中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

経済産業省が買収防衛策の在り方の検討を開始しますー「公正な買収の在り方に関する研究会」の立ち上げ

この1、2年で有事型の買収防衛策に関する事案、裁判例が増えていることはご存知の方も多いと思います。ブログでも何度か触れてきました。最近の事例を踏まえて経済産業省金融庁あたりで買収防衛策の在り方の議論を開始しないのかなと思っていましたが、経済産業省で開始するようですね。次のとおり11月18日付で経済産業省が「公正な買収の在り方に関する研究会」を立ち上げました。

既に第1回会合が開催されたようです。第1回会合の事務局資料は以下にあります。

第1回 公正な買収の在り方に関する研究会(METI/経済産業省)

経済産業省は2005年5月に 「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を策定、2008年6月には 「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(企業価値研究会)などを策定、公表してきました。しかし、その後、敵対的買収に対する対抗措置発動の事例も10年以上なかったことから、これら指針の効力が疑問でしたが、最近の事例を踏まえ検討を開始するということですね。

事前警告型の買収防衛策に対しては、ほとんどの機関投資家は反対する一方、有事型については、機関投資家はケース・バイ・ケースで判断するとしています。どういう判断基準で賛成するのかを機関投資家に聞くと、「敵対的買収者と企業サイドのいずれが企業価値を向上させるかで賛否を決める」という回答をします。「そりゃそうだろう」と思いますが、どういう有事型であれば機関投資家は賛同するのか明確な基準がなく、企業は判断に迷うところも多いかと思います。株主総会過半数の賛同があればよいのか? 株主総会の賛同さえあれば良いということであれば、全てを株主任せで良いのか、企業経営者として何も考えていないようにも思えます。

今回の研究会の結果は、今後の事前型の買収防衛策のあり方にも影響を及ぼすかと思います。研究会の成果については、来年の春頃までに整理するようです。来年、6月の定時株主総会で事前警告型の買収防衛策の更新期限を迎える企業などは、この研究会の議論の行方に十分に留意する必要があるように思います。

仮に事前警告型を廃止するとした場合には、有事型を社内で十分に検討することになると思いますが、その際の有事型のスキームについては、この研究会の議論を踏まえた内容にする必要があると思います。上場企業、アクティビスト、機関投資家ともに関心を持つべき研究会と私は思います。言われなくてもアクティビストは当然、関心をもって見るのだと思いますが。

 今後、この研究会の動きや会合での論点はしっかりとウォッチして、このブログで記事を掲載して行きたいと思います。企業の実務者向けに少し難しい内容になるかも知れませんが、なるべく分かりやすく、平易な文章での記事の掲載を心がけますので、ご関心のある方は、是非とも今後のブログの記事をご覧頂ければと思います。