中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第14回) ー 取締役会の実効性評価の大事な点は?

昨日の日経新聞投資ファンドの3Dインベストメントがサッポロホールディングスの社外取に改革主導を果たすことを求める書簡を送付したとの記事がありました。社外取と投資家との面談はコーポレートガバナンスの流れに沿ったものでありますので、何ら違和感はないのですが、会社としては大変かと思います。今後、アクティビストが社外取に課題を投げかけ、対話を求めるという手法が増えるかと思いますので、アクティビストに株式を持たれている企業は、自社でも同様の事態が起こることは念頭においた方がよいかと思います。近日中にブログでも触れたいと思います。

さて、前回、取締役会の実効性評価において、自前で行う実効性評価はイマイチであり機関投資家の評判があまり良くない(であろう)ということを書きましたが、今回は続きになります。自前でやっても、社長に生殺与奪権を握られている社内取・社外取が、仮に取締役会の実効性に問題があったと考えても馬鹿正直にそれを語るインセンティブはありえないため、コーポレートガバナンス報告書等で「実効性あり」と開示しても、機関投資家としては「本当かい?」となります。

ではどうすればよいかというと、シンプルですが、外部専門業者を実効性評価者として起用するのがよいかと思います。外部業者を起用して、アンケートから取締役各位へのインタビューまでの一切を業者に任せるのです。この外部業者起用のポイントは取締役が、比較的本音で語ることが期待できるということです。社内の人には話は出来ないが社外の方であれば心を許し、本音を語ることが出来ると思います。外部専門業者は、他の多くの企業の取締役会の実効性評価を実施していますので、取締役に納得のいくアドバイスもしてくれるはずです。

ただし、この手のインタビューは塾の講師と一緒でインタビュアーの力量が全てです。従って、たいした経験もなかったり、スモールからミドルサイズの上場企業しか扱ったことのないインタビュアーであれば、ラージサイズ(=株式時価総額の大きい)の企業には役不足と思います。従い、会社としては、誰がインタビューアーになるのか、そしてその人物の経験を把握することも大事です。また、ラージサイズの企業の社外取であれば、一流企業の経営トップ経験者も多いと思います。となると、必然的に超一流大学卒の社外取が多いので、そういったハイレベルの方と遜色のない学歴をインタビューの方は有していることも結構大事です。

そして、実効性評価で大事なことは、評価の結果として判明した課題と課題の解決に向けた取組みを正直に開示することです。課題のない会社はないです。折角、プロの業者を起用して評価したのですから、何らかの課題があることは分かるはずであり、それを開示して欲しいというのが機関投資家の要望です。

課題というのは、中長期な企業価値の向上を目指す上での現時点での課題です。そして、この課題をどう解決していくのかも機関投資家が知りたいところです。課題は必ずしも1年で解決できるものではありません。その場合には、解決に向けた取組みを1年目、2年目というようにして開示を継続することでよいと思います。

「課題はありません」という会社より、課題を開示した会社の方が機関投資家には嬉しいのだと思います。課題の開示を恥ずかしいと考える企業もあるかも知れませんが、その考えはあらためた方がよいと思います。ただ、課題が多すぎる会社の場合、全部開示すると機関投資家がかえって心配になるので、そのあたりの配慮は必要になるとは思います。課題と解決に向けた取組みを開示することによって、万一、アクティビストが会社の課題を理由に株主提案をしても、「いま会社は課題の解決の途上にある」とことにいて他の機関投資家の理解を得ることも出来るのだと思います。ということで取締役会の実効性評価については、これで終わりたいと思います。