中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 (第3回 )

検討会の第3回が9月8日に開催されました。毎度のことながら事務局資料は次のとおりとなります。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai3/siryou3.pdf

この検討会は議事録が公表されないのですが、前回の第2回会議での意見も最初に数ページ掲載されています。ただし、各委員の意見なので流し読み程度で足ると思います。資料の中では、多くの企業の知財部門は「特許出願・権利化」「知財係争リスクの極小化」の重要度・実施度が高い一方、経営に資する戦略的な知財活動については、重要度・実施度が低い傾向にあるという内容が記載されています。

第3回では大きく3点が議論されたようです。1つ目は、社内において知財投資・活用戦略の実行のためのガバナンスとして「社内の幅広い知財の投資・活用戦略の実行に向けた社内体制をどのように構築すべきか?」「取締役会が知財投資・活用戦略の実行を適切に監督できる体制・環境をどのように整備すべきか?」です。2つ目は「日本企業の知財投資・活用が進んでこなかった背景について」で、3つ目は「知財投資・活用戦略の開示の在り方について」です。

第4回会議は9月22日に開催されコーポレートガバナンス報告書への対応が議論されるようです。

SBIの新生銀行に対するTOB ー 新生銀行の取締役会の賛同は得ておりません

既に大きく新聞報道のとおり、SBIホールディングスによる新生銀行に対するTOBについて、今回から記事を書きます。しかし、最近の国内の事例を見ると、事業会社同士の同意のないTOBや敵意的TOBは本当に増えていますね。

ニトリの島忠の買収(最終的に島忠は賛同しましたが)、コロワイド大戸屋の買収、日本製鉄による東京製綱の買収、オーケーによる関西スーパーの買収提案などこの1年で大きく増えています。背景には、機関投資家の議決権行使結果の個別開示、安定株主の減少、敵対的TOBを引き受ける証券会社の存在などを背景に、敵対的TOB企業価値向上の手法の1つとして世間で認識されてきたということなのだと思います。

さて、SBIのケースですが、存じの方も多いかと思いますが、TOB価格は1株2000円(約39%のプレミアム)、買付期間は9月10日から10月25日までです。既にSBI新生銀行の株式の19%を保有しており、出資比率を48%まで引き上げる予定ということです。内容は次のとおりです。

https://www.sbigroup.co.jp/news/pdf/2021/0909_a.pdf

これを受けて、新生銀行は次のプレスを出しています。

https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/210909_announcement_j.pdf

「本公開買付けは当行取締役会の賛同を得て実施されたものではありません。本公開買付けに関する当行の考え方に基づく当行の対応につきましては、本公開買付けの公開買付届出書の内容その他の情報を分析・検討したうえで、早急に株主の皆様にご案内いたします」とあります。

TOBを受けた場合、対象企業(新生銀行)は10営業日以内に意見を表明する必要がありますので、今後、新生銀行は賛同、反対、中立等の意見を公表することになります。反対の場合には、敵対的TOBになりますので、ホワイトナイトによる救済または買収防衛策の導入を新生銀行は選択するのでしょう。急遽ホワイトナイトを探すのは難しいと思いますので(ホワイトナイトも上場企業である場合、新生銀行を助ける合理性のある理由を自社の株主に説明する必要あり)、取締役会決議で買収防衛策を導入し、臨時株主総会を開催して買収防衛策の賛同を得るという可能性もあるかも知れません。以下、いつものように経緯を記載します。

第2四半期決算短信の読み方 ー 個人投資家のファンダメンタル投資の視点から

最近、アクティビスト、買収防衛策、コーポレートガバナンス関係の記事が続いていますが、本日は話題を大きく変えて、株式投資をする上での決算短信の読み方のポイントを記載します。機関投資家の方にはあまりにも初歩的過ぎることですが、個人投資家の方に参考になればと思います。

3月期決算企業は、第1四半期(1Q)発表も終わり、あと1~2ヵ月で第2四半期決算の発表がはじまり、第2四半期決算短信が開示されますが、個人投資家にとって読むべきポイントはどこかといいますと、大きくは2点かなと思います。

1点目は4-6月(1Q)、7-9月(2Q)の3ヵ月に分けての損益の分析です。四半期決算短信は累計の業績が開示されます。つまり、第2四半期決算短信であれば、損益は4-9月の6ヵ月の累計の損益(売上高、営業利益、経常利益など)です。この6ヵ月の数値で前年同期比で伸び率を見る方が多いかと思いますが、これは不十分で7-9月の3ヵ月の数値を見る必要があるかなと思います。

