中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

主なゼネコン各社の2020年度第2四半期決算発表日

各社の決算発表が来週から11月前半にかけて本格化します。私の手帳を先ほど見たところびっしりと40社近い決算発表企業が書き込まれており、気合を入れて来週から決算短信と決算説明会資料を読み込んで行く予定です。

その中で、国土強靭化関連は関心のあるテーマですが、これに関連する銘柄としてゼネコンの業績見通しにも注意したいと思っています。主なゼネコン各社の決算発表日はは次のとおりです(いずれも11月です)。

ゼネコンと言えば、キャッシュリッチで政策保有株式が潤沢であるため、アクティビストに狙われるケースも多く、今だアクティビストが株式を保有している先も多いと思います。以前に2018年度の有価証券報告書をベースにゼネコン各社の政策保有株式を調べてブログで紹介したこともありますが、2019年度の有報のチェックをしておらず、この1年間で政策保有株式をどの程度減らしたのか、それとも全く減らしていないのか関心のあるところでもあります。

政策保有株式に対する市場の目は厳しくなり、議決権行使助言会社であるISSは2021年から純資産額の20%超の政策保有株式を有する企業の経営トップには反対推奨する方向で議決権ポリシーの改訂を進めています。このあたりをゼネコン各社は、どのように考えているのでしょうか。

ゼネコン各社の2002年度の業績見通しを中心に、政策保有株式の削減状況についてもブログで紹介したいと思います。

物言う株主の要求が過去最多のようです - エリートであるアクティビストと対峙するためには準備あるのみ

10月17日の日経新聞に「『物言う株主』の要求が最多」との記事がありました。アクティビストによる2020年の日本企業への要求や株主提案が現時点で22件となっており、2019年の年間の19件を既に上回っているということです。驚くのは、米国に次ぐ高水準で、英国とドイツを大きく上回るということです。

単にアクティビストが騒いでいるのであればたいした問題ではないのですが、それに賛同する機関投資家が増えているということが企業にとっては大きな問題です。新聞ではアクティビストと企業の攻防は激化するであろうということが書かれていました。

では、日本の上場企業としては何をすべきかですが、2つあり、まず世の中の動向についてアンテナを高くして把握するとともに、もう1つが有事に備えての避難訓練を十分にしておくということにつきると思います。

1つ目については、まず、政府の最近のコーポレートガバナンス改革の動きを把握し、また、資本市場関係者がどういうことを考えており、自社をどう見ているかをしっかり把握することが肝要です。直近の動きでいうと、経済産業省が7月末に公表した「事業再編実務指針」、「社外取締役ガイドライン」であったり、10月20日から再開されるコーポレートガバナンス・コード改訂に向けた金融庁のフォローアップ会議の議論の行方をしっかり把握することが肝要です。これらの内容をしっかりと把握して、世の中では何が言われているかをしっかりと認識することが大事になります。

そして2つ目が、有事の場合を想定してのリスクを把握するとともに、出現に備えた避難訓練をしておくことが必要と思います。企業の中には、火災の際や工場が爆発した時の対応マニュアルなど作成しているところも多いかと思います。であれば、そういうレアケースに時間を割いているのであれば、アクティビストに対峙するマニュアルを準備して、関係部門で共有して有事の対応をしておくことが重要ではないでしょうか。

アクティビストというのは投資のプロであり、かつ、日本であれば、東京大学京都大学一橋大学大阪大学、どんなに悪くても旧帝大出身という頭の良いエリートばかりです。海外のアクティビストも名門大学を出ているエリートがかなり多いと思います。

一方、上場企業サイドの役員はどうかというと、大手総合商社、メガバンク、電力をはじめとしたインフラ企業などのごく一部の上場企業は一流大学出しか役員になれませんが、そうでない多くの上場企業では、二流又は三流の国立大学・私立大学出身が役員というケースも結構多く(私の証券会社時代の経験では、社長~専務クラスはさすがに一流大卒が多い)、正直、エリートであるアクティビストに比べてしまうとレベルが落ちるケースも多いかと思います(先日、書店で役員四季報で、10年ほど前に投資をしていた売上高8,000億円程度の企業の役員欄をたまたま見たところ、「こんな大学あるの?」といった低いレベルの国立大・私立大卒の男女の役員が名を連ねており、よくこんな大学を出た人を役員にさせているなとふと思ったりしました。偏差値の低い大学卒しか新卒で入らないのでしかたないところではありますが)。

