中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主が気候変動に照準 ー 浦島太郎はNGですが、過度に頑張り過ぎるのもNGです

本日は週1回のテレワークの日にしたのですが、予想に反して朝から作業に追われる1日でした。じっくり資料と本を読み(プラス、株式相場のウォッチ)、今後の業務の企画をする予定でテレワークにしたのですが、朝から細かい事務作業や人との頻繁なコミュ二ケーションが発生し、こういう作業ではテレワークには限界があるとあらためて感じました。特に人との迅速かつ複雑なコミュニケーションでは、電話・メールは限界ありです。このため明日は朝7時に出社する羽目になってしまいました。

さて、本日の日経新聞に興味深い記事がありました。「物言う株主「気候」に照準」というタイトルの記事です。

伝統的なアクティビストは企業に株主還元・事業再編を提案し、株価アップを目指すが、2020年頃から気候変動などをテーマにした「ESGアクティビズム」が活発化し、企業価値の向上を目的とするため、環境への影響を第一に考える非政府組織(NGO)の株主提案に比べて他の株主の賛同を得やすい特徴があるということです。

ESGアクティビズムはこれまでも時々新聞で報道され、ブログでも何回か紹介していますが’、記事によれば、2008年にJパワー株式を取得した英国の投資ファンドであるザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドもESGアクティビストに転じたとのことです。チルドレンズとJパワーの攻防は外資規制が適用された唯一のケースかと思います。

では、このESGアクティビズムに備えて企業はどういう方針でいればよいのでしょうか?この問いに関連して、記事で次の記述があります。記事の一部を抜粋します(太字は私が強調した箇所です)。

議決権行使助言会社のグラスルイスによると、20年に米国で提出された気候変動関連の株主提案は19年からは倍以上に増え、賛成率が26%から34%に伸びた。もっとも、株価への影響はまだ未知数だ。アクティビストはESG対応が遅れていた企業に変化を促し、投資マネーを呼び込むことを狙う。実際、エクソンの21年の株価上昇率は47%と同業のシェブロンの26%を上回る。一方、市場の関心がそれほど高まらなかったカナダの鉄道大手などの株価に目立った動きは見られない。増配などの要求は株高につながりやすかった。気候変動関連の投資は短期的にはコストで企業価値の評価は難しい。「長期的な視点と目先の利益を求める短期的な視点は常にせめぎあう」早稲田大学でガバナンス&サステナビリティ研究所の所長を務める川本裕子教授)

この記事の太字の読んで「なるほど。たしかにそうだな」と思いました。環境問題はじめESG対応を全くやらないと長期投資家が離れる可能性があります。しかし、一方で、ESGへの対応は短期的には企業のコスト増になるということもしっかりと認識する必要があります。

上場企業の中には、外部の会計事務所系のESGコンサルティングなどにうまく利用されて、かなり先進的に取り組んでいる企業もありますが、あまりに力を入れると「そんなことより本業を頑張って下さい」となります。一方、繰り返しになりますが、手を抜き、「環境などどうでもいい。業績だけが全てだ」と言っていると、コーポレートガバナンス・コードの求めに反し、長期投資家が離れる可能性があります。

ということを考えると、上場企業が念頭に置くべきは、①世の中のESGの動きは確実に把握し、浦島太郎にならないこと、その上で、②同業他社(海外・国内)のESG取組みと遜色ない程度の対応をする、ということが肝要なのだと思います。こうすることでESGアクティビストが環境関連の株主提案をしたところで、「恐れるに足らず」ということになるのだと思います。そういえば、2ヵ月ほど前にも同じような記事を書いていましたので、再掲させて頂きます。