中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

【コーポレートガバナンス報告書の読み方①】GPIFが「優れたCG報告書」を公表

昨日は、業務上の必要があり色々な企業の統合報告書を半日ほど時間をかけて読んでいましたが、日清食品の統合報告書が印象的でした。次のURLのとおりですが、なかなかユニークです。遊び心が満載であり、こういう統合報告書を作成すると社内でも幅広い人に統合報告書を読んでもらえるし、個人投資家にも親しんで貰えるのだと思います。 

VALUE REPORT (統合報告書) | 日清食品グループ

さて、3月15日にGPIFが次のとおり「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ『優れたコーポレート・ガバナンス報告書』」を公表しました。

https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20220315_corporate_governance_report.pdf

昨年の6月に改訂のコーポレートガバナンス・コードを踏まえてのコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)を評価した模様です。丸井、積水ハウス東京海上ホールディングスがトツプ3ですが、他に合計で40社の上位企業が掲載されています。

CG報告書はCGコードに基づいて開示が求められているものですが、非常に読みにくいのがネックです。視認性が悪い。従って、CG報告書以外にコーポレートガバナンスガイドラインコーポレートガバナンス・コード対比表を作成している企業も多いところです。

コーポレートガバナンス・コードは3年に1回の改訂ですので、次回改訂は2024年かと思います。CG報告書は、視認性が悪いものではありますが、企業のコーポレートガバナンスについて唯一の網羅的開示がされている重要書類ではありますので、しっかりと目を通すことは大事です。けど、いかんせん読みにくいという方も多いかと思います。

そこで、次回以降、コーポレートガバナンス報告書の読み方というタイトルでブログで連載をして行きたいと思います。

CGS研究会(第3期)ー 第3回会議が2月21日に開催

コーポレートガバナンスシステム研究会(CGS研究会)の第3回会議が2月21日に開催され、第3回の事務局資料が次のとおり公表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/pdf/3_003_03_00.pdf

第3回会議では「執行側の機能強化に関する各論」として、 経営戦略・経営計画の策定、 KPIの設定・中長期インセンティブ報酬の活用などが議論された模様です。資料を見る限りでは、議論の詳細は分かりませんが、複数議決権株式の活用なども記載されており、今後の活用の可能性も出てくるのでしょうか? 

ESG評価規範の策定検討開始 ー ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会

最近、近い将来の副業開始に向けた準備に本腰を入れているところですが、そうなると本業の中でも副業と関連性の乏しい業務(一部ですが)は、無駄な時間と考え、関心とやる気がゼロになり、ほぼやっつけ仕事となっています。一方、副業に密接な関連のある本業への集中度は格段に高まっており、総じて考えると、副業を意識すると本業にもプラスになるというのが最近、強く感じるとことです。

さて、3月9日の日経新聞にも記事がありましたが、金融庁が2022年中にも企業のESGの評価機関を対象に評価規範を策定するようです。金融庁のホームページで検索したところ、 次の「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」のようです。

「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」の設置について:金融庁

 企業のESGの取組みについては、評価機関が独自に「勝手評価」をしているところですが、企業側としては、「どう評価してこのスコアになったの?」と大いに疑問を感じるところも多いのが現状です。とすると、なるべくESGに関する事項は漏れなく開示しておくのが無難ということで、企業では、経営指標や企業財務が分からない「ESGおじさん・おばさん連中」の無駄な作業が増え、コストがかかることになります。きちんとした評価規範が出来ると無駄な作業が減るかと思います。今後の分科会で議論の動きを注視したいと思います。

統合報告書作成のすすめ ― 作成するメリットは? 誰が読むの?