やり方は単純で第2四半期決算短信の累計数値から、第1四半期決算短信の数値を引き算をすればよいのです。これにより7-9月の3ヵ月の数値を出し、同様に前年の3ヵ月の数値も算出し伸び率を比較するのです。これにより、前年比較だけでなく、直近の四半期からの数値の変動を把握できます。企業によっては決算短信の最後のページに細かい数値を記載している場合もあるので、それを利用してもよいかと思います。

2つ目が今期の業績予想値から見た数値の進捗率の把握です。決算短信の最初のページの下のところに今期の業績予想が掲載されています。売上高、営業利益、経常利益などの数値です。企業が通期見通しを上方修正又は下方修正することで株価は大きく変動するかと思いますが、それに先立ち、四半期毎の進捗を計算して把握します。

つまり、1Qの3ヵ月の進捗率、6ヵ月の進捗率、9ヵ月の進捗率です。ただし、単年度の数値の進捗率を見てもあまり意味はありません。例えば、下期で利益が増える企業もあり、また、そうでない企業などもあるので、過去の進捗率と照らし合わせることが必要かと思います。

以上、個人投資家にとっては、四半期の3ヵ月毎の数値の分析と進捗率の分析が四半期決算短信を見る時のポイントですが、期間としては面倒ですが、過去10年分の数値をエクセルで四半期毎に纏めて分析することが望ましいと思います。そうすることで、その企業の伸び率も細かく分かるほか、進捗率のクセも分かります。それ以上に重要なのは、株主総会で議長に的確な質問をできますし、IR部門に問い合わせをする際にも鋭い質問が出来るかと思います。

私の場合、投資先が中小型銘柄のため、個人投資家向けの説明会を開催していないところがほとんどですので、遠慮なく投資先企業のIR部門にメール等で時々質問をすることもありますが(多分「面倒な奴」と思われているのかも知れませんが、失礼のないような丁寧な質問とすることは常に心がけています)、企業の担当者よりも深い分析をするなど「用意周到」「準備万端」が大事かなと思います。

非財務情報の開示指針の検討 ー 環境、人的資本、知的財産等の開示のあり方

サステナビリティ課題の取組みの開示をはじめ非財務情報の開示について、グローバルでどうすべきか検討が進んでいる状況ですが、環境の開示、人的資本の開示などはじめ日本は遅れている状況にあります。その理由は簡単でグローバルの基準制定が欧米中心に進んでおり、日本はその基準作りの機関や会議のメンバーに入れていないからです。

さて、その日本ですが、経済産業省が6月に非財務情報の開示指針研究会というものを立ちげています。これまで合計3回開催されています。この研究会は何をするのかということですが、次が目的とされています。

  • 近年、企業の情報開示において、非財務情報の重要性が世界的に高まる中で、大企業を中心とした国内外の企業は、各種媒体を通じて非財務情報の開示に取り組んでいる
  • また、既存の指針設定主体による組織統合の動きや共同声明の発出のほか、IFRS財団による国際サステナビリティ基準審議会の設立に向けた動き等の活発な動きが続いているように、指針をめぐって世界的な動向変化の最中にある
  • こうした中、非財務情報及びその指針に関する世界的な動向に関する情報の共有を行いながら、我が国や世界において質の高い非財務情報の開示を実現する指針のあるべき方向性の検討を実施することが重要
  • 本研究会においては、非財務情報の開示指針の方向性について認識の共有を行いながら、非財務情報の利用者との質の高い対話に繋がる開示、及び開示媒体の在り方について検討する

私が太字でハイライトした箇所がポイントで、要は非財務情報の開示を求められても、「何をどの程度開示するのか分からない」という上場企業が多いので、開示のガイドラインを策定しようということかと思います。

第1回、第2回の会合では、気候変動に関する海外の開示の動きを委員全員でお勉強をしたり(情報共有)したようですが(事務局資料を見る限り)、9月1日開催の第3回会合では人的資本の開示のあり方が議論されたようです。人的資本というと、本日の早朝に私がブログで紹介しました経産省の「人的資本経営の実現に向けた検討会」もあり、こちらの会との関係が不明なところはありますが、第3回会合の事務局資料は次のとおりになります。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/hizaimu_joho/pdf/003_03_00.pdf

グローバルでの人的資本の開示のルールなどがあるようで私は初めて知りました。この非財務情報の開示指針研究会は、本年10月中旬に中間報告書を取り纏め・公表する予定のようです。

どういう結果が公表されるかは分かりませんが、企業として念頭に置くべきは、上場企業の最重要なステークホルダーである機関投資家が非財務情報の開示内容を見て、企業価値向上につながると判断するか否かです。企業のゴーイングコンサーンの下、非財務への企業の取組みがその企業の将来フリーキャッシュフローを増大させ、また、株主資本コストを下げることに繋がると機関投資家(長期・超長期保有の投資家です)が判断するに足る情報開示であることが大事です。とすれば、まずは機関投資家が何を求めているかを知ることが重要です。

