中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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来年の株主総会に向けて(3) ー 議決権行使助言会社の基準で留意すべき点は?

昨日、ロシアの文豪のドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を購入しました。大学時代にも読みかけたことがあるのですが、最初の数ページを読んで、あまりの読みにくさで挫折したことがあるのですが、先日、週刊東洋経済で歴史を知る上での名著との紹介があり、20数年ぶりに再チャレンジです。

さて、本題ですが、前回の続きになります。海外機関投資家の多くが株主総会の議決権行使に際して参考にするのは、議決権行使助言会社の賛否推奨基準ですが、助言会社のガリバーであるISSの行使基準で来年留意すべき事項は何でしょうか?

2023年の改訂案が公表されていおり、2023年は環境関連での改訂事項があるようですが、これは多くの日本企業には関係がないので、たいした内容ではありません。企業が留意すべき点は、ROE5%基準の復活の是非になります。

ISSは過去平均のROEが5%を下回る企業の経営トップの取締役選任議案に反対推奨をしていますが、この基準がコロナ禍の時期から適用停止になっていますが、これが2023年から復活するか否かが企業が注意すべき事項になります。関心の高い上場企業は多いと思います。

とは言え、2023年のISSの改訂案ではこの基準の適用停止の復活については触れていませんので、2023年も適用停止が継続する可能性は大といえるのかも知れません。けど、一方、コロナ禍による企業業績へのマイナス影響も昨年あたりからなくなってきており、また、国内機関投資家の多くが2022年はROE基準で投資先銘柄の経営トップに賛否判断をしていることに鑑みますと、何故、ISSがこのROE基準を復活させないのかという疑問が残ります。ひょっとしてROE以外の基準の選択を将来、検討しているのかなとも思ったりしてしまいます。または、2023年改訂から復活ということもあるのかも知れません。

いずれにせよ、2023年のISSの議決権行使推奨基準でROE5%基準がどうなるかについては、2022年度を含めて過去5期の平均ROEが5%を下回る企業は十分に注意を払うべき事項と思います。もし、2023年から適用が復活するとなると、①2022年度を含めて過去5期のROEが5%を下回る企業で、②外国人株主比率が高い企業は、経営トップへの反対票がかなり増加するリスクがあると言えます。