本日は、東京大学先端科学技術研究センターの専任講師の小泉悠氏の日本記者クラブでの発表をツイッターで見つけたので、朝からYou tubeで視聴しています(1時間40分と長いのですが)。ツイッターを1年前から始めたのですが、最新の情報はツイッターで得られるので重要な情報源です。小泉悠氏はロシアの軍事研究の専門家の方のようですが、ウクライナとロシアの現状がとても分かりやすく解説されています。是非視聴されると良いかと思います。お薦めです。

さて、社内のIR部門と連携して本年度の統合報告書の作成に着手していますが、先日、日経新聞で統合報告書について記事がありましたので、あらためて統合報告書について記事を書いてみたいと思います。日経新聞電子版の記事は次のとおりで、この数年で統合報告書を作成する企業が増えているという内容です。

統合報告書、665社が発行 東証市場再編にらみ中堅でも: 日本経済新聞

では、統合報告書のメリットは何でしょうか?株主総会の事業報告や有価証券報告書という開示媒体があるのに、なんで統合報告書が必要なのかと思う方もいるかも知れません。私も10年前はそんな感覚でした。

最大のメリットは、何らの制約なく読み物として自由に記載することが出来るという点です。事業報告は会社法に基づく資料であり、有報は金融商品取引法に基づきます。特に有報は虚偽記載があると罰則もあります。ということでお堅い開示資料のため、自由に記載することに躊躇するということです。

そこで、「読み物」として統合報告書の出番となるわけです。ひと昔前までは、アニュアルレポートに数値だけがびっしり書き込まれていましたが、財務数値以外の記述情報が統合報告書では盛り込まれているのです。

では、統合報告書は誰のために作成するのでしょうか?取引先や従業員のためでしょうか?

違います。取引先や従業員の中には読む方もいるかも知れませんが、大多数の方は読まないです。得意先は、良い製品を納めてくれることにしか関心はないですし、仕入先は代金を支払ってくれるのが最大の関心事項です。従業員は統合報告書など読むより、社内のイントラ情報や社内報を読んでいます。従業員の方で、真剣に統合報告書を読んだという方は私のまわり(生真面目な本社のスタッフ部門の方々)で聞いたことはありません。

では、誰のために作成しているのか、つまり読者層は誰かというと、それは機関投資家、その中でも中長期で株式投資をする投資家です。短期投資家は短期の決算数値しか興味がありません。四半期決算、上・下半期決算、通期業績です。従って文章でつらつら書かれた情報などは関心はないのです。一方、5年、10年といったスパンで投資をする投資家にとっては短期での業績はあまり意味がありません。何故ならば、企業の業績は1、2年の期間では良い時もあれば、悪い時もあるからです。短期で見ると上下のブレはあるけど、長期で見ると上昇トレンドにあるよね、というのが中長期投資家での関心事項です。

それでは統合報告書の作成に当たってどういうことを盛り込めばよいでしょうか?陥りがちな注意点を次回記事に書きたいと思います。

環境・人権団体の株主提案が日本でも増えるのでしょう ーでは企業はどう対策をしておくべきか?

3月6日の日経新聞に米国のアップル社に対する株主提案の記事が掲載されていました。以下は日経新聞電子版の記事です。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58831040V00C22A3EA5000/

米アップルに対して、人権問題について監査を求める株主提案が可決されたようです。ESGへの関心の高まりとともに、海外ではこの手のESG関連の株主提案が増えています。特に環境団体の提案は多く、環境アクティビズムとも言われています。日本でも最近表面化したケースとしては、三菱UFJフィナンシャル・グループの昨年の定時株主総会で環境団体が株主提案をしました。以下が参考になります。

https://www.mufg.jp/dam/ir/stock/meeting/pdf/supplementary2106_ja.pdf

こういったESG関連の株主提案でやっかいなのは、必ずしも株価向上を目指していないとことです。投資ファンドなどのアクティビストであれば、ROE向上、増配、自己株取得、事業売却等の株価向上に直結する施策をせまり、株価が向上した後、アクティビストは保有株式を売却することでキャピタルゲインを得るという明確なストーリーがあります。

けど、ESG関連で株主提案をする場合には、必ずしも株価向上のような経済合理性を追求しているわけではないケースが多いということです。純粋に「環境を良くしていこう」、「人権問題を社会からなくそう」という営利に関係しない精神で活動を行うケースが多いように思われます。では、上場企業はどういう対策をとればよいでしょうか?

