中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

「四半期決算短信」の開示の任意化案②ー 四半期決算で企業が充実すべき情報は?

前回、記事に書きました経産省の「公正な買収の在り方に関する研究会」の第2回会議は明日開催されます。第1回の会議の議事要旨が先日、公表されました。まだ細かくは読めていないのですが、各委員からの貴重な意見が記載されている模様で、明日精読する予定です。週末にはブログで第1回会議の議事要旨のポイントを紹介したいと思いますので、ご関心のある方は、是非ご覧頂ければと思います。

さて、本日は、前々回に書いた四半期決算短信の開示の任意化案の続きを書きます(前回の記事は最後に再掲しています)。前回は、四半期決算短信の有無を議論する前に、現行の四半期決算短信の開示情報が「しょぼい」という話で終わりました。では、「企業はどうすればよいか?」ということを今回はお話をしたいと思います。

まず投資家が四半期決算で知りたいのは何かというと、四半期の数値そのものではないと言うことです。決算短信の最初のページの一番下に通期の業績予想を記載しています。この数値を達成できるかどうか否かに投資家は関心があります。四半期決算で知りたいのは、現時点でこの通期予想が予定どおりに進んでいるか否かなのです。

通期の業績予想を立てる時に売上高、営業利益等を算定したベースとなる事業戦略・販売戦略等があるはずです。この戦略が期中の現時点で予定どおりか否かを投資家は知りたいのです。その結果として、決算短信の数値がついてくるということです。仮に4ー9月期の6ヵ月間の売上高の進捗率(=6ヵ月間の売上高÷通期売上高予想(%))が低い場合でも、前提とする年間の戦略にブレがないのであれば、それを開示するべきなのだと思います。

もっとも決算短信の様式は東証で決まっていますので、自由に記載するには限度がありますので、そういった内容は決算短信以外の決算補足資料や別の何らかの説明資料に開示することになるのだと思います。こういう手間をかけることを怠り、短信の様式に沿った数値のみを開示していると、四半期決算の開示の都度、株価が上がったり、下がったりして、その間隙をついてアクティビストが入り込むといったリスクも出てくると思います。

一方で、中長期株式投資を志向する個人投資家の方には、是非とも投資先企業のIR部門に四半期決算の都度、質問をすることをお薦めします。12月16日に四季報が出た後、四季報の内容を読んで、投資先銘柄のIR部門に進捗にブレはないかを細かい質問すると色々と気づきもあるし、投資先企業の勉強にもなるかと思います。

ちなみに、私は毎四半期決算発表の都度、投資先銘柄(そこそこの金額の投資をしている数銘柄に限定して)のIR部門に必ず問い合わせをして、ブレがないかを確認するようにしています。万一、満足の行く回答をしない企業であれば、株主総会に出席して議長に質問をするという行動に移せばよいのだと思います。