中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ESGの取組みがPBRにプラスに貢献するらしい。でも何故?

本日は資料作りで慌しい一日でしたが、明日は在宅勤務となります。明日も本日の続きのアウトプット作業の継続ですが、さっさと終わらせ、余った時間は副業に向けての情報・知識整理、新聞・雑誌、業務関連書籍の精読に時間を費やす予定です。あと、株式投資関連で企業各社の決算分析もです。

さて、12月11日の日経新聞に次の記事が掲載されていました。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66733970R11C22A2EA1000/

ESGの取組みが財務や株価に与える影響を開示する企業が増えてきたということのようです。この記事によれば、ある会社は約270のESG指標と数年後のPBRとの連動を調べたところ、多くの項目が企業価値と関係することがわかったとあります。「例えば、CO2排出量が1%減少すると8年後のPBRが1%上昇するという関係があった」と書かれています。また、ある会社は従業員の年間平均研修時間を増やすとPBRにプラス影響があるということのようです。

しかし、この記事だけを読むと「本当かい?」と思ってしまうのは私だけでしょうか。PBRの向上は必ずしも研修時間だけが影響しているわけでもない気がしてならないのですが・・。

さて、今回の記事に関してではありませんが、最近の新聞報道などを見ると、ESGがさも株価上昇と直接の因果関係があるような書きぶりの記事を時々見たりましますが、個人的には、ESGの取組みと株価には直接の連動性はないと思っています。間接的な連動はあるのだと思います。例えば、環境に取り組むことが環境重視の顧客の獲得に繋がり、企業収益にプラスとなり、ひいては株価が向上するという流れです。

昔、CSRおじさん・おばさんという言葉が時々言われました。自身が民間企業という営利団体のサラリーマンであることを忘れ、環境や社会団体の社員であるかのように社会貢献に熱心なCSR担当部署の方のことを指します。最近のESGの報道を見ると、同じような現象が起きるのではないかと心配になります。

ESGが財務数値にどうプラスに働くのかを論理的に理解しないと、新聞記事や報道の文字に踊らされ、「環境や社会活動に取り組むこと=企業の財務・株価にプラスになる」と勘違いをして、E・S・Gの細目にばかり夢中になってしまうことになりかねません。男女の賃金格差を開示せねばとか、女性管理職比率を開示せねばとかです。

勿論、ESGの取組みを否定しているわけではありませんが、問題はESGの考え方です。中長期(3年から5年以上の期間)で企業に株式投資をする上では、企業の短期業績はあまり役に立たないので、中長期の企業業績の判断材料の1つとしてあるのがESGです。ESGは非財務情報の1つに過ぎないのです。そこをしっかりと理解しないと、昔でいうCSRおじさん・おばさんが増えることになってしまいます。

ESGに取り組むことが企業業績や株価にどう貢献するのかを、新聞報道に踊らされることなく、ESGを担当する部門の方は一度良く考えることが大事かなと思います。