中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第15回)ー社外取との面談の要請

今週の日経ビジネスに「ボード3.0の時代」というタイトルの記事がありました。社外取の役割を再考するということです。社外取に求める役割も変化していますね。

今回は、第15回ということで、社外取との面談要請について書いてみたいと思います。前回の第14回の記事の冒頭でも少し触れましたが、アクティビストがサッポロホールディングスの社外取に対して書簡を送付していますが、このように物言う株主が社外取の意見や面談を求めるケースが今後益々増えるのだと思います。そもそもコーポレートガバナンス・コードで社外取との面談について次のとおり規定されています。

補充原則5-1① 株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部、社外取締役を含む取締役または監査役が面談に臨むことを基本とすべきである。

この規定ですが、実は2021年に改訂がされており、改訂前の文言は「株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で経営陣幹部または取締役(社外取締役を含む)が面談に臨むことを基本とすべきである」です。この2つの違いはお分かりでしょうか?

改訂前は「取締役(社外取締役)」でしたが、改訂後は「社外取締役を含む取締役」になっています。同じような表現ではありますが、意図するところは実は大きく違うと私は思います。これまでは「社外取締役が面談してもよいよ」という意味合いでしたが、改訂により、「社外取が社内取と同じ立場で面談せよ」という意味に大きく変化したのです。これにより、社外取との面談を求める物言う株主の要請について、会社は簡単には無視出来ないことになったと言えます。

コーポレートガバナンス・コードを全て遵守しています」ということをコーポレートガバナンス報告書の冒頭でうたっている企業(ほとんどの企業はそうだと思いますが)は、遵守している以上は注意する必要があります。遵守しているということは、社外取との面談も前向きに実施するということを表明していると言えると思います。

企業には通常、IR担当取締役がいます。この方は、投資家とのお話には慣れていると言えますが(もっともIR担当役員でも、話がめちゃくちゃ下手な方もいますが)、社外取は対外的に話をすることに必ずしも馴れている人ばかりではありません。他社での経営トップ経験者であれば別ですが、社長経験のない技術・生産一筋、情報システム一筋、経理一筋などの社外取の方だとおしゃべりがかなり下手な方も多いと思います。あくまで私の証券会社時代の経験です。これらの方々は、社内向けの仕事一筋の方々ですので、切った張ったの交渉経験もないことがその大きな要因です。おしゃべりの下手な社外取が面談に出て、しどろもどろの話をしたら、物言う株主につけこまれる材料を与えることになります。物言う株主にとっては格好のターゲットと言えます。

投資先企業のコーポレートガバナンス報告書に「全て遵守しています」とうたっている企業は社外取の面談を求められた場合、どのように対応するか良く検討しておいた方がよいかと思います。「社外取の日程調整が難しいので面談は難しいです」という理由は、もはや通じない時代になってきているのだと思います。予め投資家との面談対応する社外取を決めておき、その方に十分な訓練をするといったことが必要になるように思います。