中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

買収防衛策の導入理由 ー 金融商品取引法の課題の記載

本日は在宅ワークの日でしたので、通常の業務以外のインプットにも大幅に時間を割く予定でしたが、昨日の業務が全く終わらず、業務のアウトプット作業に終日かかってしまいました。

本日、のむら産業という会社(7131 / 東証スタンダード)が買収防衛策の導入を公表しました。はじめて聞いた銘柄でしたので、四季報オンラインで見たところ、米穀精米袋と米穀計量包装機械で国内首位で、株式時価総額がわずかに14億円(12月14日時点)の小型銘柄のようです。プレスリリースの内容は次のとおりです。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/7131/tdnet/2215137/00.pdf

この会社自体には興味はないのですが(はじめて知った銘柄のため)、プレスリリースを見て気付いたのは、買収防衛策の継続理由です。現在の法制の不備が少し詳しく書かれています。プレスリリースの該当箇所を抜粋すると次のとおりです(黄色ハイライトの箇所は私が強調のため付記)。

我が国の資本市場において、対象となる会社の経営陣との十分な協議や合意のプロセスを経ることなく、株主への十分な情報の開示もなされない段階で、突如として大規模買付行為を強行するといった動きが現実にみられます。また、大規模買付行為の中には、その目的等から判断して、企業価値及び株主共同の利益を著しく損なうおそれのあるものや、大規模買付行為に応じることを株主の皆様に強要するおそれのあるものが含まれる可能性もあります。この点に関し、現行の金融商品取引法の下では、市場内での大規模買付行為は規制対象とならないことから、市場内での濫用的な大規模買付行為に対応することができません。加えて、公開買付制度が適用される大規模買付行為に関しても、金融商品取引法で認められている買付者に対する質問については意見表明報告書における 1 回に限定されることに加え、当該質問への対応についても、買付者は対質問回答報告書を提出して回答する義務があるものの、十分な回答を行うとは限らない上、理由を付して回答を行わないこともできます。このように、公開買付制度が適用される大規模買付行為であっても、株主の皆様に対して十分な情報開示がなされず、又は公開買付けに応じるか否かを検討する時間を十分に確保することができないままに、その賛否の対応を迫られる場合があることが否定できないという制約があります。

金商法上の課題を買収防衛策の導入理由で触れる企業は数年前から増えていますが、それよりも少しだけ突っ込んだ表現かと思います。参考になると思います。海外企業の濫用的買収者の出現リスクについて触れるのであれば、日本の外資規制の課題(=実効性が乏しいということ)をプレスリリースに記載するのも一案ですね。

経産省の「公正な買収の在り方に関する研究会」の議論はまだ始まったばかりですので、事前警告型の買収防衛策については、来年の株主総会時点では機関投資家は反対のスタンスが続くかと思います。

けど機関投資家保有比率が高くない企業であれば、事前警告型の買収防衛策の導入のハードルは低いと思いますので、少しでも導入の必要があるなと考える企業は導入をすることをお薦めします。