中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

非財務情報としての人的資本の考え方 ー 機関投資家が注目している大事なことは?

中長期での投資を志向する機関投資家にとって企業の非財務情報は関心の高いところかと思いますが、その中での最近のホットな話題の1つに人的資本があります。内閣官房が人的資本可視化指針を公表しているところでもあります。

これを受けて企業は人的資本の開示をどうするか検討しているところかと思いますが、この点、1つ気を付けるべきことがあります。

それは、企業の係長層や課長層といったいわゆる中間管理職の育成や活用に力点を置きすぎていないでしょうか、ということです。さらには、その下の層の人材育成にやたら重きを置いた開示を検討していないでしょか?2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂で中核人材の多様性などが規定されたこともあり、管理職候補者層の開示に力を入れている企業も意外に多いのではないでしょうか。

けど、これは資本市場という観点から見た場合、機関投資家が求めていることと視点がずれているように思います。機関投資家の投資のタイムホライズンにあった人的資本の開示が必要になるのだと思います。

中長期での株式投資とは言え、さすがに15年~20年先を見ている機関投資家は少なく、長くて3年~10年かと思います。つまり、この期間で企業の業績が好調であることに関心があり、それを支える人的資本の在り方に最大の関心があるのです。また、そもそも機関投資家とは言え、担当者はサラリーマンに過ぎないことを考えると10年が限度かと思います。

とすると、経営者人材になるのに、かなり長い期間を要する係長や課長といった一般クラスの人的資本ではなく、5~10年の経営に責任を持つ経営者人材層の人的資本の在り方に企業は重きをおく必要があります。つまり、経営者人材層をいかに育て、そして彼らを企業戦略とどう絡め、企業の5~10年での成長にどう寄与するかです。

人的資本の開示にあっては、ボトム層を対象にしたこまごまとした施策を最初に考えるのではなく、まずは経営者人材層の人的資本を最初に考え、その後で、経営者人材の候補者層、そして次のその下の層の人的資本というようにピラミッドの頂上から下に向けて考え、それを上手に開示するのが投資家が一番納得することのような気がします。