中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第14回) ー 取締役会の実効性評価。投資家の満足する手法は?

本日は、久しぶりに物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方を書きたいと思います。前回、第13回を書いてからだいぶ日が空いてしまいましたが(参考までに前回と前々回を最後に再掲しています!)、11月に入り、来年の定時株主総会を意識して会社、物言う株主双方ともに準備を開始する時期かと思いますので、実務目線での話をして行きたいと思います。

本日は、取締役会の実効性評価です。取締役会の実効性評価は、2015年のコーポレートガバナンス・コードの制定の際にコードに盛り込まれました。規定としては次の内容です。

補充原則4-11 ③ 取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

コーポレートガバナンス・コードは、社外取締役を含む取締役会を改革していくことで、企業の稼ぐ力をつけることを狙いとしています。従い、肝心な取締役会が実効性があるかどうかはとても大事であり、機関投資家の関心の高い事項の1つでもあります。

ではどういう点を投資家は気にするでしょうか?ポイントは2つあります。まず1つは、実効性の評価手法です

多くの企業は、評価を社内で自前でやっていることが多いかと思います。役員会事務局あたりが、アンケートを全取締役に配布して、書面ベースで回答をもらうやり方です。質問事項をいくつか書いて、それぞれに「○」「×」などの回答をもらい、集計をしているケースです。単なる書面での回答だけで終わるところもあれば、これに加えて取締役会の議長などが個別インタビューを実施することもあると思います。けど、私の感覚では、機関投資家はこの手法はあまり評価していないように思います。

だって自前でやるとなると、各取締役は正直に答えられないですよね。アンケートについても、仮に匿名の回答であっても、忖度をして差しさわりのない回答をするのだと思います。分別のある中高年の社会人なら当然の所作です。

というのも取締役を選んでいるのは、社長をトップとした取締役会です。社長や議長より役職の低い、専務や常務クラスが「当社の取締役会は議論が十分になされていない」などと馬鹿正直に回答するインセンティブは、普通はまずありません。これは社外取締役も同じです。社長や議長を批判することにつながり、任期満了とともに来年は選任されない可能性大です。また、社外取は社内情報に疎いのが常であり、そういう中で取締役会での議論が不十分であるというような回答をした場合には、議長から「それは無知な貴方の能力が低いのでは?」と疑念を持たれ、今年でお役御免という事態にもなりかねません。

社外取の平均的な年収は、たしか800万台ということが前に新聞に掲載されていました。結構な額ですよね。だって活動するのは基本的に取締役会への参加であり、毎月1回の参加で年12回とすると、時給ベースにすると、いかに割の良い、美味しい仕事かが分かります。年収が5000万円以上などの富裕層でもない限り、この地位を失いたくないというのが、普通の感覚かと思います。ということで自前での評価は実施したところで、本当に実効性が適切に評価されているのか機関投資家からしたら良く分からないということになるのです。

では、自前が駄目となるとどういう手法で実施すればよいでしょうか?これは次回説明したいと思います。