中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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政策保有株式の縮減 ー 保有金額が高いと株主総会で経営トップへの反対増のリスク

7月22日の日経新聞に政策保有株式の縮減について、次の記事が掲載されていました。

政策保有株、三菱商事は58銘柄減 資本コストを意識: 日本経済新聞

三菱商事などの総合商社が政策保有株式の縮減を進めているという内容の記事です。ブログでも何度か記事を書いていますが、政策保有株式を持つことは物言う株主、アクティビストから狙われるリスクがあり、これも背景の1つにあり、各社とも保有銘柄数の縮減を進めているのだと思います。

政策保有株式を多く保有していると機関投資家から来年の株主総会で経営トップへの反対票が増えるリスクもあります。議決権行使助言会社のISSは、純資産の20%を超える政策保有株式の金額の場合に経営トップへの反対推奨をしています。グラスルイスは10%の基準です。この結果、これらに抵触する企業は、ISSやグラスルイスの基準をそのまま採用することが多い海外機関投資家が反対するリスクが増えます。

一方、国内機関投資家はどうでしょうか? 国内機関投資家は今のところ明確な定量基準を設けているところは少ないです。けど、議決権行使助言会社の判断基準などを参考に来年からは基準を策定するという声を複数の機関投資家から聞いたこともありますので、これは私の想像ですが、来年の総会からは比較的厳しい議決権行使基準を設定するのではないかと思います。

政策保有株式の銘柄数には変動はなくても、株価が上昇すると政策保有株式の金額も上昇します。結果、機関投資家の議決権行使基準に抵触し、経営トップへの反対が増えるという事態も今後は十分にあります。来年の議決権行使基準の動向について機関投資家に確認しつつ、必要に応じて、早い段階から政策保有株式の縮減を検討することが企業には求められるかと思います。