中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

政策保有株式に対する事業会社(政策保有株主)の議決権行使結果の開示のすすめ

昨日の日経新聞に「「批判されない」持合い株」というタイトルの記事がありました。

「批判されない」持ち合い株: 日本経済新聞

内容としては、何故持合い株式が嫌われるかの理由と、最近の縮減の動きについてごく基本的なことが書かれています。その中で、必ずしも縮減せずとも、議決権行使結果を開示すれば資本市場の納得を得られるのではといった記載がありました。

これは私も以前からそう感じるところです。そもそも政策保有株式の縮減が2018年の改訂コーポレートガバナンス・コードの金融庁の議論で言わたのは、不祥事のある企業などの株主総会議案に対して、政策保有株主が当然のように「賛成」表示をするため、機関投資家のような少数株主の意思が反映されないのが問題、従って政策保有株式は「悪」というのが議論の始まりです。とすると企業はそういう例外的な場合には、反対をすればよいのです。そしてそれを明確にするためには、政策保有株株式の株主総会の議案に対する議決権行使結果を開示すればよいのです。

2018年の改訂では、政策保有株式に対する議決権行使基準の開示も求められ、コーポレートガバナンス報告書で上場企業各社は開示していますが、正直なところ、意味不明な議決権行使基準が多いです。日本企業が得意な横並びの抽象的な開示です。それでは機関投資家の納得は得られないのは当然です。従って、意味不明の議決権行使基準などを開示するのではなく(開示自体は必要ですが)、単純に議決権行使結果を詳細開示すればよいのです。そもそもとして、普通に考えて問題のある議案というのはそれほど数は多くはないはずです。勿論、開示する政策保有株式サイドには予め開示しますということは一言伝えておくのが礼儀だとは思いますが、こうすることで政策保有株式を保有することについて、資本市場からの批判は解消される可能性があると思います。

ただ、個人的にはそもそも持合い株式などなくても企業実務においては、実はそれほど困ることはないであろうと考えています。1年ほど前に次のとおり記事を書いておりますのでご関心のある方はご参照を頂ければと思います。