とはいいながらも、機関投資家はやはり単年度での投資利回りをアセットオーナーと約束していることは紛れもない事実であり、非財務情報だけを投資において重視しているわけでは全くありませんこの点は多くの企業のCSR部門の方の理解が乏しいところかと思いますが(企業価値の算定などを知らないため)、ベースをしっかりと理解することが大事です。今後もブログで情報のアップデートをしていきます。

人財ガバナンスの動き ー 経産省「人的資本経営の実現に向けた検討会」

9月4日号の週刊東洋経済で「すごいベンチャー100」という記事が掲載されていました。大型上場予備軍となる可能性もあるかも知れませんので、株式投資のネタとして目を通したいと思います。本日は在宅勤務のため、昨日は沢山の資料のコピーを自宅持ち帰り、最近のホットな話題である知財ガバナンス、人財ガバナンスの情報インプットに本日は集中的に時間を費やす予定です。

知財ガバナンスの動きは、先日より情報を追いかけていますが、今回は、人財ガバナンスの動きについてごく簡単に紹介したいと思います。本年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードで、次の規定が新設されました。

3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。 

これを見て、どうしたら良いか悩まれている上場企業の実務担当の方も多いのではないでしょうか? ポイントは「資本」という言葉です。無形資産である知的財産(ノウハウを含みます)と人的資本について、これらを費用として考えるのではなく、企業価値を創出する投資として経営経営戦略と絡めて投資家に開示すべきという点です。なかなか難しいですよね。

人的資本については、社内外研修会の参加人数や従業員1人当たりの研修費などを開示している企業は、これまでも多く見ました。けど、必ずしもそれが経営戦略と結びついた開示となっているかというとそこまでは読み解けない開示が多いのが現状です。企業側としては、企業経営の前提は「人」ですので、社内外の研修会への参画は、全て企業経営や経営課題の解決に資することを目的としているのですが、それが機関投資家家などの社外の人にうまく文章で開示できていないということです。

知的資本については、先日ブログで検討会が開始されたことを紹介しましたが、人的資本についても経産省で検討会が開始されています。人的資本経営の実現に向けた検討会で、開催趣旨は「人的資本経営の実現に向けた主要課題について、今後の具体的な対応の方向性や、各ステークホルダーが実施すべき具体的な取組を議論・検討する」とあります。7月1日に第1回会合、8月16日に第2回会合が開催されています。

現時点ではまだ意見は集約されておらず、委員が色々と意見を述べているところです。ちなみに、この検討会の座長は伊藤レポートで有名な一橋大学の伊藤氏です。実務を知らないのが大学教授の常ですので(実務経験があれば別ですが)、どこまで世の中の実態を把握されているのかは個人的には甚だ疑問もありますが、委員には企業実務担当者も入っているし、ブラックロック・ジャパンなどの機関投資家も入っているので、今後注視すべき検討会になるとは思います。知財ガバナンス、人材ガバナンスについては、引き続き、ブログで情報を掲載していく予定です。

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 (第2回 )ー 知財投資・活用戦略の開示の在り方について 

本日の日経新聞の経済教室に企業統治に求められる視点として、会社法、金融法の大家である東大名誉教授の神田秀樹さんの記事が掲載されていました。プライム市場に求められる事項などが簡潔に纏まっています。

さて、「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」の第1回会合が8月6日に開催されているところですが、8月26日に第2回が開催されました(第1回会合の時の記事は最後に再掲させて頂きます)。第2回での事務局資料は次のとおりです。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai2/siryou3.pdf

第1回会合の意見が掲載されており、前回は色々と意見が出て終了した模様ですね。一言で纏めると、日本では知的財産の重要性や扱いが低いため(多くの製造業の知的財産部は社内での地位が結構低いのが現状)、無形資産が今後の企業価値の要諦となるためには、知的財産も経営に結び付けて行く必要ありといった意見交換がされたようです。

第2回の会合では、「日本企業の知財投資・活用が進んでこなかった背景をどう考えるか? 」「どのような知財投資・活用戦略の開示を促すべきか?」「社内において知財投資・活用戦略の実行をどのようにガバナンスすべきか?」といったことが討議のテーマだったようです。この手の会議は、色々な意見が出るので、途中で出される中間整理や方向案を見ておけば足るのですが、今後のスケジュールは13ページに次のとおり記載されています。