シンプルですが、世の中のESGに関する動向へのアンテナを高く張り情報収集を怠らず、その動きに対する他の日本企業の対応を注視し、それに準じた一定程度の方策を講じておけばよいのです。結局のところ、ESG提案といっても、株主提案が可決するには、過半数の株主の賛同が必要なわけですから、他の大勢の機関投資家が会社に賛同してくれるような一定程度の対応をしておけばよいのです。また、一定の対応をしておくことで、ESG提案の際には機関投資家も会社側に賛同しやすくなるのだと思います。この点、最近流行りのESGコンサルなどに上手く利用されて、過剰な環境・人権体制を構築して、コンサルだけが儲かるというようなことにならないよう企業は注意する必要があります。

取締役会議長が社外取で機能するのか?

本日は1週間に1回の在宅勤務日です。本日は株価の動きを見ながら、インプット中心の仕事に励む予定です。株式の買い増しをしたいのですが、ウクライナ情勢が読めない中、なかなか踏み込めない状況が続きます。

3月9日の日経新聞によれば、東証プライム企業の取締役会で議長が社外取締役の企業は3%ということです。次が日経電子版の記事になります。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58908500Y2A300C2DTA000/

取締役会の在り方や実効性評価をする業者などと会話をすると、議長を社外取にすることを求める傾向が強いのですが、疑問があります。議長を社外取にすることを求めるのは、経済産業省企業統治に係るガイドライン等でも記載されており、また、英国では議長とCEOの兼務が推奨されていないことは分かります。

この背景としては、社外取を議長とすることで幅広く議題を設定したり、監督機能を強化することにあるかと思います。けど、それが本当に機能するには社外取に高い企業経営の能力が必要となります。

仮に、社外取に多い弁護士などが議長になったらどうでしょうか?事業経験もなければ、企業会計・財務の実務経験もないため、結局は「法的には~」という議論になってしまいます。弁護士に限らず大学教授も同じです。公認会計士もまあ同じですね。企業財務には詳しい点では、弁護士や学者よりは良いですが事業経験がゼロです。

要は、何がいいたいかというと、議長には企業経験を核とした経営全般の能力・経験が必要ということです。事業の全体を把握する能力・経験です。特定の分野だけ詳しいということでは全く不十分です。深い事業経験があって、はじめて企業の取締役会を議長として采配をふるうことが出来るということです。そういう経験や能力のある方が議長にならないと取締役会が全く機能しないことになってしまいます。

社外取が議長を務める企業は68社ということですが、議長は他社での経営トップを務めた方が多いようですが、なかには元役人という方もいるようですね。役人に企業経営が分かるのでしょうか? もっとも事業が政府との関係が深く、そっち方面での情報収集やパイプを期待して議長にしているということであれば、話は別ですが。いずれにせよ、海外の事例をあげて、一律に社外取を議長にした方がよいというように短絡的に考えたり推奨するのは適切ではないということです。

【今年の株主総会のポイント】機関投資家の議決権行使基準をしっかりと読みましょう

本日の日経平均株価は764円安と大きく下げました。私の保有銘柄も大きく下げましたが、ウクライナ情勢のニュースをブルームバーグツイッター等のニュースで見ると先行きは未だ不透明で、明日以降も更に日経平均株価が大きく下げるのではと思い、本日は買い増しを見送りました。明日以降も一段と下げたところで買いを入れるか、明日も仕事をしながらも、日中は株価の動きにも注視する一日になりそうです。

さて、3月4日の日経新聞関西スーパー経営統合を巡る株主総会機関投資家11社が反対したという記事が掲載されていました。以下は日経新聞電子版の記事です。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC029BU0S2A300C2000000/

この統合では、スーパーのオーケーが関西スーパー敵対的買収を試みていましたが、関西スーパー株主総会で3分の2以上の賛成により経営統合が可決されました。けど、かなりの数の機関投資家経営統合に反対したようですね。国内機関投資家の賛否実績については、各社のホームページでの議決権行使結果で開示されています。