ということで、多くの上場企業の方は、アクティビストという頭脳明晰なエリート集団と対峙することになり、かつその優秀な方が自社を徹底分析しているわけですから、それに負けないようにするには、前述の2つの準備をきっちりとしておくことが何よりも大事かと思います。

コーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた議論が開始されます

本日は空間ディスプレイ関連銘柄の分析に取り組んでいます。乃村工藝社の第2四半期決算説明会の動画が同社のホームページで公開されましたので、それを閲覧したり、丹青社乃村工藝社、スペースの3社の分析をしたり、来週から買い増しを検討しているある銘柄の分析に注力する予定です。

また、先週からテレビ東京オンデマンドに登録しました。登録している方は多いのかも知れませんが、月額500円でテレビ東京ワールドビジネスサテライトカンブリア宮殿ガイアの夜明け、モーニングサテライトはじめ経済ニュースや番組が見放題ですので、これは優れものと思います。銘柄分析でも役立つツールかと思います。

さて、本題ですが、10月15日に金融庁が「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が開催されることを公表しました。開催日は10月20日です。

東証の上場区分の今後の見直しに伴い、コーポレートガバナンス・コードが見直されるのですが、その議論がフォローアップ会議で行われます。9月に開催されるのではという意見もありましたが、首相交代により遅れたのかも知れません。

事務局資料などはまだ公表されていないので、会議の論点などの詳細は分かりませんが、今回の改訂のポイントは、事業ポートフォリオの見直し、社外取締役の関与の強化、女性・外国人の管理職への登用などが論点になるのではと言われています。本年7月末に経済産業省が、事業再編実務指針、社外取締役ガイドラインを公表しており、これらに実効性を持たせるためにコード改訂でも何らかの手当がされるであろうということです。

今後、東証の市場区分は、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに区分されることになりますが、プライム市場にはグローバル企業を入れたいというのが金融庁の本音ですので(現状は東証1部は中小型銘柄でも自動的にプライム市場に入れると言われてはおりますが)、プライム市場に入る企業には高いコーポレートガバナンスが求められるのであろうと考えます。

フォローアップ会議の動向は開催の都度、ウォッチしますので、ブログでも紹介していきたいと考えています。

エムビーエス(1401)がQ1決算(6-8月期)を公表

10月14日にエムビーエス(1401)がQ1決算を公表しました。同社はケルトン工法という道路・橋・トンネルといった公共建造物のコンクリートの剥離防止する工法を有しており、2015年に東証マザースに上場した株式時価総額55億円程度の小型株です。

前年同期比で売上高は△23.8%、9百万円の営業赤字になっています。決算短信からの記述を抜粋すると次のとおりです。

「当第1四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済・社会活動が制限され、個人消費の低迷や経済活動の停滞等、厳しい状況が続き先行き不透明な状況となっております。当社が属する建設業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の抑制から、工事の一時中止や工事の延期、受注の遅れ等が見受けられましたが、公共投資並びに民間投資は底堅く推移いたしました。しかしながら、施工を行う技術者不足が解消されていないことに加え、資材価格や労務費等の建設コストの高騰が工事収益を圧迫する等、引き続き厳しい状況が続いております。このような状況の中、当社は、既存店におけるパートナー(工務店等)との関係強化に取り組み、受注拡大を図って参りました。また、原価低減と経費削減、工事採算性を重視した受注方針の徹底、施工管理と品質・技術の向上に努めるとともに、人材採用及び育成にも積極的に取り組み、業容拡大や収益力の向上等も図って参りました。これらにより、当第1四半期累計期間における売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響により522,731千円(前年同期比23.8%減)となり~」

小型銘柄ですので昨日は株価は大きく下げています。業績不振は、工事の一時中止や工事の延期、受注の遅れによる影響が大きいようです。国土強靭化の中で同社の技術力には定評があるようですので、中長期で見ると、成長が期待されるように思います。

同社は、通期決算で見ると売上高は過去10年間増収を続けており、営業利益は2013年度から2018年度までは毎年増加しています。財務基盤は安定しており、ネットキャッシュであり、総資産に占めるネットキャッシュ比率は30%を超えています。2020年度の通期見通しは未定です。

光通信による株式の大量買付行為に対してサンセイ(6307)は買収防衛策を発動するか? - 今後の流れを解説します

サンセイ(6307)はビル用ゴンドラ、舞台装置のパイオニア企業ですが(時価総額約40億円)が、大量保有報告書によると光通信(9435)は4月19日時点でサンセイの株を16.47%保有しており、サンセイは買収防衛策を有しているところ、光通信との間で買収防衛策のスキームに基づくやりとりが両社の間で行われています。サンセイのプレスリリースによれば次のとおりです。