  • 第3回(9月8日): 知財投資・活用戦略に盛り込まれるべき内容・開示の在り方②、 知財投資・活用戦略のガバナンス体制の在り方、 企業からの事例紹介・投資家の視点
  • 第4回(9月22日): コーポレート・ガバナンスに関する報告書への対応
  • 第5回(10月上旬): 知財投資・活用に関する指標の在り方①、知財調査専門会社の活用の在り方
  • 第6回(10月下旬):知財投資・活用に関する指標の在り方②
  • 第7回(11月): ガイドライン骨子案、これまでの議論の整理
  • 第8回(12月): ガイドライン

コーポレートガバナンス報告書の開示が本年12月末までとされているところ、第4回のコーポレートガバナンスに関する報告書への対応で大きな方向性が示されるのだと思います。ここが1つのポイントになると思います。勿論、この研究会の公表するガイドラインに企業は従う義務はありません(ソフトローです)。

経産省はこれまでも、コーポレートガバナンスに関して色々なガイドラインを策定してきましたが、正直、まともに読んだことはないという上場企業の方がほとんどとかと思います。まあその程度の位置づけのものではあるのですが、何事も幅広く情報を収集することが物事の判断には重要かと思いますし、知財ガバナンスという言葉も最近になって言われてきましたので、実務担当者は第1回・第2回会合の事務局資料には、あまり時間をかけずさっと目を通された方がよいのかも知れません。私は、明日オフィスでプリントアウトして、一度きちんと目を通す予定です。面白い内容があった場合、ブログで追加記事を書きたいと思います。

 

オーケーの関西スーパーに対する買収提案 ー 「公正なM&Aの在り方に関する指針」

「公正なM&Aの在り方に関する指針」はご存じでしょうか?2019年6月28日に経済産業省が制定した指針で、MBOや上場子会社の非公開化におけるベストプラクティスを提示したものになります。

https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628004/20190628004_01.pdf

しかし、MBOや上場子会社の非公開化だけにとどまらず、利益相反構造等が問題となり得る様々な取引に応用可能とされており、日本のM&A取引に大きな影響を及ぼしております。望ましいM&Aであるためには、①企業価値向上に資するか否かを基準に判断されるべきであり、②公正な手続でなされ、一般株主が享受すべき利益が確保されるべきとされています。

対抗的なTOBの場合であれば、対抗提案が具体的であり、実現可能性がある真摯な提案である限り対象会社の取締役会は提案内容が企業価値、ひいては株主価値向上に資するか否かを真摯に検討すべきということになります。

今回のオーケーの関西スーパーに対する買収提案に関しても基本的にこの考えが該当するのだと思います。つまり、関西スーパーの取締役会・独立委員会は、オーケーによる買収提案が先に検討していた経営統合よりも、関西スーパーの株主にプラスとなるか否かを検討する必要があるのだと思います。好き嫌いかよりも、公正かつ客観的に判断することが求められます。

ディスカウントスーパー、オーケーの関西スーパーへの買収提案

昨日は菅首相自民党総裁選への出馬を見送ることが公表されましたが、3日の日経平均株価終値は前日比+584円の大幅高となりました。市場が好感したようですね。

さて、昨日の日経新聞の1面でオーケーが関西地盤の食品スーパーの関西スーパーマーケットに買収提案する旨の記事が掲載されていました。オーケーは次のとおり公表しています。

https://ok-corporation.jp/media/001/202109/20210903_%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9.pdf

次の記載があります。

  • 関西スーパー様に対して、2021 年6月に、関西スーパー様の上場来最高値(1992年2月 10 日)と同値である一株当たり 2,250 円で上限なしの公開買付けを実施する提案を行っておりましたが、弊社提案内容に関する関西スーパー様との実質的な協議の場は設けられませんでした。そのような中、株式交換を手段とする関西スーパー様と H2O グループ様との経営統合等と、現金対価の弊社提案とを、関西スーパー様の株主利益の最大化の観点から公正に比較検討頂けたのか、懸念しております。
  • 関西スーパー様が設置した特別委員会の答申及び関西スーパー様が公表したH2O グループ様との経営統合等に関するプレスリリースは、少数株主保護の観点から十分な説明がなされていないと考えております。
  • 弊社提案の方が関西スーパー様の企業価値向上及び少数株主の利益により資するものと考えますので、今後開催される関西スーパー様の臨時株主総会では反対の票を投じる予定です。また、仮に H2O グループ様との取引が撤回される場合、関西スーパー様の取締役会が弊社提案に真にご賛同頂けることなどを前提として、一株当たり 2,250 円で公開買付けを行う意向があります。 

