中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

環境・人権団体の株主提案が日本でも増えるのでしょう ーでは企業はどう対策をしておくべきか?

3月6日の日経新聞に米国のアップル社に対する株主提案の記事が掲載されていました。以下は日経新聞電子版の記事です。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58831040V00C22A3EA5000/

米アップルに対して、人権問題について監査を求める株主提案が可決されたようです。ESGへの関心の高まりとともに、海外ではこの手のESG関連の株主提案が増えています。特に環境団体の提案は多く、環境アクティビズムとも言われています。日本でも最近表面化したケースとしては、三菱UFJフィナンシャル・グループの昨年の定時株主総会で環境団体が株主提案をしました。以下が参考になります。

https://www.mufg.jp/dam/ir/stock/meeting/pdf/supplementary2106_ja.pdf

こういったESG関連の株主提案でやっかいなのは、必ずしも株価向上を目指していないとことです。投資ファンドなどのアクティビストであれば、ROE向上、増配、自己株取得、事業売却等の株価向上に直結する施策をせまり、株価が向上した後、アクティビストは保有株式を売却することでキャピタルゲインを得るという明確なストーリーがあります。

けど、ESG関連で株主提案をする場合には、必ずしも株価向上のような経済合理性を追求しているわけではないケースが多いということです。純粋に「環境を良くしていこう」、「人権問題を社会からなくそう」という営利に関係しない精神で活動を行うケースが多いように思われます。では、上場企業はどういう対策をとればよいでしょうか?

シンプルですが、世の中のESGに関する動向へのアンテナを高く張り情報収集を怠らず、その動きに対する他の日本企業の対応を注視し、それに準じた一定程度の方策を講じておけばよいのです。結局のところ、ESG提案といっても、株主提案が可決するには、過半数の株主の賛同が必要なわけですから、他の大勢の機関投資家が会社に賛同してくれるような一定程度の対応をしておけばよいのです。また、一定の対応をしておくことで、ESG提案の際には機関投資家も会社側に賛同しやすくなるのだと思います。この点、最近流行りのESGコンサルなどに上手く利用されて、過剰な環境・人権体制を構築して、コンサルだけが儲かるというようなことにならないよう企業は注意する必要があります。