  • 8月 7日:サンセイは光通信から大規模買付行為にかかる意向表明書を受領
  • 8月21日:サンセイは光通信に対して大規模買付行為の内容を検討するために必要となる情報の提供を要請
  • 10月9日:サンセイは光通信から情報を受領。取締役会は内容検討を行う

多くの日本企業の買収防衛策は、対抗措置の発動の是非を検討するにあたって大量買付者に一定の情報提供を求め、その情報に基づき、取締役会が一定の期間をかけて対抗措置の是非を判断するとされています。その判断においては、取締役会から独立した独立委員会が関与するケースが多いです。サンセイの買収防衛策も同様のスキームになっています。

8月7日のプレスによると、➀光通信はサンセイの20%以上の株式を取得する意思があること ②取得予定株式数は最大500,000株であること ③買付後の重要提案行為等は予定していないこと ④買収防衛策に定められた手続きを遵守することなどが書かれています。

サンセイの買収防衛策のスキームでは、買収者が大量買付ルールを遵守した場合、独立委員会は取締役会に対抗措置の不発動を勧告するが、いわゆる高裁4類型・強圧的二段会買付等のサンセイの企業価値・株主共同の利益を著しく損なうと認められる場合には対抗措置の発動を勧告することになります。そして、取締役会は、この勧告を最大限尊重して、対抗措置の発動の是非を決定します。

10月9日の翌日から60日以内に取締役会と独立委員会は光通信の大量買付行為の内容を判断し、上記の手続きを検討することになります。

光通信は、買収防衛策のルールを遵守するということのようですので、サンセイの取締役会の判断が終わるまで20%を超えて市場で株式を取得することはないということになります。

光通信はサンセイの経営権を取得したいのかどうか分かりませんが、光通信の意向次第によっては、買収防衛策の発動もあるかも知れません。光通信に経営権を取得されたくないのであれば、買収防衛策に基づく対抗措置(新株予約権の無償割当)を発動するであろうし、買収されることを許容しているのであれば、対抗措置は発動しないということになります。仮に発動となると、光通信は買収防衛策の是非を争うなど法的な対抗をしてくることになるかも知れません。

本件は日経新聞で大きく報道されるようなことは今のところないですが(サンセイの規模があまりに小さいからでしょうか?)、今後、買収防衛策の発動となったような場合には、大きく報道されるかも知れません。今後の動向に注視したいと思います。

東証上場企業のPER(2020年9月)

PER(株価収益率)は株式時価総額を純利益で割ることで算定することは投資をしている多くの方はご存じかと思います。企業を買収したと仮定した場合、投資金額が利益の何年分で回収できるかを示す指標になります。株式時価総額100億円で純利益10億円の場合のPERは10倍です。これは、この企業を100億円で買収すると10年分の利益で投資資金が回収できるということです。

数値が低い場合にはバリュエーションが割安、高い場合にはバリュエーションが割高ということになります。純利益を使うと企業に特別利益・特別損失などの一時的要因が発生し純利益はぶれ、結果、PERの数値も変動します。そこで、私の場合、「経常利益×65%」を分母の利益として、投資先企業の過去10年分のPER、当期予想のPER、中期経営計画での数値のPERを算定して整理しています(過去10年分については、毎年の通期決算発表の翌日の株価で株式時価総額を算定)。

PERは投資先企業の過去のPERとの比較が基本になるかと思いますが、世間では、同業間での比較なども重要と言われています。投資銀行やアナリストの作成する資料を見ると必ず同業との比較バリュエーションが出てきます。M&Aなどで企業価値算定をする際にマルチプル法を用いる場合、同業数値がベースになるので仕方ないですが、個人的には株式投資において同業でのPER比較がどこまで意味があるのか疑問には思うとことです。

とは言え、業界によってもPERの数値は異なるので、1つの目安としては念頭においておく意味はあると思います。そこで、東証の上場企業の業種別のPER(9月)を紹介します。私の投資先銘柄や投資候補となる銘柄の業種に限定してのものになります。

  • 東証1 全体     2172社  21.2倍
  • 東証1 建設      101社   9.1倍
  • 東証1 ガラス・土石   33社  13.2倍
  • 東証1 機械      141社  23.4倍
  • 東証1 サービス    228社  27.2倍
  • マザース 全体     322社 144.2倍
  • マザーズ 建設       6社  29.4倍
  • ジャスダック 全体   695社  18.5倍
  • ジャスダック サービス 102社  20.6倍