前にもブログで何度か書きましたが、機関投資家は議決権行使に当たっては、経済合理性に基づきより合理的に判断するようになっています。理由は至極シンプルで、議決権行使結果を細かく個別開示することになり、結果、アセットオーナーに対して各議案について、賛成又は反対した理由を説明する必要があるからです。

分かり易くいうと、関西スーパー経営統合に賛成するということは、アセットオーナーに対して、オーケーの提示した市場株価より高いTOB価格よりも経営統合での関西スーパー株価の向上が期待できることを説明しなければならないということです。今回、関西スーパー経営統合に反対した11社の機関投資家は、オーケーのTOB価格の方が優位と判断したということです。

さて、今年の定時株主総会においては、企業各社は機関投資家の議決権行使基準をしっかりと目を通す必要があります。今年のポイントは政策保有株式の縮減、女性取締役の数、社外取締役比率あたりでしょうか。買収防衛策議案は社外取締役比率が過半数でないと賛成は困難と見てよいかと思います。また、株主提案の関係では、ESG関連の株主提案に注意する必要があります。株主提案に対して明確な賛成基準を設定している機関投資家は少ないですが、野村アセットマネジメント他数社あります。

【米国失業率】2022年2月は3.8%

本日は「千年投資の公理 - 売られ過ぎの優良企業を買う」(著:パット・ドーシー)を読んでいます。中長期での株式投資の基礎的なことが書いてある書籍ですが、あらためて初歩的なことを確認する意味で読み直しています。

さて、3月4日に米労働省が2022年2月の米国失業率を公表しました。以下の日経新聞電子版にも記事されていますが、失業率は3.8%ということで、1月より低下したようです。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58820600V00C22A3EA4000/

米国の雇用は、個人消費が牽引して景気が回復していますが、一方、労働者はサービス、飲食、小売等を中心に自己の賃金待遇に不満を持つ人が増え、賃金上昇まで就業を控える動きがあると最近言われていましたが、この動きもまだ続いている様子ですね。明日、アイフィスのエコノミスト・レポートでも失業率について、何か証券会社のレポートが出ているか確認したいと思います。

【今年の株主総会のポイント】政策保有株式を記載する場合には取締役選任議案に絡めて視認性を高めるのが大事です

ウクライナ情勢で日経平均株価終値が昨日は▲591円でした。株価の下げの局面で買増しを進めたい銘柄があり、キャッシポジションを厚くするため、日経平均が下げる数日前に一部の保有銘柄を急ぎ売却しました。来週から買い増いを進めたいところですが、ウクライナ情勢で日経平均株価が来週以降も大きく下げるかどうか要注視です。けど長期化すると原材料・輸送費が大きく上がるので、企業の収益にマイナス影響となるので悩ましいところです。そういう点では、コスト体質のしっかりした銘柄を投資先としておくのが重要とあらためて思います。

さて、3月期決算企業においては、今年の定時株主総会の準備に向けて本格的な準備に入る時期かと思います。関係各部門が集まり、キックオフミーティングを開始する企業も多いのではないでしょうか。本日は政策保有株式の招集通知への記載について紹介します。

今年から国内機関投資家も政策保有株式に対する議決権行使基準を強化しています、つまり、純資産に占める政策保有株式の合計金額が10%、20%といったように大きい場合、経営トップの取締役選任議案に反対するというものです。

ここで注意すべきは、機関投資家が政策保有株式の金額を知るのは、有価証券報告書ということです。つまり、今年の定時株主総会でいうと、政策保有株式は2021年3月期の有価証券報告書に記載の政策保有株式になるのです。1年前の時点の情報がベースになるということです。このため、この1年間で政策保有株式を減らしてもそれが開示されるのは、2022年3月期の有価証券報告書のため、株主総会の時点では開示されないということです。

