コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

プライム市場で社外取締役3分の1以上は本当に必要か? ー GMOインターネットの2018年株主総会での社長意見が参考になります

今回の東証上場区分でスタンダート市場を選択した企業も多いかと思いますが、個人的には、とても賢明な選択をされた会社もその中にはあるのだと思います。プライドのためにプライム市場を選択した企業も多く(プライドとプライムは日本語が似てますね)、それが1800社超という結果になったのですが、プライム市場の企業には3分の1以上の社外取締役の設置がコーポレートガバナンス・コードでは求められています。けど、本当にプライム市場の企業の多くに3分の1以上も必要なのでしょうか?

この点、過去のブログ記事を読み返した時に、GMOインターネットの熊谷社長が、たしか2018年にアクティビストであるオアシス・インベストメンツがGMOの定時株主総会で株主提案を行い、それに対する熊谷社長の総会当日のプレゼン資料及び動画がホームページに掲載されたことがありますが、その時の内容が参考になります。

オアシスから、指名委員会等設置会社への移行の株主提案があり、結果としてはこれは否決されたのですが、その時に熊谷社長のコメントの一部に次のような内容があります(GMOの2018年3月12日の定時株主総会での熊谷社長のコメントの一部)

2017年3月31日に経済産業省が公表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務方針」などの、いわゆるガバナンスの教科書には、監督と執行の分離、即ち執行部門の責任者が取締役になるのは望ましくないと書かれています。しかしながら、変化の激しいインターネット業界において「勝つ」ためには、その環境の変化に応じて猛スピードで意思決定を行い、猛スピードで組織として自走しないと勝てないと考えています。当社グループは上場9社、連結104社からなるグループ経営を行っています。各分野のプロフェッショナルが集まり、権限を分散して競合よりすばやく意思決定し、実行に移しています。仮に監督と執行機能を分離した場合、社外取締役だけでこの速い業界の迅速な意思決定ができるでしょうか。変化の激しいインターネット産業と当社グループの強み、この両方を知り尽くしている社外取締役は、残念ながら私にはどうしてもイメージが沸きません。教科書に書いてあることが、すべての企業に当てはまるとは限りません。実績の出ている組織や仕組みを、「教科書と違う」ということだけで否定し、壊すことは避けなければならないと強く思っています。

あらためて、私はこれを読んで「なるほど」と思いました。日本のコーポレートガバナンス改革では、取締役会は、戦略的意思決定及び監督機能の強化、特に監督に注力すべきであり、そのためには社外取締役を増員し、その関与度合いを強くせよというのがもはや世間の常識になってきています。しかし、本当にそうでしょうか?

インターネットという非常に事業のスピードの速い業界が一例ですが、大勢の社外取締役が全ての企業に必要かというと「必ずしもそうではない」と思います。インターネット関連企業の成長は、時代の先を読む能力に非常に長けた経営トップとそれを支える経営陣の能力に依存するところが大きく、いわゆる重厚長大型の企業とは大きく事業構造が異なります。他にも同様の業界が多いと思います。

そのような中、事業経験のない方や投資の経験等のない方が大勢社外取締役に入っても、「本当に効果があるの?」と思ってしまいます。また、事業経験があっても事業構図や事業運営スピードの全く異なる業界の経験者などでは、必ずしも有用でないというの現実かと思います。

「大所高所から意見を頂いている」ということを色々なところで耳にしますが、「大所高所の意見が必要なのか」ということです。それに社外取締役は月1回程度しか会社に来ないのであって、その月1回の時に「大所高所から意見」を言われても困るという会社も中にはあるのではないでしょうか。意識が高く、やる気に満ち溢れた社外取締役が3分の1以上もいると実のところ大変なことになるのではないでしょうか?勿論、会社が求める資質を兼ねそろえた社外取締役がいれば話は別です。

要するに、自社が社外取締役に何を期待し、その期待を果たせる能力・経験のある人が社外取締役候補にいれば積極的に起用して活躍して貰えば良く、いなければ無理に増員する必要はないのです。ということを理解して各社プライム市場を選択しているのでしょうかねと最近思います。