中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第7回)(追加) ー 有事導入型買収防衛策に対する個人投資家の判断ポイントは

7月2日に有事導入型買収防衛策(以下、有事導入型と略します)について記事を書きましたが(最後に再掲しています)、本日、読み直したところ、何故か、企業としてどうすべきかという結論で終わっていました。

このシリーズは、個人投資家コーポレートガバナンスを武器に投資先企業の企業価値をいかに高める行動をすべきかという視点から記事を書いています。従い、有事導入型を企業が導入しようとする場合、個人投資家はどう判断したらよいかという視点から本日は説明を加えたいと思います。

有事導入型は「後出しジャンケン」で、数年前までは「言語道断である」という考えが普通でしたが、この1~2年で大きく状況が変わりました。ものすごく簡単にいうと、有事導入型であっても株主総会に諮り、過半数の株主の賛同が得られれば有効という方向にあります。

とすると、株主としては、株主総会で有事導入型の議案に賛成又は反対のいずれの議決権行使すればよいでしょうか?

それは、経営陣が自社の理論株価をいくらと考え、敵対的買収者のTOB価格を上回る理論株価に市場株価がいつ到達できるかをコミットしているか否かで判断すべきと思います。有事型の導入での争いにおいては、経営陣はTOB価格は低廉であり、自社の理論株価は高いということを株主に納得してもらい、賛同を得るわけです。

ということであれば、TOB価格を超える理論株価はいくかであるか ②理論株価に市場株価が追いつくのはいつであるのかの2点を明確にコミットすることが大事になります。TOBを阻止するのであれば、このコミットが本来あるべき姿と私は思います。

時期がいつ頃になるのかは重要です。仮にTOB価格が1000円として、企業側が理論株価が1200円で、それに市場株価が到達するのは5年後という回答をした場合はどうでしょうか? これは駄目ですね。お金の価値は時間の経過により変わります。5年後の1200円は現在の価値に戻すと1000円を下回ることもあります。

企業にコミットを求めると、「明確なコミットは無理だ。株価は色々な要因で決まるところ、目標に到達できないと株主からの訴訟提起のリスクがある」と言われることがあるかも知れません。けどこれは「本当?」と疑ってかかった方がよいかも知れません。だって日本企業の場合には、中期経営計画で具体的な数値目標を掲げているところ、それが未達に終わっても株主から訴訟を提起されたということは、まず耳にしたことはありません。これと同じです。訴訟リスクを考えて、コミットできないというのは言い訳に過ぎないとも言えます。

ということで、有事導入型を投資先企業が検討した場合、個人投資家は上記視点から議案への賛否を判断することが大事になるのではないでしょうか。