中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

本には書かれていない株主提案への実務対応の考え方② ー 株主にコンタクトするか?静観するか?

本日はテレワークでしたが、やはり仕事には身が入りませんでした。前からブログでも触れていますが、私の場合、人の目がないと副業に向けた準備・学習、読書、投資先企業の周辺情報整理に目が向いてしまい・・。週1回のテレワークは半休のようなものですね。家で真面目に仕事が出来る人を本当に凄いなと思います。

10月15日の日経新聞に環境関連の株主提案に対する機関投資家の賛成が増えているという記事がありました。環境への不十分な対応は、企業の将来収益に影響を及ぼす可能性があるので、適切な株主提案であれば機関投資家も賛同するケースが増えているということかと思います。機関投資家は環境団体ではないので、環境自体に関心があるわけではないので、念のため。

本題に入りたいと思います。前回、株主提案の要件について書きましたが、本日は、株主提案が出来る程度の相当の株数を持つ株主が出現した場合の対応の考え方について説明したいと思います。

まずそもそもとして、どの段階でそのような株主が判明するのでしょうか? ひとつ考えられるのは、大量保有報告書が提出された時点です。大量保有報告とは対象企業の株式を5%を超えて取得した場合、取得者は取得した旨を届出る制度ですね。これにより「会社の株式が5%以上も取得された」と分かるわけです。けど、5%って結構な株式数ですよね。そもそもそこに至る前までに株価は上昇するので、「おかしいな」と普通は気付くはずであり、大量保有報告の段階ではじめて気づいたという間抜けな会社は、現実には少ないのだと思います。

次に考えられるのは、株主が自主申告をする場合です。会社のドアをノックするといった方が分かりやすいかもしれませんね。「当社の株式を沢山取得したので、今後宜しくね」ということをIR部門に自己申告をする場合です。けど、これは株主が申告してくれない限り分かりませんよね。株式を沢山取得したら会社に挨拶しなければならないという決まりもないし・・

ということで、実質株主判明調査の時に分かるのがほとんどかと思います。企業は最低でも年1回は株主判明調査をするところが多いですが、この時にはじめてある程度まとまった株数を保有している見慣れない株主が判明するということです。会社には何ら主張・要望を言ってきていないが、沢山株式を保有している見慣れないサイレント株主がいるということです。会社にとっては気になりますよね。

この場合、会社はどういう対応をすべきでしょうか? 会社によって考え方は色々あるのだと思いますが、保有株数によって対応は変わってくるのだと私は考えます。例えば、発行済株式総数が2億株の企業があるとします。この会社の発行済株式200万株を新たに取得したのがアクティビストなどの物言う株主であれば、会社側から株主にコンタクトをしてよいのかも知れません。発行済株式総数に占める比率は小さいですが、200万株も保有されている場合には、とても気になるかと思います。とはいえ、会社側からコンタクトをしてもプロである投資ファンド株主が本音を語るとは限りませんが。

では、仮に10万株程度と僅少な株数であった場合はどうでしょうか? この場合には、当面は静観ということで足るように私は思います。全くの私見ですが。理由はシンプルで株数が少ないからです。「10万株も突如として持たれたのに静観でよいのか?」という意見もあるかと思います。けど、株主提案の権利があるということと、実際に株主提案のアクションをするということは別次元であることを理解することが重要と私は考えます。株主提案は単独では実現が困難なのです。続きは次回書きます。