップすると次の内容かと思います。以下は事務局資料の一部になりますので、今後、論点はこれだに限られないと思いますので、この点はご留意ください。

  • 対抗提案や事業切り出しの提案の場面については、「真摯な提案には真摯に対応する」(具体的かつ実現可能性のある真摯な買収提案については、取締役の善管注意義務の趣旨も踏まえ、原則として、取締役会において取り上げ、真摯な検討を行うことが望ましい)という考え方が示されているが、買収提案についての一般論として、こうした考え方を適用できるかどうか(資料P32)
  • 市場買付けにおける取得目的・経営計画・取引条件等の情報提供や、買収者側の実質株主に関する情報提供の在り方について、どのように考えるべきか(資料P44)
  • 純粋に株主のための時間・情報・交渉機会等を確保するための対抗措置等について、「買収防衛策」という保身的な用語を用いることは正確ではないとの指摘もあり、従来の指針の定義の見直しも含め、用語法について改めてどのように考えるべきか(資料P46)
  • 「平時導入型」については近時、導入企業と機関投資家の間で評価が乖離し、対話を通じた相互理解が難しくなってきていることも踏まえ、あるべき姿について、再検討する必要がないか。また、現行指針では対象としていない有事導入型についても在り方を示すことで予見可能性を高めるべきではないか(資料P50)
  • 市場内買付けにより3分の1を超える株式を取得する場合でも、MoM決議による発動が認められる場面は限定すべきか。また、市場内買付けによる3分の1以下の株式の取得、もしくは公開買付けによる取得について、MoM決議による対抗措置発動の許容性をどう考えるか(資料P55)
  • 「有事導入型」について、取締役会決議限りでの導入・発動を肯定的に捉えるべき場面はあるか。仮にありうるとすれば、いわゆる高裁四類型のほか、どのような場合か(資料P56)

この1~2年の有事型の買収防衛策の裁判例で論点となっている内容が記載されていますね。これが全て議論されるのか、今後論点が追加されていくのかなどは、第1回会議の議事録や第2回以降の会議資料を見る必要があるかと思います。平時導入型のスキームも今後、見直しをする必要も出てくるかも知れませんね。第2回は12月1日開催の予定です。

次回、第1回会議の議事録または第2回会議の資料が掲載された時点で解説を深掘りして行きたいと思います。