中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

統合報告書作成のすすめ ― 作成するメリットは? 誰が読むの?

本日は、東京大学先端科学技術研究センターの専任講師の小泉悠氏の日本記者クラブでの発表をツイッターで見つけたので、朝からYou tubeで視聴しています(1時間40分と長いのですが)。ツイッターを1年前から始めたのですが、最新の情報はツイッターで得られるので重要な情報源です。小泉悠氏はロシアの軍事研究の専門家の方のようですが、ウクライナとロシアの現状がとても分かりやすく解説されています。是非視聴されると良いかと思います。お薦めです。

さて、社内のIR部門と連携して本年度の統合報告書の作成に着手していますが、先日、日経新聞で統合報告書について記事がありましたので、あらためて統合報告書について記事を書いてみたいと思います。日経新聞電子版の記事は次のとおりで、この数年で統合報告書を作成する企業が増えているという内容です。

統合報告書、665社が発行 東証市場再編にらみ中堅でも: 日本経済新聞

では、統合報告書のメリットは何でしょうか?株主総会の事業報告や有価証券報告書という開示媒体があるのに、なんで統合報告書が必要なのかと思う方もいるかも知れません。私も10年前はそんな感覚でした。

最大のメリットは、何らの制約なく読み物として自由に記載することが出来るという点です。事業報告は会社法に基づく資料であり、有報は金融商品取引法に基づきます。特に有報は虚偽記載があると罰則もあります。ということでお堅い開示資料のため、自由に記載することに躊躇するということです。

そこで、「読み物」として統合報告書の出番となるわけです。ひと昔前までは、アニュアルレポートに数値だけがびっしり書き込まれていましたが、財務数値以外の記述情報が統合報告書では盛り込まれているのです。

では、統合報告書は誰のために作成するのでしょうか?取引先や従業員のためでしょうか?

違います。取引先や従業員の中には読む方もいるかも知れませんが、大多数の方は読まないです。得意先は、良い製品を納めてくれることにしか関心はないですし、仕入先は代金を支払ってくれるのが最大の関心事項です。従業員は統合報告書など読むより、社内のイントラ情報や社内報を読んでいます。従業員の方で、真剣に統合報告書を読んだという方は私のまわり(生真面目な本社のスタッフ部門の方々)で聞いたことはありません。

では、誰のために作成しているのか、つまり読者層は誰かというと、それは機関投資家、その中でも中長期で株式投資をする投資家です。短期投資家は短期の決算数値しか興味がありません。四半期決算、上・下半期決算、通期業績です。従って文章でつらつら書かれた情報などは関心はないのです。一方、5年、10年といったスパンで投資をする投資家にとっては短期での業績はあまり意味がありません。何故ならば、企業の業績は1、2年の期間では良い時もあれば、悪い時もあるからです。短期で見ると上下のブレはあるけど、長期で見ると上昇トレンドにあるよね、というのが中長期投資家での関心事項です。

それでは統合報告書の作成に当たってどういうことを盛り込めばよいでしょうか?陥りがちな注意点を次回記事に書きたいと思います。