中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

取締役会議長が社外取で機能するのか?

本日は1週間に1回の在宅勤務日です。本日は株価の動きを見ながら、インプット中心の仕事に励む予定です。株式の買い増しをしたいのですが、ウクライナ情勢が読めない中、なかなか踏み込めない状況が続きます。

3月9日の日経新聞によれば、東証プライム企業の取締役会で議長が社外取締役の企業は3%ということです。次が日経電子版の記事になります。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58908500Y2A300C2DTA000/

取締役会の在り方や実効性評価をする業者などと会話をすると、議長を社外取にすることを求める傾向が強いのですが、疑問があります。議長を社外取にすることを求めるのは、経済産業省企業統治に係るガイドライン等でも記載されており、また、英国では議長とCEOの兼務が推奨されていないことは分かります。

この背景としては、社外取を議長とすることで幅広く議題を設定したり、監督機能を強化することにあるかと思います。けど、それが本当に機能するには社外取に高い企業経営の能力が必要となります。

仮に、社外取に多い弁護士などが議長になったらどうでしょうか?事業経験もなければ、企業会計・財務の実務経験もないため、結局は「法的には~」という議論になってしまいます。弁護士に限らず大学教授も同じです。公認会計士もまあ同じですね。企業財務には詳しい点では、弁護士や学者よりは良いですが事業経験がゼロです。

要は、何がいいたいかというと、議長には企業経験を核とした経営全般の能力・経験が必要ということです。事業の全体を把握する能力・経験です。特定の分野だけ詳しいということでは全く不十分です。深い事業経験があって、はじめて企業の取締役会を議長として采配をふるうことが出来るということです。そういう経験や能力のある方が議長にならないと取締役会が全く機能しないことになってしまいます。

社外取が議長を務める企業は68社ということですが、議長は他社での経営トップを務めた方が多いようですが、なかには元役人という方もいるようですね。役人に企業経営が分かるのでしょうか? もっとも事業が政府との関係が深く、そっち方面での情報収集やパイプを期待して議長にしているということであれば、話は別ですが。いずれにせよ、海外の事例をあげて、一律に社外取を議長にした方がよいというように短絡的に考えたり推奨するのは適切ではないということです。