中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

本には書かれていない株主提案への実務対応の考え方➀ ー 株主提案って何?

上場企業では株主提案の数がここ数年で大きく増えているかと思います。けど、株主提案って何?という方も多いと思います。会社法などの本を読むとつらつらと文章が書いてありますが、読みにくいですよね。それに会社法の本は法的なことが細かく書かれていますが(当然ですが)、実務についてほとんど記載がないのが企業の実務担当者の悩みかと思います。特に、これまで株主提案の経験のない企業の担当者は不安なことも多いと思います。

ついては、今回から、書籍に書かれていない事項を中心に株主提案の実務について記載したいと思います。なお、会社法に書かれている細かい法的な事項には触れず、コーポレートガバナンス、資本市場の観点を踏まえての実務の考え方を大きな観点から書いていきますので、その前提でお読み頂ければと思います。

まずは、株主提案とは何でしょうか?簡単に言いますと、株主提案とは株主が会社に対して、株主総会の議題を提案する権利です。つまり、自分が保有する会社の株主総会で「取締役A氏を候補者に選任せよ」「定款の一部変更をせよ」というような権利です。では、誰でも言えるのでしょうか。例えば、会社の株を100株買った方がいて、この方が提案できるのかということです。

結論はNOですね。それが出来たら、100株程度しか保有していない「面倒な個人株主」が気の向くままに自由に提案をして、会社が困ってしまいますよね。総会の時期に面倒な個人株主から膨大な株主提案があったりして、総会実務担当者は徹夜が続き、倒れてしまうなんてことがおきます。

まず要件ですが、株数の要件があります。総株主の議決権の1%以上の議決権、または300個以上の議決権を持つことです。1単位100株の企業が多いかと思いますので、株数でいうと30,000株ですね。株主提案の対応には会社はコスト(人件費や招集通知の作成、法律事務所の起用など)がかかるので、提案をする株主もそれなりの株数を持つ株主に限定したということかと思います。

とはいえ、30,000株とはハードルは低いですよね。株価の低い企業であれば30,000株程度を保有する個人株主も当然いると思いますし、そもそも機関投資家は普通に30,000株以上は有するところです。株価が500円とすると30,000株を取得するには1,500万円あれば足ります。1銘柄に1,500万円は、お金に少し余裕のある個人であれば比較的容易に買える金額と思います。他にも6カ月前から有することも必要です。

では、この株主提案が出来る株主が出現した場合、会社はどうすればよいでしょうか?面倒な個人株主であったり、アクティビストが出現したケースです。ここは次回説明をしたいと思います。