先週末に海洋鉱物資源の掘削関連、地熱発電関連でのウォッチ銘柄の整理をしました。2050年の再生可能エネルギー5割に向けて今注目を浴びているのは風力発電ですが、日本は欧州との自然の違いもあり、また、風力発電(浮体式)の技術的課題も多く、どこまで風力発電が実現可能か疑問視する声もあるかと思います。
そもそも政策を立案した役所のコアメンバーの大多数も、あと20年もすれば、サラリーマンの定年退職を迎えており、その時点では実現の可否の責任を負う立場にないことなどを考えると将来、「風力発電はやっぱり駄目でした」ということも可能性としてはあるので、地熱・原子力発電の動向にも注意を払うべきかなと考えています。
さて、前置きが長くなりましたが、先日、サイボウズが取締役候補者を社内公募で選定し、株主総会で決議されたようです。報道によれば新卒入社2年目の社員が取締役に選任されたりしたようですが、入社2年目では取締役の法的意味の理解は出来ないし、コーポレートガバナンスで求められている取締役の機能は果たせないように思います。サイボウズの規模では採用は出来ない(であろう)東大や東工大など一流大学卒のエンジニア人材が将来欲しいということもあり、学生へのアピールもあってこういう公募制度にしたのかなと想像しています。
さて、そんなサイボウズですが、株主総会の招集通知などを読むと社外取締役はゼロのようですね。そして、その理由を見て「なるほど」と思いました。「社外取締役を選任しない理由」として、次の4点をあげています。
- 社内で徹底的に情報を共有していると同時に「質問形式」の文化を形成しており、社員同士で監視して意見を言い合える状態にある
- キャリア入社や複業経験者が多く、社外からの視点を持ち込めている
- 様々な部門で社外の方にアドバイザーを務めていただいており、社外からの意見を日常的に取り入れている
- 取締役会に諮る前に、すでにオープンに議論がなされている
つまり、日頃から社員全員が取締役の機能を果たしており、あえて社外取締役を置く必要がないということのようです。株主総会の書き起こしを見ると、株主総会で議長の次のような発言があります。
ほとんど全ての情報が共有されて、日々議論されている。こういう組織を作っている。こういう組織を作ると、敢えて社外取締役は必要ないよねっていうのが、私たちの考え方です。むしろ、取締役会を密室で作って、社外から何人か、社外取締役を連れてくる。それで本当にガバナンス、効かせられますか。月 1 回の限られた取締役会の時間、限られた人、限られた情報の中で、本当にいい助言ができますか。これぐらいオープンにしたほうが、もっと効率いいんじゃないですか。それが、私たちがイメージしている世界なんです。これが、サイボウズが社外取締役を置かない理由です。
社内のことを知らない社外者を増やして意味はあるのかという議論は昔からあります。経団連もたしか2010年頃には社外取など不要であるという意見をいっていたかと思います。経済産業省・金融庁のコーポレートガバナンス改革で社外取締役は増やせという方向になっていますが、社外取締役を増やす必要の要否は企業の規模感・業種によるのだと思います。
サイボウズのように社外取締役は不要と思う上場企業も数多くあると思いますので、そういう企業は、是非ともサイボウズのこの考えを参考にすると良いかと思います。コーポレートガバナンス・スコードで社外取締役3分の1以上ということが求められても、「3分の1が必要ない」ということであれば「エクスプレイン」すれば足るのです。