こうしてみると東証1部の建設が低いですね。昨日(土曜日)の日経新聞でも建設株の株価が低いという報道がありました。管政権がデジタル化への取組みに注力しており、国土強靭化への優先度が低くなっていることが理由ということが書かれていました。

東京個別指導学院(4745)がQ2(第2四半期)決算を公表

先週からQ2決算発表が始まりましたので、本日は、保有銘柄や今後の投資候補銘柄など各社の決算短信と決算説明会資料について確認し、数値をエクセルに纏めるなどして分析作業をしています。

昨日はベネッセの上場子会社である東京個別指導学院が20年度の1H決算(3-8月期)を発表しました。20年度Q1(3-5月期)とQ2(6-8月期)の3ヵ月比較で数値を並べると次のとおりです

  • 売上高  Q1: 2,134百万円 Q2:6,052百万円
  • 営業利益 Q1:△1,761百万円 Q2:  935百万円
  • 経常利益 Q1:△1,752百万円 Q2:  956百万円

Q1はコロナの影響で生徒数が激減するなどの影響で赤字に転落するなど業績が大きく低迷しましたが、Q2では生徒数が大きく増加したようです。営業利益も大きく改善しています。

今回、20年度の通期業績予想も公表しており、前年比では売上高は△12%、営業利益は△91%となっており、コロナの影響は21年中まで続くことを想定しているようです。ただし、直近の状況としては、個別指導塾の8月末時点の在籍生徒数は5月末時点より 4.0 ポイント改善しているほか、夏期講習会への申し込み数が計画を上回り好調に推移しているようです。

20年度の配当は年間26円として、これまでと同等を維持する予定です。同社はキャッシュリッチ企業で、Q2時点での株主資本比率は77%で、総資産に占めるネットキャッシュ比率も46%程度あるので、財務基盤は盤石です。今回のような非常時でも従来と同様の配当が維持できるというのはキャッシュリッチであるがゆえですね。

また、新中期経営計画(21年度~23年度)も今回公表しており、内容は次のとおりです(単位は億円)。

  • 売上高  FY21:221 FY22:239 FY23:257
  • 営業利益 FY21: 22 FY22: 26 FY23: 31

昨日の株価の終値562円と20年度の通期の業績予想数値でPERを算定すると(利益は経常利益×65%)160倍を超えますが、中期経営計画の数値をベースにざっくりと算定すると(営業利益=経常利益との前提)15倍~20倍程度になります。

20年度の数値はコロナの影響もあり正常な数値ではないので、中期経営計画の数値をベースにするのが妥当ですが、これによれば株価は割高とはいえず、同社の過去5年間のPERに比べるとかなり低いといえると思います。

東京個別の競合会社であるリソー教育は10月8日にQ2決算を公表していますが、Q2の3ヵ月はQ1と比較して売上及び営業利益ともに大きく回復しています。

コロナの影響で来年受験をする学生は勉強が大きく遅れていると思います。子供を持つ親が学習の遅れを取り戻すために頼りにするのが塾ですので、東京個別の今後の見通しも明るいように思います。その上で、ベネッセが東京個別を近い将来、完全子会社化することを期待しています。

親子上場の解消が急ピッチで進む ー 改訂コーポレートガバナンス・コードにも盛り込まれるか

10月7日の日経新聞で「親子上場解消 急ピッチ」という見出しの記事がありました。今年度に入り、親子上場の解消(=子会社の売却または完全子会社化)が進み、上場子会社が15社減る見通しということです。

親子上場の解消に伴うMBOはブログでも何度か取り上げてきましたが、最近の上場廃止ではNTTによるNTTドコモのTOBがあります。NTNは次にNTTデータ(9613)を上場廃止もするのかも知れません。そうであれば、NTTデータの株は「買い」ですね。

今回の記事の中で、米国市場での上場子会社は1%以下ということです。米国の投資家は日本市場の子会社上場は理解が難しいのも納得できるかと思います。親会社に会長がいて、その上場子会社で会長がいることは海外の機関投資家にはとても不思議にうつるということを20年ほど前に聞いたことがありますが、当時は私も良く理解できていなかったのですが、親子上場自体が不思議ということを言っていたのだと思います。

