中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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光通信による株式の大量買付行為に対してサンセイ(6307)は買収防衛策を発動するか? - 今後の流れを解説します

サンセイ(6307)はビル用ゴンドラ、舞台装置のパイオニア企業ですが(時価総額約40億円)が、大量保有報告書によると光通信(9435)は4月19日時点でサンセイの株を16.47%保有しており、サンセイは買収防衛策を有しているところ、光通信との間で買収防衛策のスキームに基づくやりとりが両社の間で行われています。サンセイのプレスリリースによれば次のとおりです。

  • 8月 7日:サンセイは光通信から大規模買付行為にかかる意向表明書を受領
  • 8月21日:サンセイは光通信に対して大規模買付行為の内容を検討するために必要となる情報の提供を要請
  • 10月9日:サンセイは光通信から情報を受領。取締役会は内容検討を行う

多くの日本企業の買収防衛策は、対抗措置の発動の是非を検討するにあたって大量買付者に一定の情報提供を求め、その情報に基づき、取締役会が一定の期間をかけて対抗措置の是非を判断するとされています。その判断においては、取締役会から独立した独立委員会が関与するケースが多いです。サンセイの買収防衛策も同様のスキームになっています。

8月7日のプレスによると、➀光通信はサンセイの20%以上の株式を取得する意思があること ②取得予定株式数は最大500,000株であること ③買付後の重要提案行為等は予定していないこと ④買収防衛策に定められた手続きを遵守することなどが書かれています。

サンセイの買収防衛策のスキームでは、買収者が大量買付ルールを遵守した場合、独立委員会は取締役会に対抗措置の不発動を勧告するが、いわゆる高裁4類型・強圧的二段会買付等のサンセイの企業価値・株主共同の利益を著しく損なうと認められる場合には対抗措置の発動を勧告することになります。そして、取締役会は、この勧告を最大限尊重して、対抗措置の発動の是非を決定します。

10月9日の翌日から60日以内に取締役会と独立委員会は光通信の大量買付行為の内容を判断し、上記の手続きを検討することになります。

光通信は、買収防衛策のルールを遵守するということのようですので、サンセイの取締役会の判断が終わるまで20%を超えて市場で株式を取得することはないということになります。

光通信はサンセイの経営権を取得したいのかどうか分かりませんが、光通信の意向次第によっては、買収防衛策の発動もあるかも知れません。光通信に経営権を取得されたくないのであれば、買収防衛策に基づく対抗措置(新株予約権の無償割当)を発動するであろうし、買収されることを許容しているのであれば、対抗措置は発動しないということになります。仮に発動となると、光通信は買収防衛策の是非を争うなど法的な対抗をしてくることになるかも知れません。

本件は日経新聞で大きく報道されるようなことは今のところないですが(サンセイの規模があまりに小さいからでしょうか?)、今後、買収防衛策の発動となったような場合には、大きく報道されるかも知れません。今後の動向に注視したいと思います。