中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ライオンが買収防衛策を廃止

昨日、業務上の必要があり、有価証券報告書での各社の買収防衛策の開示内容を確認しており、その際にライオンの開示もチェックしていたのですが、その後、夕方にライオンが買収防衛策の廃止を公表しました。本年3月30日開催予定の 定時株主総会終結の時をもって更新期限を迎えるところ継続せずに廃止するということです。廃止の理由についてプレスでは次のとおり記載されています。

当社は、2009年3月 27 日開催の第148 期定時株主総会において、企業価値向上とともに株主の皆さまの共同の利益を確保するために本プランを導入し、その後3回の更新を経て現在まで継続してまいりました。当社は、本プランの有効期間の満了を迎えるにあたり、買収防衛策に関する近時の動向、当社を取り巻く経営環境の変化等を踏まえ本プランの取扱いについて慎重に検討してまいりました。かかる検討の結果、本定時株主総会終結の時をもって、本プランを継続せず、廃止することを決議いたしました。なお、当社は、本プランの廃止後(本定時株主総会終結後)においても、企業価値向上とともに株主の皆さまの共同の利益確保に取り組んでまいります。また、当社株式等に対して大規模買付行為が行われた場合には、当該大規模買付行為の是非を株主の皆さまが適切に判断するための十分な情報および検討のための時間を確保するよう努めるなど、会社法および金融商品取引法等の関係法令に則り必要かつ相当な措置を講じてまいります。

廃止をするほとんどの企業と同じ内容の開示文です。日本製鉄、東京製綱をはじめ廃止する企業が最近必ず文言に入れているのが太字の部分です。前にもブログで記事に書きましたが、この文言は、事前警告型の買収防衛策は廃止はするが、大量買付者が出現した場合には、買収防衛策と同様の対抗措置を発動しますということを意味しています。

ライオンのホームページでの株主構成を見ると、金融機関41.53%、外国人23.21%、その他法人17.69%、個人・その他17.69%となっています。金融機関にはメインバンク等の商業銀行のほかに、国内機関投資家が含まれていますが、その割合は不明です。仮に半分程度が国内機関投資家とすると、この国内機関投資家の持分と外国人の持分が全て反対票になると想定すると総会議案の可決が過半数ぎりぎりになるか、場合によっては50%を下回り否決される可能性もあるので、議案の株主総会への上程を見送ったということだと思います。賢明ですね。

株主総会で否決されても「上程してみて下さい!」などという意見を数年前に何かの雑誌かネットで見たことがありますが(どこかの中小のシンクタンクのレポート?)、大手企業の実務を全く理解していない考えと思います。

時価総額の大きな企業はブランドイメージをとても重視しています。従い、慎重に票読みをして、否決のリスクがあれば、議案に上程しないというのが少なくとも時価総額が1,000億円を超える企業の常識かと思います。もし、ライオンが買収防衛策の継続議案を総会で上程したが、総会で過半数の賛同が得られず否決された場合、日経新聞の朝刊で確実に記事になり、また「社長は票読みをしなかったのか?」などとビジネス誌でも取り上げられる可能性も大です。

一方、上場企業とは言え、時価総額が500億円以下の中小型銘柄企業は、資本市場からのレピュテーションリスクを気にすることなく、少しでも総会で可決の可能性があるのであれば、総会議案に買収防衛策の議案を上程すべきと考えます。否決されてもそもそも企業規模が小さいので、日経新聞等で取り上げられたり、世間の注目を浴びることもないです。それよりも時価総額が小さい分、敵対的買収にあうリスクの方が大きいので、実質重視すべきと思います。