2022年の東証上場区分の変更に伴い、来年春頃にコーポレートガバナンス・コードの改訂がされることが予想されています。10月6日の日経新聞の1面では首相が、改訂ガバナンスコードでは、管理職として女性・外国人を拡充することを検討していくというようなインタビュー記事がありました。恐らく、上場子会社の在り方なども今回の改訂ガバナンスコードでは盛り込まれるのかも知れません。

とすると、個人投資家にとって上場子会社株は投資先として検討対象になると思います。ただし、全ての上場子会社が短期間で上場廃止されることはまずないでしょうから(確実なところでは、日立金属は近いうちに売却されるのでしょう)、今後も上場が継続する可能性も十分視野に入れて、業績面から投資対象としても問題のない企業を選別する必要はあります。

改訂コードは金融庁のフォローアップ会議というところで議論されることになりますが、当初は9月中に会議が開催され、議論が始まるのではないかと言われていましたが、まだ開催の予定は公表されておりません。今後は、フォローアップ会議が開催され次第、議論の動きなどもウォッチして、ブログでタイムリーに取り上げて行きたいと思います。

「人材版 伊藤レポート」が公表されました - 人材戦略と企業価値向上がフォーカスされています

2020年1月に経産省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を立ち上げ(座長は一橋大学の伊藤邦雄氏)、検討会が進められてきましたが、9月30日に「人材版伊藤レポート」の名称で報告書(レポート)が公表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/20200930_report.html

このレポートでは、企業価値の向上と人的資本に焦点が当てられており、企業価値向上における人材戦略について、取締役会で議論し・モニタリングすること、機関投資家はESGの中において人材戦略を含めた「S」について企業との対話を充実すべしといったような内容が記載されております。主な事項は次のとおりです。

1 経営陣の果たす役割

  • 経営戦略目標達成の上で重要となる人材アジェンダを設定すべき
  • 重要な人材アジェンダ毎に目指す姿を定量的なKPIで設定し、目指す姿と現在のギャップを定量化すべし
  • CEOの戦略パートナーとなる最高人事責任者を設置して、経営戦略上重要なアジェンダには最高人事責任者が幅広く関与すべき
  • 人材戦略の進捗等を投資家に積極的な発信・対話。人材戦略の妥当性について取締役会での議論や課題についての充実した開示

 2 取締役会の果たす役割・アクション

  • 人材戦略を取締役会で議論すべき
  • 人材マネジメントの専門性ある人材の取締役への起用
  • 経営陣の策定した人材戦略と経営戦略との連動のモニタリング
  • 人材戦略の実行状況について取締役会で議論するとともに、KPIを用いながらモニタリング実施
  • 社外取締役は人材戦略の議論をあるべき方向に導く役割が期待されている

 3 投資家の果たす役割・対話

  •  ESGの中、これまで「E」の要因が注目されがちであったが、新型コロナの状況下で「S」の要因の重要性が再認識されてきている
  • 企業の開示資料から投資家が企業の人材戦略を詳細に判断・理解するのは難しい。このため、人材戦略の進捗管理の指標等も参考にし、対話の中で議論・確認するべき
  • 経営陣と投資家の間で経営戦略と人材戦略に関する対話を深化させることが望ましい

一言でいうと、人材戦略は企業価値向上に重要であるため、戦略に対する経営陣の取り組み方、取締役会の関与を規定するとともに、投資家にも積極的な取り組みを促すという内容です。人事担当取締役は、日本企業では地位は高くないのが常ですが(管理部門では、財務担当役員が常に上位に位置し、法務担当役員などは普通は存在せず、仮に存在してもかなり低い地位といったところでしょう)、米国企業のようにもっと重要なポジションとして位置付けるべきということのようです。2014年に制定された伊藤レポートのように今後このレポートの活用は広がるでしょうか。本日の日経新聞の1面では、今後改訂が予定されるコーポレートガバナンス・コードで女性活用が盛り込まれるような記事がありましたが、この人材版伊藤レポートの内容も場合によっては盛り込まれる可能性も高いかも知れません。

上場企業のマネジメント層や実務担当者は是非一読されるとよいかと思います。しかし、この伊藤氏は高齢者ですが、レポートに自分の名前を付けるのが好きな方ですね。

株式投資:日本で植物肉の普及は期待できるか?

