中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

上場企業は「ファン株主」作りがより大事になります ー 株主優待?いや違います

先日、株主提案の件数増加の記事を見ていて、企業にとって今後重要な株主政策は個人株主の中でファン株主をいかに増やすことであると思いました。ファン株主の言葉を聞いたことがない方もいるかも知れませんが、野球やサッカーの特定チームにそれぞれファンがいるように、特定企業のファンである株主をいいます。個人株主は、大きく短期投資目的の株主とファン株主に分かれます。株主提案があった場合に会社を守るには、ファン株主が大事になるのです。

では、ファン株主を作るにはどうすれば良いでしょうか? 株主優待を手段にしている会社もあるかと思います。その会社の製品やサービスを受けとると何となくその会社が好きになるということもあるのかも知れません。けど、私はそれは小手先だけの施策に過ぎないように思います。そういう株主は株主優待を貰うことにしか関心はなく、株主提案にも平気で賛同することも十分あります。

ではファン株主を作るにはどうすればよいかというと、株主総会での経営トップとの質疑応答をする機会を会社が積極的に作ることがとても大事に思います。個人株主は機関投資家と異なり決算説明会に出て経営トップに質問をする機会がないのです。そういう中で、唯一、トップと会話を出来る機会が株主総会です。では株主総会に出席すれば気軽に質問できるでしょうか?

これは「NO(ノー)」です。「え、株主総会で自由に質問できないの?」という疑問を持たれたかも知れませんが、物理的には質問の障害は一切ありません。当然ですね。では何の障害があるのかというと、心理的な障害です。心理的なハードルといった方が分かり易いかも知れません。

役員がずらり並んだセレモニーのような静かな場所で一般の個人株主が質問をするというのはそれなりに勇気がいります。特にわずかに数百株~1000株程度しか持っていない株主は、自分のような少額投資の株主が質問することは恥ずかしいという気持ちを持つ方も多いと思います。1万株程度保有するのであれば、「俺は株主だ」という気持ちにもなるかとは思いますが。

そういう株主の気持ちを汲んで、株主総会では質問しやすい環境を作り、質問をした個人株主に対して経営トップが時間をかけて、丁寧に回答することが大事なのだと思います。たいしたことでないかも知れませんが、これは大事です。

これにより、自分が大事に扱われていると感じることで、その企業のファンになるのです。人間関係と全く同じですね。是非、上場企業の経営トップの方は、来年の総会に向けて、本当のファン株主を作ることを早めに考えた方がよいかと思います。