一方、これに対して、関西スーパーは次のプレスを公表しています。

http://www.kansaisuper.co.jp/upimages/irinfo/irnews_631.pdf

関西スーパーは、H2O グループとの本経営統合を推進する予定であって、これを撤回する意向はないようです。敵対的TOBに発展するのでしょうか。

以前にホームセンターの島忠ホームズがDCMと統合をしようとしていたところ、ニトリがより高い価格でTOBをしかけきて、最終的にニトリの提案を受け入れたケースが記憶に新しいところです。この時は、ニトリがDCMよりはるかに高い価格でのTOB 価格を提示したことに対して、島忠の独立委員会は、島忠の株主価値向上の観点から、ニトリTOBに応じるべしと判断しています。当時のブログの記事を再掲いたしますので、是非ご覧頂ければと思います。オーケーと関西スーパーの進捗も今後ブログで掲載していきたいと思います。

政策保有株式に対する事業会社(政策保有株主)の議決権行使結果の開示のすすめ

昨日の日経新聞に「「批判されない」持合い株」というタイトルの記事がありました。

「批判されない」持ち合い株: 日本経済新聞

内容としては、何故持合い株式が嫌われるかの理由と、最近の縮減の動きについてごく基本的なことが書かれています。その中で、必ずしも縮減せずとも、議決権行使結果を開示すれば資本市場の納得を得られるのではといった記載がありました。

これは私も以前からそう感じるところです。そもそも政策保有株式の縮減が2018年の改訂コーポレートガバナンス・コードの金融庁の議論で言わたのは、不祥事のある企業などの株主総会議案に対して、政策保有株主が当然のように「賛成」表示をするため、機関投資家のような少数株主の意思が反映されないのが問題、従って政策保有株式は「悪」というのが議論の始まりです。とすると企業はそういう例外的な場合には、反対をすればよいのです。そしてそれを明確にするためには、政策保有株株式の株主総会の議案に対する議決権行使結果を開示すればよいのです。

2018年の改訂では、政策保有株式に対する議決権行使基準の開示も求められ、コーポレートガバナンス報告書で上場企業各社は開示していますが、正直なところ、意味不明な議決権行使基準が多いです。日本企業が得意な横並びの抽象的な開示です。それでは機関投資家の納得は得られないのは当然です。従って、意味不明の議決権行使基準などを開示するのではなく(開示自体は必要ですが)、単純に議決権行使結果を詳細開示すればよいのです。そもそもとして、普通に考えて問題のある議案というのはそれほど数は多くはないはずです。勿論、開示する政策保有株式サイドには予め開示しますということは一言伝えておくのが礼儀だとは思いますが、こうすることで政策保有株式を保有することについて、資本市場からの批判は解消される可能性があると思います。

ただ、個人的にはそもそも持合い株式などなくても企業実務においては、実はそれほど困ることはないであろうと考えています。1年ほど前に次のとおり記事を書いておりますのでご関心のある方はご参照を頂ければと思います。

 

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 (第1回) ー 投資の材料の1つとして知財情報の活用

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」というものが8月に立ち上がりました。この検討会は、6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードを踏まえ、企業による知財投資・活用戦略の開示や社内におけるガバナンス構築を促すためには、企業がどのような形で知財投資・活用戦略の開示やガバナンスの構築に取り組めば、投資家や金融機関から適切に評価されるかについて、分かりやすく示すことなどを目的としています。

第1回の会合が8月6日に開催され、事務局説明資料は次のとおりです。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai1/siryou4.pdf

この中で、機関投資家のESG投資において知財情報を活用する動きとして、次の記述があります。

  • 投資先企業の環境関連技術に関する特許データに基づき、気候変動によって生じるコスト・ 利益の現在価値を算出し、気候変動によって企業価値が将来的にどの程度変化するかを分析
  • 各セクターにおける当該企業の特許の占有率にそのセクターにおけるグリーンレベニューの額及び利益率を掛けることで、当該企業が気候変動で得られるか可能性がある機会を将来にわたっての利益額として示した
  • 運用会社のアナリストが理解できるくらいの特許情報を企業が開示することが重要。投資家にとっては、特許情報を使わなければならないという切実な状況があり、ニーズはある
  • 英国拠点では、投資運用額の半分程度をいわゆる「ESG投資」に振り向けているのが特徴。そのESG投資で重視しているのが知的財産の情報
  • 知財情報は、企業(が出願し、獲得した知財)のありのままの姿を現している。ESG投資に欠かせないデータとして数年前から利用を始めている。企業が現在、そして将来、どんな方向に向かおうとしているのかを示し、どんな研究開発に力を入れようとしているのかを知ることができる。ESG投資に欠かせないデータとして数年前から利用を始めている
  • 知財を分析すれば、その会社が各事業のどんな分野で強みをもつか、判断することができる