10月4日の日経新聞に「植物肉 普及元年」という見出しの記事がありました。2020年は植物肉が普及する年になるということです。

植物肉は、ビヨンドミートなど海外勢が先行しているようですが、コンサルティング会社のATカーニーの調べによりますと、植物肉を含む代替肉市場は今後15年で大きく成長し、2025年との比較で2040年は食肉市場規模が120兆円から180兆円に拡大する中において、培養肉が+41%、代替肉が+9%、従来の食肉が-3%と予測されています。従来の食肉の比率は2025年に90%であるよころ、2040年には40%まで低下する予測です。コンサルティング会社の予想であり、しかも20年先の予想なので信頼性に乏しいところもあるとは思いますが、色々な媒体を見ても、今後の成長は期待されているようです。

この背景にはESG関係があります。牛のげっぷや排泄物から出る二酸化炭素は温暖化への影響があるとされており、牛の飼育や畜産が気候変動の大きな要因の1つとも言われています。このためESGに関心の高い欧米(特にミレニアム世代)で植物肉等の人口肉の需要が高まっていると言われています。日経新聞でも過去に何度か植物肉を取り上げています。

日本では伊藤ハム日本ハム、不二製油グループ本社、モスフードあたりが関連銘柄になるのかも知れません。ただし、日本市場でどこまで伸びるかとなると少し疑問があります。欧米人は味覚音痴と言われる一方、日本人は味への要求水準も高いと言われています。以前にも大豆ハンバーガーなどがあったのですが、大きなヒットに結びつかなかった経緯もあります。とすると、植物肉も日本市場でどこまで広がるか、特に欧州ほどESGに関心が高いとも思えないこともあり、不透明なところもあると思います。

日本の食品メーカーは海外市場で植物肉を販売しようとしても、食品は現地の味に合わせるのが難しく、現状においても食品メーカーの海外売上高比率は低いと思いますので、海外市場での植物肉の売上はそれほど期待できないように思います。とすると、日本株に限定した場合、植物肉はそこまで大きな成長にはならないように想像しますが、世界での関心は高まる傾向にあるようですので、引き続きてホットなテーマの1つとして注視はしていきたいと思います。

DCMが島忠へのTOB(株式公開買付)を公表

10月下旬から上場企業各社の四半期決算(7-9月期)の公表が相次ぎますが、本日は、各社の決算発表日の確認作業をしています。

私の場合、この時期は、業務上、四半期毎に自社の競合上場会社(国内と海外(欧州、米国))の決算資料の詳細分析・纏めをすることになるのですが、業務以外では、①投資先銘柄 ②投資先銘柄の競合会社 ③今後投資を検討する候補銘柄の3つの区分で約40社の決算短信と決算説明会資料の詳細読み込み・分析を行いますので、公私ともに10月下旬から11月上旬はかなりバタバタします。特に、国内の3月期決算企業は、今回のQ2決算では決算説明資料もかなり充実したものになりますので、丹念に読むことになります。

さて、昨日ですが、DCMが島忠へのTOBを公表するとともに、島忠は同時にTOBに賛成する旨の意見表明をしました。TOB金融商品取引法で手続が全て定められていますが、買収される企業は10日以内に意見を表明することとされております。DCMのプレスリリースを読むと今回のTOBのポイントは次のとおりです。

  • 買付価格は普通株式1株につき、金 4,200 円
  • 買付予定数の下限は50.00%
  • 買付予定数の上限については設定せず、応募株券等の総数が買付予定数の下限以上の場合は、応募株券等の全部の買付け等を行う

9月18日の終値に対して45%のプレミアムがついています。9月18日は、TOBを実施するという憶測報道がされ、DCMが「決定している事実はない」旨のお決まりのプレスを出した時点です。

コロワイド大戸屋TOBでは、上限が設定されていましたが、今回のケースは上限がないので、全部買取り義務があります。45%のプレミアムとは、島忠の株主にはとても美味しい話ですね。島忠も意見表明で応募推奨しているようです。伊藤忠のファミマのTOBでは、ファミマは反対ではないものの応募推奨はしませんでしたが、島忠は応募推奨をしています。

ところで、島忠の社長は岡野恭明という方で写真で見ると顔が若かったので、有報で経歴を見たところ1972年生まれで2003年に島忠に入社しています。島忠の保有株式数は、わずか1,000株となっています。オーナー企業の一族の社長かと思っていましたが、サラリーマンの方のようですね。

ところで、島忠の取締役は9名いますが、所有株式数は1人当たり1,000株又は0株となっています。社内のルールがあって1,000株にしているのだと想像しますが、取締役の保有株式数が少ないと株主の目線からの経営が出来ないという批判が良く言われるところで、まさしくその批判があてはまる典型的ケースですね。そういう意味でも上場を継続するより上場廃止の方がよかったと言えるのかも知れません。