では、企業としては、どうすればよいかというと、本年の定時株主総会の招集通知で政策保有株式を売却したこと、2022年3月末現在の政策保有株式の金額などを明確に記載することが必要になります。機関投資家は招集通知を見て判断するので、そこに記載しておけば、それを見て議決権を行使することになります。

ここで大事なのは、分かり易く、明確に記載するということです。機関投資家は総会シーズンに何百社という企業の招集通知を短時間で読むことになるので、出来るだけ企業としては、見てもらいたいところは簡潔かつ明確に記載することが重要です。昨日、NISSHAが次の開示をしています。

https://www.nissha.com/news/2022/03/ersrhs00000140or-att/disclosure20220304.pdf

招集通知に記載したようですが、ISSが見落としていたということでの反論です。NISSHA株式はわずかながら私は保有していますので、昨日、総会の招集通知が送付されてきたので、今開いて見ているのですが、政策保有株式について2021年度は15.2%と記載されていますね。けど、記載場所が選任議案から少し離れたところにありますので、ISSは見落としたのかも知れません。NISSHAも記載に工夫の余地はあったかと私は思います。ということで、株主総会招集通知に明確に記載するのが重要です。

ユニ・チャームの定款一部変更案 ー 事業目的の記載を大きく変更するようで補足説明資料を公表

本日の午前中は10日ぶりのテレワークです。午後はオフィスに行く必要があるのですが、久しぶりのテレワークは気分が楽です。けど、2週間に1回しか出社しない方や、なかには1ヵ月に1回しか来ない役職定年が近い人も世の中には結構いるようですね。この状態が2年も続くと今後の社会復帰は難しいのでは思ってしまいます。職場に来て仕事をするという当たり前の環境がこの2年でなくなったわけですが、特にコロナ禍で社会人になった方などは、気軽に相談したり、仕事帰りにお酒を飲んだりする上司、先輩、同僚が身近にいないため、今後の人間関係において何らかの影響も出るのかなと思ったりします。まあ、ドライな人間関係というのも楽ですが。

前置きが長くなりましたが、本日の新聞報道でユニ・チャームの記事が出ていました。内容はユニ・チャームの定時株主総会の定款変更議案で機関投資家に補足説明の資料を公表したというものです。

ユニ・チャームの定時株主総会では、定款一部変更議案が上程されているようで、事業目的を大きく変更するようです。招集通知は次のとおりです。

https://www.unicharm.co.jp/content/dam/sites/www_unicharm_co_jp/pdf/ir/convocation/FY2021_J_Invitation_of_62th_Shareholders_Meetings.pdf

「事業内容の記載を整理するとともに、今後取り扱う可能性のある事業に機動的に対応できるようにするため、当社定款の事業目的を変更する」ということでかなり事業目的の内容を変更するようですね。

これに対して、議決権行使助言会社機関投資家から問合せがあったようで、次のとおり補足説明資料を公表しています。

https://www.unicharm.co.jp/content/dam/sites/www_unicharm_co_jp/pdf/ir/news/2021/J_Supplemental%20Explanation%20to%20the%20Proposal%20No.%201%20of%20Our%2062nd%20Ordinary%20General%20Meeting%20of%20Shareholders.pdf

たしかに、細かく規定されていた定款の事業目的をばっさりと3つまでに簡素化すると、今後の事業内容が不透明という意見も出るのかも知れません。個人的には事業目的を広くしたところでそれほど気にするところはないようにも思いますが、気にする機関投資家もいるということですね。

議決権行使助言会社のISSが株主提案に賛成推奨した事例は分析が大事です

本日は、日本・米国・欧州・中国のマクロ経済指標の整理をする予定です。社内で毎月の定期的な業務なのですが、果たしてこの統計値で良いのかと考え直し、メンバーとともに再度、マクロ指標の意義と社内で展開する必要性の高いものはどれかなどの整理に一日時間をかける予定です。