私の実務経験上、特許情報だけ見ても、その企業の企業価値を判断することは出来ません。特許情報は公開されるので、公開されると他社の模倣の対象となります。当然全く同じ模倣は特許侵害になるので、侵害を回避するような形での模倣となりますが。

このため、企業によっては、本当の肝になる技術情報は、公開せずにノウハウとしてブラックボックス化することも多いです。従って、公知の特許情報のみで企業の優位性は判断できません。従って、株式投資の側面から特許情報を見るというのは、その企業の大きな研究開発の方向性を知るといった観点での活用になるのだと思います。ただ、特許情報は記載内容を含めて極めて専門的で、技術のバックグランドのない投資家には理解できません。書いてある文字は読めても内容はチンプンカンというところだと思います。従い、それを分析する業者を活用するのが必要かとは思います。

2021年内に「知的財産投資・活用戦略に関する開示ガイドライン(仮称)」の取りまとめを予定しており、本年秋頃までに方向性を示す予定のようです。

機関投資家協働対話フォーラム ー 「資本市場の評価を下げるリスクを踏まえた買収防衛策の必要性の開示」

機関投資家協働対話フォーラムをご存じでしょうか? 機関投資家の適切なスチュワードシップ活動に資するよう、機関投資家が協働で行う企業との建設的な「目的を持った対話」を支援する目的で2017年10月に設立された一般社団法人です。

参加している機関投資家は、企業年金連合会第一生命保険、三井住友DSアセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、明治安田アセットマネジメント、りそなアセットマネジメントになります。このフォーラムは、定期的に課題と考えるテーマをあげて、その課題を持つ上場企業各社にレターを送付して、対話や開示を求めています。

少し前になるのですが、本年の5月、6月には「資本市場の評価を下げるリスクを踏まえた買収防衛策の必要性」というレターを送付しています。

https://www.iicef.jp/pdf/jp/pdf_jp_20210507.pdf?20210610_1

要は事前警告型買収防衛策を持つ企業に対して、廃止を求める内容のレターです。この中で次のような記述があります。

まず最初に、日本は法制度の整備が不十分という見方がありますが、金融商品取引法TOB ルールでは、潜脱的な支配権取得取引への規制や全部買付義務があるとともに、会社側は意見表明報告書の提出を通じて買付者に関する情報や、検討期間の確保と情報開示を求めることができます。また、株主総会における承認等をもって新株予約権を用いた有事型の買収防衛策の発動を認める判例や、敵対的買収よりも低い価格でホワイトナイトに対して株式を売却した場合の役員責任を否定する判例なども出されました。一度、買収防衛策を廃止した後でも、有事型の発動を株主総会に諮り、株主総会で承認可決された事例も出ました。

この中で太字の箇所がポイントになります。これと同じような内容のレターはフォーラムは過去にも送付していますが、この太字の箇所は今回はじめて追加されました。ブログでも何度か書いていますが、事後導入型の買収防衛策を肯定する判例が出たことはこの1年での大きな変化点です。これは対話フォーラムのレターですが、このフォーラムに参加している機関投資家以外でも同じような問題意識を持つ機関投資家はかなり多いのが現状です。事前警告型の買収防衛策を有する企業は、来年の更新においては、機関投資家から厳しい質問が出ることが予想されます。

買収防衛策の実務ご担当者で、「来年の継続更新に向けてどうすべきか判断にまよっている」、「機関投資家の賛同を得るにはどういうスキームにすべきか」など何か不明な点などあれば、本ブログのお問い合わせ先からお気軽にご連絡を頂ければ、私の分かる範囲でアドバイスをさせて頂きます。

シティインデックスイレブンスが東亜建設工業株の大量保有報告書を提出 ー 東亜建設の「会社の支配に関する基本方針」の記載

村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが8月19日に東亜建設工業大量保有報告書を開示しており、8月19日時点での共同保有者との保有割合は8.28%となっています。

東亜建設の財務は、1Qの決算短信を見ると現預金438億円、有利子負債(借入金)201億円のネットキャッシュで、直近の有価証券報告書を見ると政策保有株式(上場株式)91億円があり(保有銘柄数は36銘柄)、これも加えると328億円のネットキャッシュです。総資産に占めるキャッシュ比率は約16%です。四季報オンラインの情報では予想PERも10倍以下で、PBRも1倍を下回っており、割安のキャッシュリッチ銘柄ということかと思います。