株式投資:国土強靭化関連 ー 2021年度予算概算要求より

本日の日経新聞の株価欄は全て「ー」となっており、はじめて見ました。昨日は東証の売買が停止していたので仕方ないですが、本日の紙面欄は記念にとっておこうと思いました。

既に新聞報道のとおり、2021年度予算で各省庁の概算要求が出揃いました。要求総額は100兆円超ということで7年連続となっております。デジタル化、地方活性化、コロナ対応など色々とありますが、概算要求で私が関心をもっているのは、国土強靭化です。

前回もブログに書きましたが、国土強靭化関連でいくつか銘柄を有しており、どの程度の規模が概算要求に入っているののか関心があります。新聞報道では詳細までは記載されていなかったので、概算要求の元資料を見てみました。

資料の名称は、「内閣官房 国土強靱化推進室」の作成した「令和3年度 国土強靱化関係予算概算要求の概要」資料になります。

それによれば、国土強靭感関連では、全体で4兆4,146億円(前年度比+8.8%)で、国交省の要求額は3兆667億円(前年度比+1.02%)となっています。なお、4兆4,146億円の中、公共事業関係費は3兆5,934億円です。

この資料の中では「重点化すべきプログラムにおける主要施策例」が掲載されており、その中で予算の規模が大きいものを2つほどあげます。

1つ目は、「老朽化対策」です。インフラ老朽化対策等のための戦略的な維持管理、更新の推進として、国交省が7,176億円、農水省が4,446億円となっており、いずれも前年度から増額です。2つ目は、「大規模津波等に備えた対策」です。これは農水省が1,181億円、国交省が8,071億円となっております。

私の場合、保有銘柄の関係で関心が高いのは、老朽化対策の方ですが、橋梁点検車を使った橋梁点検などが1つの実施例としてあげられていました。

いくつかの投資先銘柄の決算説明会資料でも国土強靭化計画の市場規模の数値はあるのですが、これまで役所の元資料までは見ていなかったので、大変参考になりました。

アルプスアルパインが政策保有株式45銘柄を削減 - たしかに銘柄数は多いが、1銘柄当たりこの程度の株数で政策保有目的とは?

本日の日経新聞の1面に上場企業が政策保有株式の削減を進め、この9年で18%減という記事がありました。2019年度の政策保有株式の削減率は2010年度以降で最大ということです。コーポレートガバナンス・コードにおいて政策保有株式の削減が求められているところであり、それが浸透していることと思います。

この記事の中で、電子部品のアルプスアルパインがこの1年間で45銘柄を売却したととありました。1年間で45銘柄売却ということは、とてもすごいことです。

というのも、政策保有株式の売却に当たっては、保有に至る過去の経緯や取引関係もあるので、通常は市場で勝手に売却するわけにもいかず(大量に売ると売られた銘柄の株価も大きく下落するので)、1つ1つ先方への事前承諾をとるのが解消の場合の実務手続かと思います。いわゆる「仁義を切る」というやつです。

とすると、アルプスアルパインの実務担当者は大変な苦労をされたのであろうと想像しました。アルプスアルパインは、アルプス電気アルパインが数年前に統合した会社ですが、たしかアルパイン株を海外のアクティビストが保有しており、経営統合株式交換でしたね)の際にアクティビストの対応で大変苦労した経緯があります。

現状、アクティビストがどの程度の株数を保有しているかは不明ですが、恐らくアクティビスト対策か、またはアクティビストの要請があって売却を進めたのだろうと想像しました。

そこで、2019年度のアルプスアルパイン有価証券報告書を見たのですが、驚いたというか、あきれてしまいました。たしかに売却銘柄数は多いのですが、1銘柄当たりの保有株数を見ると100株~1,000株程度がほとんどです。そして、有報では政策保有株式については銘柄別に保有目的を記載する必要がありますが、有報を見ると保有目的として「営業政策(経営情報の入手)」「資材購買政策(経営情報の入手)」といった言葉がたくさん並んでいるのです。

この言葉の意味が全く不明であるし、仮に意味があるとしても、まるで50万円程度で株式投資をしている一般個人株主であるかのように保有株数が数百株から数千株程度で「政策的に保有する」意味が理解できませんでした。1,000株の保有がどう政策的なのでしょうか、社長に質問をしたいくらいです。多分理解されていないでしょう。

