サステナビリティ課題の取組みの開示をはじめ非財務情報の開示について、グローバルでどうすべきか検討が進んでいる状況ですが、環境の開示、人的資本の開示などはじめ日本は遅れている状況にあります。その理由は簡単でグローバルの基準制定が欧米中心に進んでおり、日本はその基準作りの機関や会議のメンバーに入れていないからです。
さて、その日本ですが、経済産業省が6月に非財務情報の開示指針研究会というものを立ちげています。これまで合計3回開催されています。この研究会は何をするのかということですが、次が目的とされています。
- 近年、企業の情報開示において、非財務情報の重要性が世界的に高まる中で、大企業を中心とした国内外の企業は、各種媒体を通じて非財務情報の開示に取り組んでいる
- また、既存の指針設定主体による組織統合の動きや共同声明の発出のほか、IFRS財団による国際サステナビリティ基準審議会の設立に向けた動き等の活発な動きが続いているように、指針をめぐって世界的な動向変化の最中にある
- こうした中、非財務情報及びその指針に関する世界的な動向に関する情報の共有を行いながら、我が国や世界において質の高い非財務情報の開示を実現する指針のあるべき方向性の検討を実施することが重要
- 本研究会においては、非財務情報の開示指針の方向性について認識の共有を行いながら、非財務情報の利用者との質の高い対話に繋がる開示、及び開示媒体の在り方について検討する
私が太字でハイライトした箇所がポイントで、要は非財務情報の開示を求められても、「何をどの程度開示するのか分からない」という上場企業が多いので、開示のガイドラインを策定しようということかと思います。
第1回、第2回の会合では、気候変動に関する海外の開示の動きを委員全員でお勉強をしたり(情報共有)したようですが(事務局資料を見る限り)、9月1日開催の第3回会合では人的資本の開示のあり方が議論されたようです。人的資本というと、本日の早朝に私がブログで紹介しました経産省の「人的資本経営の実現に向けた検討会」もあり、こちらの会との関係が不明なところはありますが、第3回会合の事務局資料は次のとおりになります。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/hizaimu_joho/pdf/003_03_00.pdf
グローバルでの人的資本の開示のルールなどがあるようで私は初めて知りました。この非財務情報の開示指針研究会は、本年10月中旬に中間報告書を取り纏め・公表する予定のようです。
どういう結果が公表されるかは分かりませんが、企業として念頭に置くべきは、上場企業の最重要なステークホルダーである機関投資家が非財務情報の開示内容を見て、企業価値向上につながると判断するか否かです。企業のゴーイングコンサーンの下、非財務への企業の取組みがその企業の将来フリーキャッシュフローを増大させ、また、株主資本コストを下げることに繋がると機関投資家(長期・超長期保有の投資家です)が判断するに足る情報開示であることが大事です。とすれば、まずは機関投資家が何を求めているかを知ることが重要です。
とはいいながらも、機関投資家はやはり単年度での投資利回りをアセットオーナーと約束していることは紛れもない事実であり、非財務情報だけを投資において重視しているわけでは全くありません。この点は多くの企業のCSR部門の方の理解が乏しいところかと思いますが(企業価値の算定などを知らないため)、ベースをしっかりと理解することが大事です。今後もブログで情報のアップデートをしていきます。