東亜建設は事前警告型の買収防衛策は導入していませんが、直近の有価証券報告書で次の記載があります。

a.基本方針の内容

当社は、公開会社として株式を上場し、株主、投資家の皆様による株式の自由な取引が認められている以上、当社株式に対する大規模買付提案又はこれに類似する行為があった場合において、これに応じて当社株式の売却を行うか否かの判断は、最終的には株主の皆様の意思に基づき行われるものであると考えております。当社株式の売却を行うか否か、すなわち大規模買付提案等に応じるか否かの判断を株主の皆様に適切に行っていただくためには、大規模買付者側から買付の条件や買収した後の経営方針、事業計画等に関する十分な情報提供がなされる必要があると考えます。また、当社は、その大規模買付提案に対する当社取締役会の評価や意見、大規模買付提案に対する当社取締役会による代替案等も株主の皆様に提供しなければならないと考えます。株主の皆様には、それらを総合的に勘案したうえでご判断をいただく必要があると考えます。当社の財務及び事業の方針を決定する者は、当社の経営理念を理解し、当社を支えるステークホルダーとの信頼関係を十分に構築することができ、当社の企業価値、株主共同の利益を中長期的に向上させることのできる意思と能力を備えている必要があると考えます。したがって、大規模買付提案にあたって当社や当社の株主に対し、提案内容に関する情報や意見、評価、代替案作成に必要な時間を与えない大規模買付者、買付の目的及び買付後の経営方針等に鑑み、当社の企業価値・株主共同の利益を損なうことが明白である大規模買付提案を行う買付者、買付に応じることを株主に強要するような仕組みを有する提案等を行う大規模買付者は、当社の財務及び事業の方針を支配する者としては適切ではないと考えております。  このような大規模買付提案又は大規模買付行為等があった場合には、当社は、法令及び定款によって許容される限度において、企業価値や株主共同の利益を確保するために必要な措置を講じることを基本方針とします。

c. 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止する取り組み

当社は、企業価値及び株主共同の利益を害する恐れのある当社株式に対する大規模買付提案又はこれに類似する行為があった場合には、株主の皆様が適切に判断を行えるよう、大規模買付者に対し必要かつ十分な情報開示を求め、あわせて取締役会の評価や意見、代替案等を開示し、株主の皆様に適時適切な情報を提供するように努めるとともに、株主の皆様が検討するための時間の確保に努めてまいります。

要するに大量買付者が出現した場合には、有事導入型の買収防衛策を導入・発動する可能性があるということを示唆しています。この記述はこのような意味を有することは、芝浦機械とシティインデックスとの攻防の時に、芝浦機械が言っています。シティインデックスは日本アジアの買収防衛策に勝っています。

今後、シティインデックスの買増しが進んだ場合、東亜建設は特定標的型の買収防衛策を取締役会決議で導入することを当然視野に入れているかと想像します。本件も今後、進捗あればブログで記事を更新して行きたいと思います。

地熱発電の増加に向けて本格調査を開始 ー 地熱関連銘柄に期待

本日は今週はじめてのテレワークです。オフィスは今週もほとんど人がおらず、毎日が休日出勤しているかのような人の少なさで、かえってオフィスの方が集中して業務に取り組むことができます。本日は何もなければ、18時前には仕事を終え、近所のプールで1時間ほど泳ぐ予定です。

さて、本日は株式投資関連のネタを1つ。昨日の日経新聞で次のように地熱発電に関する記事が掲載されていました。

経済産業省地熱発電所を増やすため、国立公園内などに適地を見つける調査を本格化するようです。再生エネの中で、地熱はCO2を出さない、日本は世界で第3位の地熱資源量を有するなど、本来地熱発電 は期待されるべきエネルギーです。しかし、開発リードタイムが長いほか、国立公園など開発の難易度が高く、環境庁はじめ関係省庁との折衝などが必要になることもあり、なかなか進んでいないのが現状です。

2030年度の日本のエネルギーに占める地熱発電の比率はわずか1%ですが、風力発電の実現可能性も雲行きはかなり怪しいところかと思いますので、地熱発電は調査の結果次第では比率が増える可能性もあるかと思います。

関連銘柄はアストマックス(7162)、鉱研工業(6297)、東亜建設工業(1885)、富士電機(6504)、古河機械金属(5715)あたりでしょうか。ところで、四季報オンラインで各銘柄のニュースを見ていたところ、東亜建設工業は旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが8月19日に大量保有報告書を出しており、共同保有者との保有割合合計は8.28%となっています。

富士興産と投資ファンドの攻防ー アスリードキャピタルがTOBを撤回

富士興産とアスリードキャピタルの攻防ですが、アスリードキャピタルはTOBを撤回したようですね。本日、富士興産が次のとおりプレスリリースを出しています。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5009/tdnet/2019285/00.pdf