さて、昨日の日経新聞にも記事がありましたが、投資ファンドから富士ソフトは株主提案を受けて、取締役会は次のとおり反対意見を公表しているところです。

ニュース(20220301)|株主提案等に対する当社取締役会意見に関する補足説明 | 富士ソフト株式会社

要するに、株主からは社外取締役の選任を受けているようですね。となると当然ながら、議決権行使助言会社が株主提案に対して賛否のいずれの推奨をしているのかが気になりますが、ISSは賛成推奨をしたようですね。

ISSは、富士ソフトが同業他社と比較して営業成績が低く、ROEやROICが低迷している要因は不動産への多額の投資にあり、株主提案の社外取締役を2名追加することが、資本配分を最適化させ、今後当社が進むべき道を決定することに役立つとの理由から、本株主提案に対して賛成推奨をしたようです。それに対して、富士ソフトは3月2日に反論を次のとおり公表しています。

ニュース(20220301)|議決権行使助言会社(ISS)のレポートに対する当社の見解につい | 富士ソフト株式会社

詳細は読めていませんが、この事例の分析は大事と思います。社外取の選任の株主提案は他社でも頻繁に今後起こることであり、外国人株主比率の高い上場企業各社は、ISSが賛成推奨した理由、特に取締役の株主提案はしっかり分析した方がよいと思います。でないと、自社に株主提案があった時に議決権行使助言会社が株主提案に賛成して社内は大混乱という事態に発展することになります。

【求人広告掲載件数】2022年1月はYoYで+29.7%

全国求人情報協会が2022年1月の求人広告掲載件数を2月25日に公表しました。

調査発表/求人広告掲載件数 – 全国求人情報協会

月の職種分類別件数はYoY(前年同月比)で+29.7%で、主要職種で見ると販売が+14.4%、サービス(給仕)が+67.1%、運搬・清掃・包装等 が+23.7%、サービス(調理)が+63.2%です。サービス(給仕)とサービス(調理)が外食や居酒屋関連でしょうか。ただ、新聞報道等によれば、前年はコロナウィルスの感染「第3波」の渦中で低水準であったこともあり、今回の高い伸び率となったようです。

社外取締役の多い企業では社外取の意見や果たした役割の具体的な開示が重要

統合報告書を作成する企業も多いかと思いますが、それに関して最近思うところが1つあります。東証のプライム市場の企業には、社外取3分の1以上が求められていることもあり、社外取を増やす企業がだいぶ増えているところですが、ひとまず増員することで安心と思わている企業も多いのではないでしょうか?

機関投資家の視点からはこれだけでは不十分です。社外取締役は所詮は「社外者」です。つまり、月1回程度の取締役会などに参加するのが主な活動であり、社内取と比較して、有する情報の量と質の点では劣るのが常です。ある企業の社外取のインタビュー記事を読むと「社外取に就任してこの1年は勉強に集中した」というような発言がありました。世の中のほとんどの企業で社外取の最初の1年目はこんな感じだろうなと思います。このような状況ですので、機関投資家から見ると社外者である社外取は、「本当に機能しているの?」「役に立っている?」という点が疑問なのです。特にその員数が多いほど、心配になるのです。

では、企業側はどうすればよいのかと言うと、毎年更新する統合報告書で取締役会のこの1年間の議題、討議の内容、社外取のメッセージを詳しく開示することが重要になります。これまでブラックボックスになっていたところを公表することで、機関投資家に安心感を与えることが出来ます。

勿論、全てを詳細に開示することは必ずしも適切ではないと思います。文字にするとそれが独り歩きするリスクもあり、誤解を招くこともあるからです。従って、ある程度詳しく開示をして、その先のより細かい内容は機関投資家とのエンゲージメントで経営トップ又はそれに準じた立場のマネジメントから口頭で説明するというのが妥当だと思います。

中長期投資の機関投資家は会社の内情については、会社サイドが想像する以上に、情報がないが故に分かっていないということを念頭に置いて、統合報告書を作成することが大事です。

スタンダード企業にも積極的なIR活動を期待します

中小型銘柄への投資で一番悩ましいのは、対象企業がIRに積極的ではなく、またアナリストのカバレッジがないという点です。特に、東証1部でありながらスタンダード市場を選択したような企業はIRへの関心が一段と低い企業が多い印象を受けます。

