中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ISSが2021年の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案を公表

知っている方も多いかも知れませんが、10月14日に議決権行使助言会社のISSが2021年の議決権行使助言方針の改訂案を公表しました。改訂案は本日10月26日までコメント募集期間としてコメントを募集していますが、これまでISSは改訂案を変更したことはないので、改訂案で確定すると思います。

今回の改訂のポイントは、政策保有株式を過度に保有する企業の経営トップに反対するとしている点です。具体的には純資産の20%を超える政策保有株式を保有する企業の経営トップの取締役選任議案に反対推奨するというものです。

議決権行使助言会社であるグラスルイスは、従前より純資産の10%超の政策保有株式を保有する場合には経営トップに反対するとしていますが、今回、ISSも政策保有株式について数値基準を打ち出したということになります。ただし、純資産の20%超の政策保有株式を有する企業数は少なく、これが適用される企業は数パーセントにとどまるとは思います。

10月下旬に再開した金融庁のフォローアップ会議でも政策保有株式はコーポレートガバナンス上の課題としてあげられています。今後どのような方向に進むのでしょうか。私は、おそらく縮減よりも、議決権行使結果の開示に焦点が当たるような気がします。政策保有株式の保有自体が問題のような風潮にありますが、そもそもの議論のはじまりは、投資先企業の問題のある議案に賛成する結果、その議案に反対行使をする少数株主の意見が通らないことにあります。逆にいうと、問題のない議案に賛成することは何ら非難される筋合いはないのです。

とすれば、企業が適切に政策保有株式の総会議案について議決権を行使したということが外部からもガラス張りになっていれば良く、であれば、議決権行使結果を公表することが求められるような気もします。機関投資家が投資先企業の総会議案に対して議案毎に賛否悔結果を個別開示するように事業会社にも同じようなことが求められる可能性が考えられます。政策保有株式として保有する企業に不祥事があった場合などは悩ましくなります。

金融庁のフォローアップ会議の今後の動向を注視して行きたいと思います。