中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

来年の株主総会に向けての準備 ー 低ROE企業の経営トップに機関投資家は反対します

多くの上場企業は、来年の株主総会の準備を12月又は年明け頃から開始をするのだと思いますが、本日は来年の総会に向けての準備という視点から機関投資家の議決権行使について記事を書きます。

機関投資家株主総会で議決権行使をする際、当然ですが議決権行使基準に従います。議決権を行使する中でも重要なのは、経営トップの選任議案に対する議決権行使かと思います。この際に「反対」するということは、その会社の経営トップは不適任という意思表明していることを意味します。まずは、企業はここを明確に意識する必要があります。機関投資家は、企業の株式を数万株から数百万株を保有していますが、これは投資先企業の経営に賛同している、すなわち経営の舵取りをしている経営トップを信頼して船の進む方向に満足しているから保有しているとも言えます。従って、機関投資家が経営の舵取りを行う経営トップに反対するということは、一大事なわけです。

では、どういう場合に機関投資家は反対するのかといいますと、機関投資家によって基準に違いはあるのですが、業績不振が3年連続かつ業種で下位にある場合には、反対する傾向が強いと言えます。業績不振とはROE5%未満ということが多いです。ROEが単年度で5%を下回ることは許されても、さすがに3期連続は許されないというのが機関投資家のスタンスです。国内の機関投資家の議決権行使基準は、各社のホームページで詳細が開示されているので、ご確認頂ければと思います。

機関投資家は、資金の出し手であるアセットオーナーから委託を受けて資金の運用をしており、アセットオーナーに対して説明責任があります。業績がいつまでも改善しない企業に投資するとアセットオーナーに「どうしてそんな企業に投資しているの?」「経営トップに反対してトップの交代を促すべきでは」と言われるわけですね。

けど、私は機関投資家は画一的な判断をしている傾向が強い印象を受けます。機関投資家は中長期視点で投資をするわけですので、企業としては、もう少し長期で見て欲しいというのが正直なところかと思います。特に2020年度はコロナ禍で大打撃を受けた企業も多く、最近ではウクライナ問題もありインフレにより利益が毀損しているなど、企業の自助努力では何とも出来ないところもあるかと思います。そういう個別事情を考慮して欲しいというところです。数値で画一的に判断されるとなると、業績が悪くてもなんとかROEを改善しようとして、配当増や自己株式取得をせざるを得なくなるわけです。

では、企業としては、ROEの低迷が続く場合、どうすればよいでしょうか?機関投資家が賛成してくれることはないのでしょうか?続きは次回、紹介したいと思います。