私の某投資先銘柄などは、決算説明会動画は公表しているものの、肝心のスピーカーである社長(この会社はオーナー社長が高齢のため、最近、サラリーマン社長に交代)が資料の記載内容を棒読みするだけのケースもあります。

こうなると、決算説明会に参加していないと細かい情報は得られず、IR活動も消極的なため株価が低いという状況が継続していたりします。理論株価は市場株価より高いといっても、新製品開発等の大きなニュースが公表されない限り、永久に割安株状態が続くということになりかねません。ということで、私の場合、投資先銘柄のIR部門にメールなどで時々質問をしているのですが、先日、ある投資ファンドが興味深い書簡を次のとおり公表していました。

2022年2月22日 – 西本Wismettacホールディングス株式会社への書簡の送付について | Hibiki Investment News

書簡の宛先企業の開示情報は私は見ていませんので、詳細コメントすることはできませんが、一般論としては、この書簡で記載されていることは「多くの中小型銘柄に当てはまるよな」と思います。基本的な内容ではありますが、個人投資家の方は一読されると勉強になるかと思います。

東証1部で、今回、スタンダード市場を選択した企業も多くあります。プライム市場でないから、投資家との対話や開示を粗末にするのではなく、上場している以上は企業価値、つまり株価を向上させるということを強く意識して欲しいと思います。

機関投資家協働対話フォーラムが企業にレターを送付 ー 事前警告型買収防衛策について

本日は休みのため、投資先銘柄の情報整理を行う予定です。私の場合、投資先は中小型銘柄のためアナリストのカバレッジがなく(=アナリストレポートがない)、そもそもIRにそれほど積極的でない企業が多いので、新聞、ネット、ツイッターで情報を収集した後に投資先企業のIR部門に定期的にメールで問い合わせをしたりしています。3月18日に四季報が発売されるので、それまでに情報収集をして、そのタイミングで質問をする予定です。本当はオンライン株主総会が開催されるのであれば、そこでも議長に色々と質問をしたいところです。

さて本題ですが、機関投資家協働対話フォーラムが2月22日に「資本市場の評価を下げるリスクを踏まえた買収防衛策の必要性の開示」についてのレターを企業に送付したことを次のとおり公表しました。

https://www.iicef.jp/pdf/jp/pdf_jp_20220210_01.pdf?20220214

レターにも記載されていますが、機関投資家協働対話フォーラムには国内大手機関投資家7社が加盟しています。従前から参加機関投資家の数があまり増えていませんね。恐らく数が多いと機関投資家間での意見集約に手間がかかることが参加企業数が少ない理由の1つと思われます。

買収防衛策については、過去にもフォーラムはレターを公表していますね。ブログでも過去に記事を書いていますので、最後に再掲します。今回のレターで記載されている内容は、いずれも合理性があると私は考えます。特にレターに記載の次の点などは、買収防衛策導入企業には反論は難しいところです(太字は強調するために私が付けました)。

何より重要な点は、買収防衛策という仕組みが、十分な成果を上げていない経営に買収という変化をもたらす機会を制限することで、経営陣の自己規律性を弱める性格を持つことです。我々投資家は、経営陣が、買収防衛策を導入することによって、正当な目的を持った戦略的買収でも経営陣の意に沿わない買収提案は阻止できると誤解することで、株主からの付託に対する緊張感が薄れ、経営に甘さが出るのではないかと懸念しています。場合によっては、株価の低迷を放置することにつながり、買収防衛策の導入・継続の真の目的は経営陣の自己保身ではないかと考え、経営陣に対する不信感を募らせることもあります。

買収防衛策を有する企業は、しっかりと自社の考えを整理して公表する必要があるように思います。世の中は、有事導入型の買収防衛策の流れに変わったといえるので事前警告型はいずれなくなるのだと思います。もっとも機関投資家(海外・国内)の保有株式比率の小さい企業は、気にせずに継続するということでも問題はないとは思いますが。