中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

機関投資家は当社を理解してくれているのでは?① ー 機関投資家の議決権行使基準

明日はある銘柄の買い増しをする予定で、本日は夕方頃に周辺情報の整理をしていました。明日もオフィスで業務のため、仕事上にPCから堂々とネットで株取引をする勇気は私にはないので、株取引をするのは、昼休みの1時間の時間帯や午後の業務の合間のスキマ時間しかないところではあります。この銘柄は、ある理由で株価が大きく下げたのですが、中長期で見ると確実に収益は拡大するはずですので、保有銘柄を売却しながら、買いを進めているところです。

さて、明日は仕事上の必要があり、国内主要機関投資家7~8社の議決権行使基準の整理をする予定ですが、この議決権行使基準について本日は書きたいと思います。

本年の定時株主総会が終わり、議案の賛成率が低い結果に終わった企業もそれなりに多かったと想像します。統計を整理しているわけではないので、数は分かりませんが、不祥事があったり、不祥事はないが業績が低迷している企業は、経営トップへの賛成率が低いところが多かったのではないでしょうか。

となると、「機関投資家は画一的な判断しかしないではないか」と不満を持つ企業も必ず出てきます。昨年、ある大手企業の実務担当者と会話をした時、このような不満を漏らしていました。特にROEが低迷していることを理由に役員への反対率が増えた企業は、機関投資家の議決権行使スタンスに不満を持つこともあるようです。

ROEが低迷しているといってもここ2年はコロナの影響があったし、また、2021年度だってウクライナ侵攻で供給網が混乱しているし、海上運賃もえらく上がっているので、やむを得ないところであり、このあたりの事情をどうして機関投資家は分かってくれないのかなという不満です。私も事業会社のサラリーマンなので、先ほどの他社の実務者の話を聞いた時は、そのように思っていました。

機関投資家と対話をすると「議決権行使基準はあるが、必ずしも基準どおりに行使するわけではなく、企業との対話の結果を踏まえて基準と異なる議決権行使をする場合もありますよ」という言葉を時々聞きます。事業会社の方はこの言葉に安心してしまうことが多いのだと思います。

「ウチはROEが業種の中で低いけど、複数の事業を抱えており、その中の特定事業の利益率が低いのが原因であり、これは機関投資家は十分に理解してくれているはずである」といったことです。従い、「ウチに対して機関投資家が議決権行使基準を画一的に行使することはないであろう」という根拠のない安心感です。特に、非財務情報について機関投資家と定期的に対話を実施しているような企業は、「対話の実施=お互い理解している」と思うことが多いかも知れません。

けど、この考えはあらためる必要があります。続きは次回、お話をします。