富士興産の買収防衛策に基づく対抗措置の発動に対するアスリードの差止めの申立てが東京高裁で棄却されたことが影響しているのだと想像します。フリージアマクロス日邦産業の攻防でもフリージアは、名古屋高裁の対抗措置発動を認める判決後にTOBを撤回しています。

となると、有事の際の取締役会の決議での導入、後日、株主総会で導入について株主の賛同を得るという特定標的型の有事導入型の実務が形成されつつあるということかと思われます。機関投資家の反対の多い、事前警告型の買収防衛策の必要性は今後低下すると思います。勿論、有事導入型がどこまで一般化できるかは分析が必要ではありますが。このアスリードの件も、後日、旬刊商事法務で解説記事が掲載されるのだと思います。一連の経緯をアップデートしておきます。

  • 4月28日 アスリード:富士興産に対するTOBの開始
  • 5月17日 富士興産:TOBに対して意見表明の留保
  • 5月24日 富士興産:取締役会決議で買収防衛策を導入
  • 5月28日 富士興産:TOBに対して反対の意見表明
  • 5月28日 富士興産:株主意思確認総会で買収防衛策導入議案上程の決定
  • 6月 4日 富士興産:主要株主の異動(重田光時氏 10.12%)
  • 6月11日 富士興産:取締役会決議により買収防衛策の対抗措置発動
  • 6月11日 アスリード東京地裁新株予約権無償割当の差止仮処分申立て
  • 6月15日 アスリードTOB期間を延長(6月14日  ⇒ 7月9日)
  • 6月23日 東京地裁:仮処分申立てについて棄却を決定
  • 6月23日 アスリード東京地裁の決定を受けて即時抗告の申立て
  • 6月24日 富士興産:臨時株主総会を開催し買収防衛策の導入が承認
  • 7月15日 富士興産:新株予約権無償割当の基準日公告(基準日7月31日)
  • 7月21日 アスリードTOB期間を延長(7月28日  ⇒ 8月5日)
  • 8月 4日 アスリードTOB期間を延長(8月 5日  ⇒ 8月19日)
  • 8月10日 東京高裁:アスリードの即時抗告の棄却決定
  • 8月11日 アスリードTOB期間を延長(8月19日  ⇒ 8月25日) 
  • 8月24日 アスリード:富士興産に対するTOBを撤回

取締役会の実効性評価の考えのポイントは理解しているでしょうか? ー 外部業者のカモにされないために①

少し前に社内外で取締役会の実効性評価(以下「実効性評価」)を担当している方々のある会議に呼ばれ、実効性評価について説明することになりました。その方々は外部の業者を起用して実効性評価をしているのですが、いずれの方も総務部、法務部、人事部といった出身の方々で機関投資家との対話などをした経験がゼロのようで、どうも実効性評価の真のポイントが分かっていないようでした。

業者から取締役宛の沢山なアンケート質問が来て、それを右から左に取締役に転送している事務局も少なくないようで、ある意味、業者にいいように使われているとも言えます。あらためて考えると、過去から実効性評価を毎年実施しているからという理由で、漫然と業者に毎年決して安くない金を払って、言われるがままに実効性を評価している会社は結構多いのではないかと思いました。

ということで、2回に分けて上場企業がコーポレートガバナンスコンサルタントといったような外部の業者のカモにされないためにも、実効性評価の大きな考えについて説明したいと思います。

まず、実効性評価は何で規定されているかはご存じでしょうか?コーポレートガバナンス・コードに次の記述があります。

4-11③ 取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

この点は話をした社内外の担当の方々も一部の方を除いて理解されていました。2015年に制定されたコーポレートガバナンス・コードで、取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきであるとされています。取締役会の重要な機能は監督機能ですが、その監督督機が実効あるものかどうかという観点から評価が求められていると言えます。

となると、ここで外部業者から監督機能が十分に果たされているかどうかの沢山の質問がくることになります。そして、先に伝えましたように、この内容を何の疑問も感じることなく社内でそのまま転送している事務局がいます。ここが問題です。

ここで考えるべきは、この実効性評価ってそもそも誰が気にしているのかです。上場企業には多くのステールホルダーが存在します。では、ステークホルダーである顧客や仕入先は実効性評価を気にするでしょうか?従業員が気にするでしょうか? 

いずれも全く気にしませんよね。顧客は品質の高い製品やサービスが提供されるかどうか、仕入先は代金を払ってくるかどうか、従業員は毎月のお給料が入ってくるかどうかが最大の関心事項です。では、誰が実効性評価の内容を気にするかというと、株主、その中でも機関投資家しかいません。

まずはこの点をしっかりと理解する必要があります。とすると、どういう視点から実効性評価を実施すればよいでしょうか?ここは次回解説をしたいと思います。