少し前の週刊ダイヤモンドの記事にありましたが、ドメスティック業界の代表格である建設業界にアクティビストが入っています。
英国の投資ファンドであるシルチェスター・インベストメントが戸田建設、前田道路、奥村組に、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントが安藤ハザマの株式を取得しているといった状況にあります。
いずれも準大手クラスのゼネコンです。清水建設、大林組などスーパーゼネコンに入っているとの報道は目にしていません。
週刊ダイヤモンドの記事によれば、取得の背景は、ゼネコン各社がキャッシュリッチであるということです。
実際にどうなのか、先日の日曜日に各社の2019年3月期の有価証券報告書で保有するキャッシュの状況について調べてみました。以下は、ネットキャッシュの一覧になります。
なお、 ネットキャッシュは、「現金・現金同等物(キャッシュフロー計算書の数値)+有価証券+純投資目的以外の投資上場株式(いわゆる政策保有株式)-有利子負債」で算出しています。つまり、政策保有株式も加えております。また、政策保有株式の金額と保有銘柄は括弧内に表記しております。
- 安藤ハザマ 1,410億円(政策保有株式 191億円、58銘柄)
- 長谷工 1,122億円(政策保有株式 169億円 6銘柄)
- 戸田建設 1,181億円(政策保有株式 1,535億円、118銘柄)
- 前田道路 860億円(政策保有株式 138億円、20銘柄)
- 熊谷組 786億円(政策保有株式 90億円、11銘柄)
- 前田建設 427億円(政策保有株式 853億円、97銘柄)
- 西松建設 122億円(政策保有株式 668億円、75銘柄)
目につくのは、戸田建設の政策保有株式の金額の大きさです。戸田建設は買収防衛策も有しております。これだけの政策保有株式があれば、シルチェスターが狙うのも分かります。7月2日の大量保有報告書によれば、シルチェスターの戸田建設株式の保有比率は13.1%です。
戸田建設は2017年に買収防衛策を継続更新していますが、20%以上の株式取得にならないと発動できないスキームになっています(一般的なスキームかと思います)。従って、シルチェスターが20%取得した場合には防衛策を発動できるので、買収防衛策の有効性が争われるはじめての事例になるよう、個人的には、シルチェスターには20%超を取得して欲しいところです(多分取得しないと想像はしますが)。
では、次にネットキャッシュが、各社の総資産(2019年3月末時点)に占める比率を算出しました。資産全体の中でどの程度の割合を占めるかです。
安藤ハザマ 40.3%、前田道路 29.7%、熊谷組 22.2%、戸田建設 17.7%、長谷工 14.5%、前田建設 5.9%、西松建設 2.6%、
安藤ハザマは、上のとおり算定する限りでは、キャッシュ保有比率がとても潤沢といえます。資産の半分近くを余剰資産が占めるということです。
資産が大きいということは、総資産回転率が低下し、これがROAの低下、ひいてはROEの低下に結びつきます。
新聞報道によるとオアシスは3万株程度を保有しているというようです。3万株とは安藤ハザマの発行済株式総数の1%以下ですが、株主提案が出来る最低の保有株式数(300単元)です。現にオアシスは本年の安藤ハザマの株主総会で株主提案をしております(内容自体は、一見するとくだらない提案ですが、これには狙いがあると想像します)。
オアシスが今後株主価値向上に資する施策を積極的に取り組むことと、今後、どういう提案をしていくのかにとても関心があり、私はオアシスの取得後に、安藤ハザマの株式を購入しました。
さすがに1個人で安藤ハザマの株式30,000株を購入するには、資金が約2,000万円超必要になるので、現在の投資銘柄を全て売却しても少し厳しいので(安藤ハザマ銘柄の1点集中という極めてリスキーな考えもありますが)、オアシスの提案に今後機関投資家が追随し、株価が上昇することを期待して、私の想像するオアシスの株主提案の狙い、安藤ハザマのコーポレートガバナンス上の弱点について株主として考えるところを次回のブログで紹介したいと思います。