中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

万年PBR1倍未満の企業は株価を強く意識する必要あり ー 『物言う』一般の機関投資家が今後は増えると思います

投資ファンドのオアシス・マネジメントとフジテックとの攻防は報道のとおりですが、なかなかですね。公表されているオアシスの提案資料などはボリュームもあり、凄いなの一言です。プロの投資ファンドであるアクティビストと対峙することは大変なことだなとつくづく感じます。

日本の株式市場は「アクティビスト天国」と言われたりしていますが、来年6月の定時株主総会に向けて、日本の上場企業とアクティビストとの水面下での攻防は多くなっているのだと想像します。

12月6日の日経新聞の夕刊に興味深い記事がありました。みさき投資の社長の投稿記事になりますが、次のとおりです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB022PZ0S2A201C2000000/

PBR1倍を割ると、アクティビスト浸透度がかなり高まると書かれています。日本企業の場合、PBR1倍を下回る企業は相当数に上ります。PBR1倍未満はアクティビストのみならず、一般の機関投資家も問題視するところですが、私は一般の機関投資家の動きに今後はより注意を払う必要があると考えます。

機関投資家の議決権行使を見ていて、この1~2年で大きく変化したなと感じるのは、株主提案に対して賛成する一般の機関投資家が確実に増えていることです。5年前には、株主提案に賛同する機関投資家は極めて少なかった印象ですが、この1~2年で大きく増加したと感じます。

そして、株主提案に賛同するだけならまだましですが、近い将来は一般の機関投資家自らが株主提案をする時代が来ると私は思います。先日、ある外部の専門家の方と話をしたときに、本年の株主総会ではある機関投資家がそういう方向で動くことも検討したという話をその方から聞きました。その方も別の方から聞いた話のようですので、どこまで本気でその機関投資家が株主提案の動きをしようとしたのかの温度感は分かりませんが、こういう話が出ること自体、「『物言う』一般の機関投資家」の出現はまじかであると感じます。機関投資家としては、株価の値上がりを期待して、投資をしているわけですから、株価が低迷している投資先企業に株価向上につながる株主提案をすることは、理論的には至極当然と言えます。アセットオーナーもそれを期待しているのかも知れません。

こういった資本市場の大きな変化をどれだけの上場企業の経営トップの方が理解しているでしょうか? 特に、株式時価総額が数十億から数百億円規模の中小型銘柄で、機関投資家の株式保有比率が低い企業は、PBR1倍未満を何ら課題に感じていないところも結構多いのではないでしょうか。過去5年にわたりPBR1倍未満が常態化している企業も結構あったりしますので。

こういう企業は、アクティビストが出現すると、社内は大混乱します。対応が分からないので、外部のコンサル会社や弁護士、PR会社などを起用して、多額のアドバイザーフィーがかかるなんてことになりかねません。

万年PBR1倍未満の企業は、株価を強く意識することが必要です。そうしないと、株価低迷の中、アクティビストが出現し、経営陣はアクティビスト対応に相当な労力とお金をかけることになり、企業価値が毀損し、ひいては自社の社員を危機にさらすことになります。用意周到、準備万端の心がけが大事です。