中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主の要求が過去最多のようです - エリートであるアクティビストと対峙するためには準備あるのみ

10月17日の日経新聞に「『物言う株主』の要求が最多」との記事がありました。アクティビストによる2020年の日本企業への要求や株主提案が現時点で22件となっており、2019年の年間の19件を既に上回っているということです。驚くのは、米国に次ぐ高水準で、英国とドイツを大きく上回るということです。

単にアクティビストが騒いでいるのであればたいした問題ではないのですが、それに賛同する機関投資家が増えているということが企業にとっては大きな問題です。新聞ではアクティビストと企業の攻防は激化するであろうということが書かれていました。

では、日本の上場企業としては何をすべきかですが、2つあり、まず世の中の動向についてアンテナを高くして把握するとともに、もう1つが有事に備えての避難訓練を十分にしておくということにつきると思います。

1つ目については、まず、政府の最近のコーポレートガバナンス改革の動きを把握し、また、資本市場関係者がどういうことを考えており、自社をどう見ているかをしっかり把握することが肝要です。直近の動きでいうと、経済産業省が7月末に公表した「事業再編実務指針」、「社外取締役ガイドライン」であったり、10月20日から再開されるコーポレートガバナンス・コード改訂に向けた金融庁のフォローアップ会議の議論の行方をしっかり把握することが肝要です。これらの内容をしっかりと把握して、世の中では何が言われているかをしっかりと認識することが大事になります。

そして2つ目が、有事の場合を想定してのリスクを把握するとともに、出現に備えた避難訓練をしておくことが必要と思います。企業の中には、火災の際や工場が爆発した時の対応マニュアルなど作成しているところも多いかと思います。であれば、そういうレアケースに時間を割いているのであれば、アクティビストに対峙するマニュアルを準備して、関係部門で共有して有事の対応をしておくことが重要ではないでしょうか。

アクティビストというのは投資のプロであり、かつ、日本であれば、東京大学京都大学一橋大学大阪大学、どんなに悪くても旧帝大出身という頭の良いエリートばかりです。海外のアクティビストも名門大学を出ているエリートがかなり多いと思います。

一方、上場企業サイドの役員はどうかというと、大手総合商社、メガバンク、電力をはじめとしたインフラ企業などのごく一部の上場企業は一流大学出しか役員になれませんが、そうでない多くの上場企業では、二流又は三流の国立大学・私立大学出身が役員というケースも結構多く(私の証券会社時代の経験では、社長~専務クラスはさすがに一流大卒が多い)、正直、エリートであるアクティビストに比べてしまうとレベルが落ちるケースも多いかと思います(先日、書店で役員四季報で、10年ほど前に投資をしていた売上高8,000億円程度の企業の役員欄をたまたま見たところ、「こんな大学あるの?」といった低いレベルの国立大・私立大卒の男女の役員が名を連ねており、よくこんな大学を出た人を役員にさせているなとふと思ったりしました。偏差値の低い大学卒しか新卒で入らないのでしかたないところではありますが)。

ということで、多くの上場企業の方は、アクティビストという頭脳明晰なエリート集団と対峙することになり、かつその優秀な方が自社を徹底分析しているわけですから、それに負けないようにするには、前述の2つの準備をきっちりとしておくことが何よりも大事かと思います。