中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

個人株主のための株主総会での企業価値向上の質問事項①ー株価を意識した経営は取締役会で分析できているか?

3月期決算企業の株主総会シーズンが終わるまでの間、最近のコーポレートガバナンスの動向等を踏まえて、投資先企業の中長期での企業価値向上に資すると思われるコーポレートガバナンスに関する質問をブログで不定期に掲載していきます。投資先企業の株主総会に出席する予定の個人株主の方でご関心がある方は、是非ご参考にして頂き、投資先企業の株主総会で質問する際にご活用頂ければと思います。

さて、第1回目は最近のホットな話題として、株価を意識した経営に関する質問です。
ブログでは何度か紹介していますが、東証がプライム・スタンダード企業の双方に株価向上を求めています(詳細は以前にブログで書いた記事を最後に再掲していますので、ご覧下さい)。これに関して、具体的な質問事項を考えると以下のような内容になるかと思います。

  1. 東証要請の株価向上を意識した取組みの開示に関して、取締役会での分析が求められているが当社では既に取締役会で議論しているか
  2. 特に資本収益性(ROE)と市場評価(PER)について取締役会で現状をどう分析しているか。現状は低いという認識か否か
  3. 上記1や2について取締役会では社外取締役からはどういう指摘や意見が出たか
  4. 資本収益性・市場評価の改善に向けた方針・具体的な目標は取締役会でどう決定しているか
  5. 当該目標への具体的な取り組みや施策の実施時期について取締役会ではどういう結論になっているか。また、1~5についてどのタイミングで開示するのか

これはいずれも東証が公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」に記載の内容です。

PBR(株価純資産倍率)向上に関しての現状の認識、目標の設定、目標達成に向けた施策を取締役会で分析し、計画を策定し開示せよということです。ポイントは、社長等の執行サイドで勝手に決定するのではなく、必ず取締役会で決定せよという点です。

2015年のコーポレートガバナンス・コードの策定にはじまった一連の日本のコーポレートガバナンス改革は、企業の稼ぐ力について、社外取締役を活用して取締役会内部から変革していくというのがベースにあり、株価向上施策も執行サイドが適当に決めるのではなく、社外取締役のいる取締役会でしっかりと議論せよというのが趣旨です。

今回の計画策定・開示の様式は企業に任されています。できる限り速やかな開示をすることが東証から求められています。2023年3月期の通期決算後の決算説明会資料で開示する企業が多いのではと想像はしています。本決算は取締役会で議論する企業が多いと思いますので、このタイミングで上記の東証の要請をセットで議論することを多くの企業は考えるのかなと思います。

ということで、上場企業にとって最新のホットな話題であり、企業各社が一番頭を悩ませている株価意識の経営に関する質問を株主総会ですると面白いと思います。