この会社は、今の社長はサラリーマンですが、その前は2代目のオーナー社長の会社であり、色々と過去の経緯があって1,000株程度でも、世間には理解できない社長にしか分からない何らかの意義があったのかも知れません。しかし、記事を見た時には、1銘柄当たり数十万株を保有していて、それを1年間で40銘柄超も売却したアルプスアルパインは「すごい」と思いましたが、詳細を見ると、がっかりしたというか、呆れてしまったという話です。そもそも減少銘柄数だけを取り上げて「45銘柄を売却」などと記事を書く記者のレベルもどうかとは思いますが。

バリュー投資は生きている

本日の日経新聞で「バリュー投資は生きている」という記事がありました。独立系運用会社のヴァレックス・パートナーズの代表である安治郎氏が紹介されています。

同氏はバリュー投資をメインにしているということですが、バリュー投資とは、現在の株価がその企業の利益水準や資産価値などから判断して割安にあると考えられる銘柄を買い付ける手法でPERやPBRなどを用いて判断します。バリュー投資と対比して言われるのがグロース投資です。

バリュー投資は、本来のあるべき株価である理論株価より割安な銘柄ですので、将来、市場株価の上昇が期待できるのですが、必ずしも、「割安=株価が将来上昇」というわけではありません。カタリストが必要になります。

このため、優良割安株と万年割安株の見分けが重要になりますが、この点について、同氏の考える視点が書かれています。

1つ目は、2桁の高成長でなくともよいので、収益成長の可能性があること、2つ目は目先が赤字になっても長期的な成長に向けて思い切った投資を決断できる経営者がいるということをあげています。このため、投資先銘柄は、「株主と利害が一致しやすいオーナー経営者が好み」ということだそうです。オーナー経営者は、数十万株以上の株式を保有しているので、株価低迷は自分の財布を痛めますが、サラリーマン経営者は、持っていても数万株程度の保有です。サラリーマン経営者は、株価が下落してもお給料は毎月定額貰え、また保有株数もその程度ですので、オーナー経営者に比べて株価向上の意欲が低いということは良く言われるところであり、そのことを同氏は言っています。ヴァレックス・パートナーズは、運用資金25億円から始め、現在は600億円まで拡大したということです。

中長期の投資では、企業の長期での成長が必要になりますが、そのためには企業が高い参入障壁を持ち、それを長期で維持できるかという点が投資の大きなポイントになるのだと思います。

株式投資:国土強靭化関連ー自治体のインフラ修繕は今だ過半数が未着手

株式投資で「国策に売りなし」という格言があります。国策の1つに国土強靭化があり、私はこの関連でいくつか銘柄を保有しており、国土強靭化関連の情報の動向には注意を払っているのですが、本日の日経新聞で橋・トンネルの5割が未修繕との記事がありました。

国土交通省の2019年3月末の調査では、全国の1万箇所あるトンネルの4割、72万箇所ある橋の1割が早急に修繕が必要ということが言われているところですが、本日の新聞報道によれば、老朽化した地方の橋・トンネルの5割が修繕に今だ着手できていないということです。

国土交通省によれば、築50年以上のインフラの割合は今後15年で道路橋で25%から63%に、トンネルは20%から42%に跳ね上がるということです。2021年度からの社会資本整備重点計画では、自治体にはインフラの再編計画の策定を促すため、修繕以外に集約・廃止計画の策定も求めるようです。とすると、インフラの修繕は減るようにも思えます。

しかし、橋・トンネルのインフラは地域の住民には大事なものも多く、「老朽化した=廃止」ということは、住民の反対も出て簡単にはいかないのではと想像します。結局、必要最低減の集約・廃止はあるものの、修繕の動きが進むのだろうと思います。

ただし、修繕には点検・修理を担う人材が必要なほか、財源も必要になります。とすると修繕にかかるコストが安いこと、修繕の強度が堅固であること、一度修繕をした後の定期点検のコストが抑えられることなどが求められ、そのような技術を持つ銘柄が今後期待できると考えています。

この関連としては、エムビーエス(1401)があります。スケルトン工法という道路・橋・トンネルといった公共建造物のコンクリートの剥離防止する工法を有しており、2015年に東証マザースに上場した株式時価総額55億円程度の小型株です。詳細は同社のホームページを参照して頂ければと思います。

小型株ですのでアナリストレポートはないのですが、過去10年の決算の推移、最近の決算説明動画、特許出願動向や官庁での紹介資料などで情報を収集する限り、今後、大きな成長が期待できる銘柄ではないかと考えています。