中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

敵対的買収に対する最大の防衛策は普段からの開示と株主との対話の充実につきます ー 敵対的買収への備え

ゴールデンウィークの連休まで残すところ約1週間程度になりました。連休中は、保有銘柄の本決算後に各銘柄のIR部門へ質問するための準備作業をする予定です。東証の株価を意識した経営への計画策定・開示など企業への質問事項は盛り沢山です。今年は、コーポレートガバナンスの動向を踏まえて、中長期での企業価値向上に向けて株主として色々と質問や提案をして行きたいなと考えています。

さて、経産省の研究会で買収に関する指針案が公表され、ツイッターでも紹介していますが、今後は事前警告型の廃止が一気に進み、有事型の買収防衛策が中心になるかと思います。そして、有事型で肝となるのが株主総会での株主の賛同です。

平時型(=買収者が出現していない段階で総会決議を経て予め導入しておくタイプ)では、ルール違反の場合には取締役会決議で対抗措置を発動する建付けにしているケースが非常に多いですが、有事型ではこのような場合にも、基本的に株主総会での承認が必要になります。

ということですと敵対的買収で勝敗を決するのは株主総会で株主の賛否が得れられるか否かです。では、会社としては今後は、そのためにはどういう準備をすれば良いでしょうか?

仮に株価が1000円の企業に対して、買収者が1200円でTOBを実施するとします。この場合に企業が対抗措置を発動すると買収者は、議決権割合が希釈化され、結果、買収に要する資金が増えるため買収を断念することになるわけですが、一方、株主は1200円で株式を売却できる機会を失うわけです。これに株主が賛同するにはどういうケースでしょうか?

これはシンプルでその企業の株価が将来1200円以上の株価をつけると期待できる場合です。例えば1年後には株価が1400円になると合理的に期待できる場合には、対抗措置発動の株主総会決議に賛同するわけです。ということは企業としては株主の賛同を得るには何をなすべきかというと、そのような合理的な期待を株主に抱かせることです。そのための施策は2つあります。

1つは、将来に向けた企業の現状の取組みの内容を詳しく開示することです。社内でいくら頑張っていてもそれを開示しないことには、投資家には分かって貰えません。取締役会で議論している内容、戦略討議のテーマ、社外取締役の意見などをある程度詳しく開示する。これが大事になってきます。

2つ目は、機関投資家との対話、つまりエンゲージメントの充実です。先ほど開示が大事と書きましたが、全てを文章にして示すことは限界があります。それを対話によって補充するのです。対話によって開示している事項の投資家の理解がより深まります

この開示と対話によって機関投資家は、企業の今後の成長を予想し、1400円になるかどうか判断できるのです。有事型の買収においては、万一に備えたスキームを社内で準備しておくことも大事ですが、それ以上に大事なのは、普段から機関投資家を意識した開示や対話になります。